アマゾネスの森
春、冬の準備を終え国からの命を受けて僕たちは未開拓の地に向けて調査隊の一員として向かった。
向かうはアマゾネスの森、オークの国が形成されつつあるらしい。
僕たちは冒険者の集まりは、国の調査隊の応援として、総員50名の程の編成を組んでその森へと向かう。
僕たち意外にも何組かの調査隊が存在する。
海から向かう組、一部空挺を使う組、
僕たちは第6捜索隊として山から向かうルートでアマゾネスの森を目指した。
山から向かうには途方もない高い山道を越える必要がある。
ベガルタ大陸の南が未だ未開拓なのもそのせいだ。山は険しく、空は強い風で困難、海は強い渦潮や嵐、腕の立つ者が持って帰ってきた。細かな情報、森からでたアマゾネスからの情報、
情報と言えばその程度だ。
数々の投資家や国が開拓に乗り込んだが、あ未だ成功したものはいない。
僕たちは先人が命をかけて見つけたルート使って未開拓地を目指した。
山岳ルートは困難を極めた。
馬車は当然の如く使えず、
標高が高く空気も魔力薄い、日に日に皆の魔力の量は減っていった。体力、食料、物資共消耗が激しかった。
不幸中の幸といえば時折魔物が現れることだ。
魔力不足の僕たちがどうにか討伐できた。
食料にできたのは大きかった。
時折逃げるしかないような魔物もいたが、どうにか一人も欠けることもなかった。
そして等々、僕たちはこの山脈を越えたのだ。
しかしそこで部隊は壊滅することになった。
アマゾネスとオークの襲撃、僕たちは戦い、逃げて、散り散りになり、等々僕らは捕らえられた。
ーーーーーーーーーー
捕縛された僕達は、檻の中に入れられある場所に運ばれていた。
森を進み続けその場所にたどり着いた。
山の斜面に作られた街。
崖に橋が通され街の中へと入る。
最初、オークの姿は見当たらなかった。街の奥に進み、木造の塀の中に入ってからオークの姿がちらほらと見え始めた。
オークとアマゾネスの生活域を分けているのか。
僕はそう理解した。
驚いたのはあまりにもそのオーク達が理性的なことだ。
あるオークは武器を研ぎ、あるオークは巨大な岩を持ち上げ鍛錬をし、あるものは鍛冶屋であろうアマゾネスと会話をし、その鍛冶屋のアマゾネスの後ろではアマゾネスの持っている加熱された鉄をオークが槌で叩いていた。
明らかに共存をしていた。
一緒に捕まった仲間たちもその光景驚いているようだった。
そして、僕たちはとある広間に連れられた。
おそらくは修練場だろう。
柵で囲われたそこにはオークとアマゾネスが集まっていた。
一つわかることは、ここに集まっているオークとアマゾネス達がとてつもない強者だと言うことだ。
僕たちを襲ったオークやアマゾネス達とは格が違う。あまりの空気の圧に背中にじっとりと汗が滲むのを感じた。
正面の建物にいるオークとアマゾネスが頭を下げ始めた。
この街の長だと直感した。
ぎしりと床をならしながら、彼が姿を表した。
彼がクリフォード、
白いオーク
情報通り、いや、情報以上の存在感を放っていた。歩く姿には野性味と一緒に気品を感じる。
間違いなく彼がここのボスだ。
そう理解させるほど彼に異質を感じた。
隣にいるのが
彼を見続ける僕たちの頭をアマゾネスが地面に押し付けた。
「いい、頭を上げさせろ」
落ち着いたしかし重みのある声だった。
頭を抑える手が離され、僕たちは頭を上げる。
「歓迎しよう」
白い肌と髪、紫の刺青、骨格はオークよりも人に近い。
かれの鋭い赤い眼光に、ただただ僕は畏怖を感じていた。
ーーーーー
「素晴らしい」
僕の隣で、椅子に腰掛けたクリフォードがそう言った。
僕ら調査隊のリーダーを務めたエルバ・アドリース兵長、彼は相当な実力者だ。未だ兵長だというのが信じられないくらいに。
彼の実力と指揮があったからこそ、即席で作られたにも関わらず、僕たち調査隊は山を越えることができたのだ。
そんなエルバ兵長をクリフォードは称賛した。
少し前、クリフォードは戯れと称して、5対5の勝ち抜き戦を始めた。
勝てば1人逃してやるという条件で
互いに、武器は刃がない模擬器を使用。
おそらくだが、俺や他の仲間達では、この選ばれたオークとアマゾネスには敵わないだろう。
山越えと襲撃でら消耗していなくてもだ。
そう思わせるほどの強者4人と合間みえることになった。
エルバ兵長もわかっていたのだろう、僕たちではかてないと。だから彼は初戦から戦ったのだ。
明らかに消耗していた。
結果としてはエルバ兵長はオーク1頭を難無く倒し、2戦目のアマゾネスも疲れを見せながも打ちまかした。
