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鉄腕オーク   作者: 利
オークと魔女と異世界人
60/71

深層世界の記憶

最初の記憶は、優しいゴブリンの老人の顔だった。

ゲラルドハッシュドア。

じいちゃんと読んでいたが、間違いなく彼が僕の父だった。


物心がついた時から彼からはたくさんのことを言い聞かせられた。

最初は覚える度にご飯がもらえるからやっていたのかもしれない。

運が良かったんだと思う。比較的僕はおとなしいオークだったみたいだから。


ある日、ご飯を盗んで食べた。

見つかった時は暗い牢で何日も閉じ込められた。


一人では生きていけない。

共有、信頼、協力、沢山のナニカを頭に刷り込まされたような、

良くは覚えていないようなかすかな記憶

でも、そんな孤独と飢えの中で僕は生まれた気がする。


ある日からレオンさんに武術を習い始めた。

ご飯がもらえるから、もうあの暗い部屋に入りたくないから、


武術を覚えたてのころ大人のオークが暴れ出した。怖かった。でも、もっとあの暗い部屋が怖いと思った瞬間体が勝手に動いた。


勝てるわけもなく直ぐにやられたけど、

お陰でリカードと友達になれた。

リカードに連れられて一緒にしたイタズラは暗い部屋に入れられなかった。

だからかもしれない。

ほとんどリカードと一緒にいたし、リカードの役に立つことは進んでした。

そんなことを繰り返しているうちに奴隷区のみんなが僕に笑顔を向けるようになった。

笑顔の数だけ食事の量も増えた。


逆に暴れ回るオークの食事は質素なものだった。

減っていくオークをみて、最初はあの暗い部屋に閉じ込められてるんだろうと、

恐ろしくて、自分はあのオーク達みたいになりたくないと心に決めた。


あの頃から僕はオークを憎む対象にしていたのかもしれない。


奴隷区解放の日、

あの洞界に僕は残された。

納得はしていた。何より必死に抗議をしてくれた仲間達が嬉しかった。

あの時にはもうご飯よりも大事なものを手に入れてたんだと思う。

寂しくはなかった。仕事でほぼ何日もシドさんを含めた、開拓仲間達とは会っていたから。


そしてある日僕は、数人の調査員を助けるために魔物と戦い、その中で大滝に落とされた。


死にものぐるいで、魔物の死体の口に入り、水の衝撃を和らげ、その死体の浮き代わりにどうにか溺死は避けた。けど、意識を取り戻した時には深層へと僕は落ちていた。


深層の魔素に気を失いそうになりながらも、はいながら帰ろうとしていたのを覚えている。


でも、それは逆方向で、僕は深層に引き寄せられて奥へ奥へと導かれていた。

生きていたのは奇跡だった。


仲間に教えてもらった最低限の知識で骨折を補強し、毒があるかもわからない植物や、小型の魔物を食べた。


そうして僕は深層の奥へ奥へ無意識に進んでいた。


我に帰った頃にはもう遅かった。

目の当たりにした光景は巨大な世界だった。


深層の世界、大きな森が広がり、空ほどもありそうな高さの岩壁は青白く、天井の岩盤からは根が足り下がりそれが光真昼のような明るさを保っていた。

中心には物語で聞いた世界樹に似たものが聳え立っていた。

魔物と戦いながら帰還を模索するも、

今までとは比べ物にならない程強い魔物に逃げるしかなかった。そして逃げれば逃げるほど、下に深層へと進んでいた。


そこであの家を見つけた。樹木と融合したような石と木造の家、

おそらく家ができた後、そこに気が生えたのだろう。半壊をしながらも力強く建っていた。

そこへ隠れるように入り、人の痕跡に安堵し、身体を休めた。


2階の部屋には白骨化した遺体があった。

ボロボロの日記を見つけ慎重に読んだ。

わからない箇所もあったが、ここの情報がたくさん載っていた。

白骨化した遺体の人は女性だったようだ。

家の裏を調べてみると彼女の伴侶の墓があった。


彼女の遺体をその隣に埋め墓石を立て、安らかに、向こうでも彼と出会えるように願った。


もう帰り道はわからなくなっていた。

ここまでくる途中の記憶を忘れないように日記のの続きに書き写す、家がある地点を、中心にその記憶の場所を探す。


そこでは死がすぐそばにいた。

ちょっとの油断が全てが死につながるような場所。


だがしばらくして気づく。

おそらく深層世界の中心の大樹、、そこへ近づく程危険は少ないことに。


むしろ外に向かうほど強い魔物が蔓延っていた。


理由はすぐにわかった。

中心には主と呼ばれる魔物が、縄張りを守り、そこには彼らの群れが規律を守るように過ごしていたからだった。


最初に見た時は息がが止まった。

