マッドの恋
はっと目を覚ました。
身体を動かすと痛みが走る。可能な限り状況を把握する。
石と木材で作られた。知らない部屋。治療された自分の体。
あの巨躯のオークとの対決の記憶が頭によぎる。
負けた。命があるだけでも幸運なのかもしれない。
エルバさん、ホランドさん、ダニエルさんは無事だろうか。
俺の戦いは意味があったのだろうかと頭を巡らせた。治療されていると言うことはとりあえず生かされていると言うことだ。
パサと家の入り口の麻のカーテンが捲れる。
姿を見せたのは若いアマゾネスだった。
どこかで見た気がする。まあそんなわけはない。
俺が目を覚ましたことに気付き姿を消した。
「クスル様、雄が起きました」
壁の向こうから彼女の声が聞こえる。
その声の後、彼女は老婆と共に再び姿を見せた。
ーーーーーー
「大丈夫そうだな、ムイ、食えるようなら飯でも食べさせておけ」
「はい」
クスルというアマゾネスの老婆の荒い診療の後、ムイというアマゾネスに指示を出し、その場を後にした。
ムイは料理を取りに部屋を出た。しらばくして暖かい料理を手に彼女は俺の隣で腰を下ろす。
「いっ」
骨折していて、両手とも固定され使えない。力を入れると痛みが走った。
「大丈夫ですか?」
ムイは心配そうに声を掛けた。
「あ、はい」
答えると彼女は匙に粥のようなものを掬うと俺の口へと運んだ。
「口を開けてください」
「あ、」
彼女は一応は敵だ。そう頭では理解できていてもも、心にはむず痒さを感じる。
彼女の粥を口に入れる。
まあ美味い、まあ食える。温度も丁度いい。
「お口に合いますか?」
「は、はい、美味しいです。」
むず痒さを感じながら彼女の食事を夢中でいただいた。
ーーーーー
「食欲は大丈夫そうですね、よかったです」
完食したあとに彼女はニコリとした笑顔に心動かされる。
我に帰り彼女に質問をする。
「あ、あの、・・・・!?」
少し声を上げすぎて、身体に痛みが走る。
「大丈夫ですか」
「はい、他の人達は」
「皆さん無事です。お一人は護衛付きでお帰りになりました」
そうか、エルバさんは勝ったのか、良かった。
だが、少し疑問がよぎる。
足枷すらされてない。
いくら俺が怪我人だとしても不用心過ぎる。この」ムイというアマゾネスも戦闘ができるとは到底思えない。この娘を人質にする方法もあるのでは・・・いやこの怪我では何もできないか、
ーーーーーーーーー
「マッド!!」
その後、部屋に訪れたのは医療兵のホランドだった。
「ホランド、無事でよかった・・・・」
「私なんか・・・目が覚めてよかった」
「ありがとう・・・・ホランド、君も自由が許されてるのか?」
「はい・・・事情を話しますね」
「あ、ああ」
「現在私たちは客人として迎えられています」
「・・・・客人」
「私たちがここから逃げようが、情報を持ち帰ろうが何一つ止めないようです」
「うまく意味が・・・・」
「自分も最初は理解できませんでしたが・・・・彼らの目的・・・・私たちは遅すぎたんです。」
「この群れはもはや、小国と呼べるほど大きくなっています。彼らはもう国ができたぞと周りに知らせたいのでしょう。3年前、長がアマゾネスからクリフォードに変わった時にはもう、準備は終えていたようです」
「準備・・・やっぱり反乱」
「いえ違います。彼らの目的は共存です」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
「お薬の時間です。あ、衣類も変えますね」
ホランドは説明の後、エルバさんを呼びに部屋を後にした。
アマゾネスのムイが俺の看病のため部屋に訪れた。目を覚ましてから、彼女は甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれた。いやな顔をせず献身的に解放してくれる。敵、いや敵味方関係なく、彼女たちには感謝している。下の世話までしてもらった。彼女には頭が上がらない。いくつか質問するうちに問題なく話せるようになった。
「お体拭かせてもらいますね」
そして、服を脱がせてもらい、体を拭く。
もちろん、大事なところも。しょうがないじゃないか、刺激が来れば反応していしまう。しかもこんな可愛い女性ときた。とても恥ずかしい。
「す、すみません」
俺は顔をそむける。
「大丈夫ですよ、気にしないでください」
「彼女の声は平然としている。なれているのか、顔を見れない、ご褒美のような拷問の時間は長くもあっという間にも感じた。
ーーーーーーーーーー
「終わりました」
「あ、ありがとうございます」
やっと彼女の顔を見ることができた。
彼女は眼を合わせてくれない。先ほどはまっすぐに見てくれたのに。
「本当に気にしないでください、役目ですので」
「は、はい」
彼女の声が高くなったような気がする。彼女ももしかして恥ずかしったのかもしれない。
そう考えるとこちらも恥ずかしくなってきた。こちらも顔を背けた。
「ま、またなにかありましたら声をかけてください」
「は、はい」
そうして彼女は部屋を後にした。
この気持ちは経験したことがある。
我ながらなんとちょろい、しかも敵かもしれない相手に・・・・
俺はムイに惚れたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「傭兵の国」
ぽつりとエルバが言葉を漏らした。
とある部屋にクリフォードと兵長のエルバが食卓を挟み床に座っていた。
「必要だろ?この世界には」
「遅かったな、ここはデネガウルじゃない、平和だ」
「そう思ってるだけだろ?」
「・・・・・」
「反乱、小競り合い、いまだなくなってはいない。混沌派の影も強い。デネガウルもこちらに刃を向けても不思議べはない、アルテリアもだ。敵対ではないが親交しているわけでもない。紙切れ一枚の約束なぞ信用できるのか」
「森から出たこともないのによく知っているな」
「19年・・・・いやその前から計画していた。外の情報なぞ集める方法なぞ腐るほどある」
「誰に習った」
エルバは言葉を続ける。
「オークにここまでの大軍を作れるとは思えない。後ろに混沌派でもいるのか」
「ふふ、確かに接触はあった。しかしやつらには興味がない」
「お前ひとりが計画したとでも」
「一人ではないさ、さて・・・どこから話そうか・・・・・・」
そうしてクリフォードは昔話を始めた。