そして3戦目、他のオークよりも巨躯なオーク。
・・・・僕は覚悟を決めた。
「僕が出ます!!!」
「だめだ」
エルバ兵長は即答した。
「考えて下さい!こいつの言ったことが嘘でも今はこの・・・!?」
言い終わる前にアマゾネスに顔を勢い良く踏まれ、地面に顔を押し付けられた。
「よせ、たしかに、嘘だという可能性もある」
クリフォードは俺を踏むアマゾネスを手で宥める。アマゾネスは即座に脚を退け、一歩後退する。かなりの忠誠心を感じられた。
彼は言葉を続けた。
「信じろとは無理な話だろうが、だが、信じてもらうしかない。なんなら山越えに護衛を付けてやってもいい・・・お前たち次第だ」
「エルバさん、これが本当なら絶対に勝ちに徹するべきです。信じて下さい!!少しでも休んで力を貯めるべきです!!」
「・・・・・・・」
エルバさんは葛藤しながらも納得してくれた。
僕は武器を持ち決闘場に立った。
ーーーーーーーー
クリフォードは戻ってきたエルバを隣に座らせ話しかけた。
「良い部下を持ったな」
「ああ、でも部下じゃない仲間だ」
「そうか、身なりからして、傭兵か。もしくは冒険者・・・・・」
「・・・・何が目的だ」
「外の戦いを見たかった。ただそれだけだ」
「・・・・」
「約束は守ろう。勝てば1人逃してやる。
さっき言ったように、必要なら腕の立つアマゾネスを数人付けてもいい、
セトまで護衛をさせよう」
ーーーーーーーーー
僕は与えらて中から武器を選ぶ。
防具は取られているものを着装した。
わかっている。
おそらくこの対戦相手には勝てない。
僕にできるのはすこしでもエルバさんの体力が少しでも回復する様に時間を稼ぐしかない。
他2人は救護、調査専門で戦闘はできない。
エルバさんならば・・・・
体力が戻れば、それが少しでも可能性の足しになるだろうと、
僕はその小さな可能性に命をかけるしかなかった。
「本物を使え」
巨躯おオークはそういった。
クリフォードに視線をうつするとクリフォードの指示で僕には、没収された愛剣が渡された。
都合がいいのは間違いない。
戦いの合図がなる。
戦闘相手の巨躯のオークの武器は双棍
刃が潰されていようと関係ない。直撃すれば即死だろう。
開始と同時にオークが双棍を振る。
予想以上に早い棍棒をどうにかよける。
僕が先程いた地面が軽々と破壊される。
衝撃で飛んできた土と石が痛い。
続く逃げ決め、反対の棍棒の横の薙ぎ払い。姿勢を落として紙一重で避ける。
もらえば即死。
必死に避ける。
ーーーーーーーーーーーーーー
エルバは必死に自分の代わりに出た仲間マッド・モーガンの戦闘を目に焼き付けていた。
エルバの目からも、マッドの勝ち目はないと、
それ程の力量差があると理解していた。
マッド自身がそれを理解していることも。
マッドの意思を汲み取り必死に体力、魔力の回復に神経を注いでいた。
後の2人の仲間は非戦闘員だ。
4対4ではい、初めから4対2だ。
デッドを犠牲にしてでもこのうちの誰かを逃さなければならない。
そんな中、自らを時間稼ぎとして命をかけたデットに心の底から尊敬と、己の力不足による懺悔の念を感じていた。
マッドはオークの攻撃を紙一重で避けている。
隙を見つけては斬りかかるものの、鎧に弾かれ、
その巨躯に似合わず素早い。
しかしながらオークにも血が滲んでいる。
側から見れば拮抗している戦い。
マッドに勝利の予感が過ったその時だった。
マッドの一瞬の好きを見逃さななかったのはオークだった。一際魔力を込めた棍を地面に振り下ろす。
どぉん!稽古場の地面がひび割れ、その衝撃が微かにマッドの脚を浮かせ、バランスを崩す。
そこに棍の薙ぎ払い。マッドは棍を完全には避けきれずに接触した。
どうにか片手の子盾と剣で受けるも、デットは打ち飛ばされ、観客達の頭上を飛び場外に消えた。
「マッド!!」
マッドに走り寄ろうと立ち上がるがアマゾネスに止められる。
「動くな」
同時に刃の先から仲間達にも向けられる。
エルバは葛藤の末にその場に腰を落とした。
ーーーーーーーー
腕が痛い。
盾ごと破壊された。
剣も折れている。
かろうじて戻った意識の中、自分の現状を理解しようとした。
1人のアマゾネスが隣に立っていた。
美人だ。薄着の隙間から谷間が見える。
あーそういえば最後に女を抱いたのはいつだっけ、
先輩の冒険者に色街で奢ってもらって以来かもしれない。
金等級に上がってからも一人で行く勇気がなかった。
もっと女を抱きたかった。
何を考えてるんだ。こんな時に僕は。
起きなければ、