黒い毛の大猩猩、彼と目があった時、終わったと命を諦めたが、彼は僕に興味がないようにその場を後にした。


止まった息を吸い込み、家に逃げた

途中に現れた魔物、十分に命の危険がある強さ、しかし、その魔物が大したことのないように思えるほど、彼を畏怖した。


命辛々、生き延びて家に着く。傷だらけの身体のまま命懸けで倒した魔物の肉を貪った。


日記にも彼のことは書かれてあった。



シバ、日記ではそう彼を読んでいた。

後でわかったがらシバとは神と言う意味があるらしい。

なぜそう名付けられたかわかるような気がした。


彼はたまに戦っていた。

縄張りや仲間を守るためだった。

その戦いの音はまるで鐘が鳴ったように深層世界を響かせた。

遠目で観戦するしかなかった僕はその強さに見惚れていた。あの光景は今でも忘れない。


彼がいるから中途半端な強さの魔物は外に外に広がっていたのだ。弱い魔物は逆にデウスの脅威にはならないため、デウスに守られるようにそこへ暮らしていた。


中途半端と言っても僕では到底勝てないような強さ、その魔物たちが僕が帰れないように大きな壁となっていた。

よくあの外側を通って中まで来れたなと思う。



結局、僕はそこで2年以上生きた。


観察を怠らず、警戒を怠らず、鍛錬を怠らず、

準備を怠らず、そして僕は自分でもわかるくらいに強くなった。


移動できる範囲は拡大して、帰り道の方角も特定した。

そしてついに帰還の準備を整え終えた。


でも、あの時僕はあの世界の住人になっていたんだと今になってわかった。


帰る前にあのシバに挑まなければ、


あの時の僕は、そう思ってしまったのだ。


挑まなければならない、馬鹿みたいだけど、あの時の僕はそれが当たり前のように、その選択をした。


森の中央に足をすすめる。

家に帰るかのように当たり前のように足が無意識に進んだ。



彼とその群れを見つける。


彼は悠然と大樹に腰掛け植物を食べていた。

周りの群れの雄が僕を見つけて威嚇を始めた。

しかし不思議と襲ってはこなかった。


シバは落ち着いたように木から降りて、歩み寄った。


僕は構え攻撃を仕掛けた。


そして意識はそこで消えた。


目を覚ますと視界には彼がいた。

体は痛みで動けなかった。草を食べながら僕を見下ろすシバ。


あの時僕は満足していた。

それで良いと思っていた。

彼は指で僕の頭を揺らす。


1年前に助けたことのある子供の大猩猩と数人が僕の隣に座り興味津々な目で観察していた。


しばらくしても彼は何もしなかった。ただそこらの草を食べながら見ているだけ。


次第に身体を動かせるようになり、

僕は身体を起こした。


それを見た彼は、ゆっくりと立ち上がり群れの中へと子供の大猩猩達と共に帰っていた。


そして僕は深層世界から立ち去った。

あの世界の構造に習って、主に挑んで負けた僕はあの地にいてはならない、外へと敗れ去らなければならい。


当たり前のような、不思議な気持ちでその地を後にした。


主の縄張りの外、

あそこは主に敗れた魔物、主に挑めない魔物、敗者の魔物が蔓延っている。

そんな死地を長い時間をかけ、死にものぐるいで抜けていく。

あの世界は僕を信じられないくらい強くしてくれた。

下層まで上がることができた。

下層まで行くと魔素も弱まり、それに応じて魔物も弱い種になっていく。

しばらく深層世界の魔素になれたせいで薄く感じるが不思議と問題なかった。

そこからは順調だった。とても長い距離、かなり下まで落とされたんだなと痛感した。

深層を出て一か月、懐かしい洞窟の形、しばらく進むと、ようやく僕はある場所を見つける。

昔僕が引いた線路のあと。


帰ってきた。


涙が溢れた。


しばらく上がっていくと人の声が聞こえる。

知っている声、仲間の声、、、


そしてその姿を視認する。

向こうも僕に気づいているようだった。

涙で視界がぼやける。


シド「オタル、、オタルか!!」


オタル「うん!」


シドさん達の声が僕の名を呼ぶ。

お互いに駆け寄る、

シドさん以外の人たちが何かを察して立ち止まる。

シドさんは止まらずに腕を出す。


僕と腕を出し、漢の挨拶をする。


シド「みねぇ間に強くなったみてぇだな」


オタル「、、、そ、そうかな」


シド「みろ、お前の成長具合に感じてあいつらびびってやがる」


「な、んなことねーよ」

「オタルお帰り」

「また背のびたか?」

「いやぁすまん、正直ビビったおかえり」


シド「レオンやリカードも待ってる、帰るぞ」


オタル「うん!」


こうして僕は地上に出た。


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