決着
爆炎が舞う
グレイスの魔法を掻き分けるように黒布で全身を纏ったフレイヤがグレイスに向けて突撃する。
フレイヤの奥の手
黒布を纏い、フレイヤが格上の魔導士と戦う為に生み出した戦闘形態。
グレイスはフレイヤの接近を避け浮遊しながら距離を取り、同時に何種類もの魔法を打ち出しフレイヤを攻撃する。
フレイヤも接近をしながら魔法を打ち出すが、それでも手数はグレイスの10分の1程だ。
フレイヤの魔法はグレイスの魔法でかき消されていく。
時折フレイヤの黒布纏装が剥がされ皮膚が見えるも、すぐに修復していく。
グレイス「っ!?・・」
いつのまにかグレイスの笑みは消え
フレイヤの動きに注視する。
フレイヤの魔法が、グレイスとの間に一際大きな爆発を起こす。
一瞬フレイヤを見失うグレイス。
その間にフレイヤは右手に黒布を螺旋状に具現化し槍を作る。
煙が爆風で開け、グレイスがフレイヤを視認する。その瞬間、フレイヤはその槍を勢いよく投げる。
一直線にグレイスに向かう黒布の槍
同時に撃たれていた、グレイスの魔法を貫通し
グレイスの手前に魔法障壁が形成される。
それさえも貫通した槍
グレイスは空中で辛うじて避ける。
グレイス「このっ!?」
グレイスはすかさずに魔法を発動するが、次の瞬間グレイスを通り過ぎた槍が白い光を出しながら爆発される。
グレイスは反射的に障壁を後ろに展開するが
その障壁は爆発の衝撃波に押されグレイスの背中を叩き押した。
グレイス「!?」
グレイスが痛みに目を一瞬閉じ開けた瞬間、フレイヤの姿が目の前に現れた。
グレイスは杖に光る刃を形成、フレイヤに対応する。フレイヤが新たに形成した黒布の剣を振る
フレイヤの黒剣がグレイスの光る刃はガラスのように砕き、通り過ぎるようにグレイスの左腕を両断した。
ーーーーーーー
マイラスを排除したフルド達。
全員が怪我と消耗でまともに動けなかった。
いまだグレイスとフレイヤ、オタルとハリエルの戦闘音が鳴り止まない。
その中で唯一フルドが立ち上がる
フルド「タラム!どうだ?」
タラム「まだまだ」
大剣を杖代わりに立ち上がるタラム
それを見てフルドは他の皆が戦えないと判断する。ブロスの方を見て手を上げ振る。
フルド「タラム、皆を集めて撤退の準備を」
タラム「お前は?」
防具はズタズタにされ血だらけのフルドはハリエルとオタルの方角を見る。
そして力強くオタル達の元へ走り出した。
ーーーーー
形勢はハリエルに向いていた。
たくさんの切り傷がオタルに見られる。
オタルの鉄甲も壊されかけていた。
それでもオタルの目は力強さを失ってはいなかった。
一方ハリエルは頬に多少の擦り傷が見える程度、
華麗な剣術でオタルを翻弄していた。
オタルの拳とハリエルの剣が交差する。
2人とも紙一重でそれを避ける。
そして身を翻しながら互いに再び攻撃。
ハリエルは途中でやめ、オタルの拳を避けると同時に下から切り上げた。
オタルの胸を防具ごと斬る、
オタルは後ろに飛ぶも完全には避けきれず、防具と胸の肉を斬られてしまう。
ゼエゼエとオタルは肩で息をする。
ハリエルも軽い運動をした後かのように、軽く息を整える程度だった。
その間ハリエルはマイラスが戦っていた方向を見る。グレイスとフレイヤその手前に意識を失ったリーズを縛るエピオの姿
マイラスの戦闘が終わっていること
そして血だらけのフルドがこちらに向かって走ってくる姿を視認する。
ハリエル「っ・・・使えねぇ」
オタルの血が地面に落ちると共にオタルは地面を蹴った。
再び戦闘が始まる。ハリエルの眉間の皺も深さが増す。
オタルの剛拳を避けながら反撃、オタルは辛うじて避ける。オタルの剛拳が地面を打つ、衝撃波が地面を割る。ハリエルが後ろに飛んで避ける。
2人が距離をとった瞬間、ハリエルに向けてフルドの矢が飛ぶ。狙いは足、ハリエルは小蝿を落とすように剣で弾く。
地面からの土煙の中からオタルが現れてハリエルに拳を振るかぶる
ハリエル「っ!」
ハリエルも剣を振りかぶる、オタルの拳とハリエルの剣が激突し凄まじい金属音を響かせた。
オタルの剛拳が勝りハリエルは後に跳ね飛ばされる。
距離が空いた瞬間、フルドの矢がハリエルに放たれた。
ハリエルは矢を見ることもせず、体を捻りそれを避けた。
ハリエル「っち」
オタルの追撃、目にも止まらぬ拳がハリエルを襲う。
ハリエルは地面を強く蹴り避ける。
再びオタルとハリエルは激しい攻防を始める。
フルド隊のオタル、フルド以外の者たちはその光景を眺めていた。
タラム「つえぇなあいつ」
満身創痍の身体、加勢に加わっても邪魔になることを理解していた。
他の皆に視線を映す。
タラム「大丈夫か?」
ソル「ああ、とりあえず皆生きてる」
ソルとユーシは仲間の安否を確認。
プルートゥが目を覚ます。
プルートゥ「勝てたのか?」
ソル「オタルとフレイヤ次第だ。どちらかが負ければ、俺たちは終わりだ」
プルートゥ「加勢を」
プルートゥは痛みを堪えて立ち上がる
ユーシ「ダメだ、どちらに行っても邪魔にしかならない」
そしてタラムは爆発音が鳴り響く方向を見る。
フレイヤとグレイスの戦闘も続いていた。
タラム「アイツとタイマンはれる奴がいるとはな」
ーーー
グレイスとフレイヤの形成は逆転していた。
逃げ回るグレイスとグレイスの魔法を掻い潜り、魔法に加え接近攻撃を繰り出すフレイヤ
数々のグレイスの障壁を破りながら近づく。
四方八方から繰り出されるグレイスの衝撃波の魔法を避けながら時には受けながら突き進む。
グレイス「うっざい!」
ーーーーーーー
オタル、フルドとハリエルの攻防
フルドの狙われ続けハリエルは意識を全てオタルに向けられずにいた。
先にフルドを倒そうをオタルに背を向けフルドに向け地面を蹴った。
フルドは一瞬で距離を詰めるハリエルに矢を向けながらギリギリまで放たない。
ハリエルの後を追うオタル。
ハリエルよりも早く一瞬で距離を詰めハリエルの背後で拳を振り上げる。
ハリエルを挟む形でフルドは矢を、オタルは拳を放つ。
ハリエルは華麗にそれを避けるながら
フルドに蹴りをオタルに剣を突き立てた。
フルドは地面に跳ね飛ばされバウンドする。
左肩を切り裂かれた。
その威力で後方に飛ばせる。
地面を削りながら再びハリエルに特攻するオタル。
その顔はもはや理性はないように見えた。
拷問されたアマゾネスとオーク達とその匂いがこびりつきながらも飄々と笑っているハリエルへの憎悪と怒りが痛みを忘れさせていた。
フルドは弓落とす。
意識はある。すぐに立ち上がり、剣を抜きながらハリエルに突撃する。
再びの挟み撃ち。
ハリエルは余裕の表情でオタルの右拳を、のけぞりながら避ける。それと同時に後ろのフルドに顔を向けることなく剣を振り落とした。
フルドは剣で受け止めようとするも簡単に剣を弾き、ハリエルの剣先がフルドの頭に直撃した。
しかしハリエルはいい手応えを感じなかった。
フルドの眉間と生え際をパックリと割れていたが頭蓋骨には少しの傷が付いた程度。
フルドを見ていないハリエルは、フルドの絶命を確信しながらも違和感に気づく、それが一瞬の気の隙を生んだ。
オタルの左拳を下に避けながらハリエルはオタルの顔に向けて刺突のカウンター
ハリエル渾身の突き。
オタルの顔に直撃した。
ガキィと聞きなれない音が聞こえ剣の動きが止まる。
ハリエルは避ける際に下に向けた顔をあげオタルの顔を視認する。
剣はオタルの口に入り右頬へ貫通、オタルは
その刃を噛み締めていた。
ハリエルはその剣がもう動かない事を直感した。
オタルの右拳に力が宿る。
ハリエルはここで初めて恐怖を感じる。
剣を手放し距離を取ろうと地面を蹴ろうとした瞬間。
ガクンと足に衝撃が走る。
額の皮を割られながらフルドが体当たりのようにハリエルの脚にしがみついたのだ。
バランスを崩しすハリエル。
ハリエルはぐちゃりと音がしたような感覚を右手に感じる。
剣を持った右手が剣の柄ごとオタルの左手に包まれていた。
右拳を振りかぶる。
オタルの拳がハリエルの顔面に放たれる。
ハリエルは左手で腰の短剣を抜きオタルの拳に前に出すも
オタルの拳はそれを破壊しながらハリエルの顔面に直撃した。
衝撃音と共にハリエルは後方に撥ね飛ばされた。足を掴んでいたフルドもその衝撃で腕が解けるも多少飛ばされた。
地面を何度もバウンドし、力無く横たわるハリエル。
両手と顔を破壊されている。
微かな呼吸音が聞こえるも、溢れる血でゴポゴポと溺れるような呼吸音に変わる。
ずるりとオタルは頬に突き刺さった剣を抜き地面に捨てる。その瞬間ビチャリと口から血が溢れる。さらに先程の渾身の拳を放った際にハリエルに受けた裂傷から血が吹き出す。
地面に血を溢しながら膝をつく。
魔力も体力も限界だった。
フルドも頭から血を長らし顔の半分を赤くしながら立ち上がりオタルの元へ駆け寄る
フルド「オタル!」
オタル「まだ、生きてる」
フルド「!?」
フルドがハリエルの方向を向く
ハリエルは上半身を起こした。
フルド「マジかよ」
ハリエルの口から血が流れ落ちる
両手を上げ、かろうじて見える内出血で赤くなった片目を確認する。
左手はぐちゃりと曲がり指もあらぬ方向を向いていた。
右手に関しては手首より先はオタルに潰されたせいで引きちぎられていた。
ハリエル「は、はははは、ゴポ」
口から血を垂れ流しながらハリエルは笑っていた。
フルドは恐怖を感じた。
落ちた短剣を拾う
オタルも立ち上がろうとするも歩き出した瞬間倒れる。かろうじて意識がある状態。
ハリエルは己に近づくフルドの方向を見る。
しかし見ているのはフルドではない、オタルだ。
オタルも意識を保ちながらハリエルを見ていた。
ハリエルは体を傾ける。
すると横からブロスの弓が通り過ぎた。
地面に接触して地面を削った。
矢を放ったブロスは驚愕した。
あの状態でまるで脅威にも感じてないように矢を避けた。
ブロスの方を見る事なくハリエルはオタルを見続けた。
ハリエル「なんだ、あれは」
もはや脅威にならない半壊の人間に
そこしれぬ恐怖を感じた。
次の矢を引いた瞬間
横で一際大きな爆発が起こり爆風がブロスの重心を動かした。
フレイヤとグレイスが戦っていた方向からだった。その瞬間空から無数の魔法弾が雨のように落ちてきた。
ブロス「!?」
その爆発がブロスを吹き飛ばす!
ブロス「くそ!」
魔法弾はタラム達にも降り注ぐ。
タラム達にはそれに対抗できる力はなかった。タラム達は意識を失ったピオとファンを抱えるも、魔法弾はすぐそこまで来ていた。
直撃しようとした瞬間、タラム達の頭上を黒布が舞い、魔法弾の爆発から守った。
タラム「フレイヤ!」
近くにはフレイヤがいた。
フレイヤの魔装はほとんど解かれていた。
ボロボロになっていた。
黒布の屋根の下に2人を置き、
フラフラと歩くフレイヤに走り寄り方を貸す
タラム「アイツは」
フレイヤ「逃げられた」
降り続ける魔法弾が降り終わる。
あたりの土煙が晴れていく。
オタルとフルドの目の前、グレイスがハリエルのすぐ後ろに立っていた。
グレイスの隣には白い獅子の魔物がマイラスの死体を背負い立っていた。
グレイス「ハリエル、グレイス死んじゃった」
ハリエル「・・・」
ハリエルは何も喋らず視線だけを動かしグレイスを見た。
そして意識を失う。
ぽんと優しくグレイスはハリエルの体を支えた。
フルド「逃すか!」
フルドは近くにある短剣を拾い。グレイス達に突撃する。
しかし、グレイスの周りが爆発し、その衝撃波にフルドは飛ばされる。
大きな土煙が立ち上がる。
その土煙から、グレイスとハリエル、マイラスの死体を乗せた白い獣が飛び出して逃げ去ろうとしていた。
凄まじ速度、
逃すまいとフレイヤとブロスは追撃する。
しかしグレイスが展開した障壁に軽々と弾かれる。フレイヤの魔法は衝撃で土煙を上がらせ、
姿を隠してブロスの邪魔になる程だった。
グレイス「許さない!お前達全員、殺してやる!!絶対!絶対!!」
グレイスは叫んだ、その顔は怒りと憎悪を満ちていた。
フルド「くそ、」
ハッとフルドはオタルに気を向ける。
オタルはその場に倒れていた。
意識はない。
オタルの下には大量の血が溢れている。
フルド「オタル!オタル!!フレイヤ!!!こっちだ!」
山の風の音だけになった戦場後で、
フルドの声が響いた。