全身の痛みに鞭を打って立ち上がる。
脚は動く。
右手は使える。
少しずつ決闘場に向かう。
巨躯のオークは真っ直ぐに俺を睨みつけていた。
もう勝ち目はない、
それでも、頭を打っておかしくなっていたのかもしれない。
これが意地なのかはわからないが。
オークの前に立ち折れた剣を構えた。
ーーーーーーーーーー
互いに距離を詰めオークが双棍を振り下ろす。横に避けながらマッドは懐に入る。
同時に脚を斬りつけた。
反応したオークだが、間に合わず外腿に裂傷を受ける。
怯まずにオークは棍を薙ぎ払う。ギリギリで避けながら同時にオークの腕を斬りつけた。
完全に避けられなかった棍棒が頭に接触、額の肉を抉る。
一撃は浅い、それでも構わず再度斬りつけた。
初めてオークが棍を防御に使った。
勝ちの予感はなかった。僕の攻撃では致命傷を負わすことは叶わないということは自覚していた。
オークも棍を振るう。
避けながら距離を取ったところに、投げるように棍を地面に叩きつけ、当然のように地面が割れる。
横に避けはしたが、次の攻撃が来る。そう体を身構えた。しかし、予想と違った。意識外の逆、飛んできたのは棍を手放した拳。
早い、反応が追いつかない。
そして僕の意識は消えた。
ーーーーーーーー
マッドが地面をバウンドして決闘場の端まで飛ばされる。
決着、微動だにしない。
「!?・・・マッドッ」
エルバは歯を噛み締める。
巨躯のオークの拳、中指と薬指の間の付け根にマッドの剣が刺さっていた。
咄嗟に防御したときに刺さった、マッドが無意識に刺したのだ。
これでは右手で棍を持つことはできても、力は半減、オークはその刺さった剣を見つめ、横たわるマッドに目線を移す。
「そこの一人行ってやれ」
クリフォードがそう言った。
その言葉を受けて、手枷を外された捜索隊の一人、救護の役をもったホランド・ストムがにマッドに駆け寄る。
「マッド!・・・・」
マッドは死んではいなかった。
それでも安否は不明、両手は折れている
穴と口、片耳から血、肋骨も折れているだろう。
「手を貸してやれ」
「はい」
クリフォードがそういうと二人のアマゾネスが出てきてマッドを担架に乗せる。
「待って!慎重に!」
ホランドがアマゾネスに注意する。それを受けてアマゾネスがホランドを、キッと睨む。
ホランドは怯え怯みながらも言葉を続ける。
「・・!お願いします。頭を動かさないように!」
運ばれていくマッド見ながらエルバは怒りを溜めていく。
見据えるはあの巨躯のオーク。
そのエルバを見たクリフォードは巨躯のオークに問いかける。
「どうする?ガランド交代するか?」
ガランドは首を横に振った。
刺さった剣を抜き腰布を破き無理矢理に傷口に縛るように巻く。
慌てて二人のアマゾネスがマッドが傷つけたガランドの傷に包帯を巻く。
そしてクリフォードが首をくいと振ると、
エルバに向けれたらアマゾネスの剣が仕舞われる。
「さあ、回復したか?」
クリフォードの質問を無視し、エルザは力強く立ち上がり、巨躯のオーク、ガランドの前に立った。
アマゾネスがエルバの愛剣を手渡す。
「いいのか?」
目の前のガランドではなくクリフォードにそう聞いた。
クリフォードには理解したように答える。
「任せよう」
ただそう一言だけ。
「・・・・その棍棒をくれ」
エルバは愛剣と同じ長さの棍棒を指定した。それと愛剣を交換。
その選択にガランドは眉間に皺を寄せる。
「舐めるな」
ガランドの言葉を無視し、エルバはクリフォードに提案をする。
「生かして勝てば、もうもう一人追加で逃がせ、
そしてホランドに治療師を何人かつけてくれ」
「わかった、優秀なのをつけよう。しかし前者の方は却下だ」
二人の言葉を聞き、さらにガランドは怒りに燃えた。
「手加減のつもりか」
「ああ、そうだ、さっさと始めてくれ」
その言葉に怒りに顔を歪め、ガランドは構えを取った。
そして開戦の合図が鳴った。
ーーーーー
一瞬、
ガランドが双棍を振りかざすと同時にエルバが一瞬で間を詰めガランドの脚に強烈な一撃を当てる。
足は舞い上がりバランス崩すが、ガランドはお構いなしに棍棒を振った。
振られた棍棒はエルバに当たることなかった。棍棒を避けると同時にエルバの棍棒がガランドの頭を捉えた。
重い鐘のような音を出してガランドは反転しながら頭を地面にぶつけ転げながら決闘場の端、クリフォードの足元までまで飛ばされた。
ピクリともせず、ダランとその場に倒れているガランド。
エルバは少し困った顔をした。
力を入れすぎてしまった。
もし死んでしまってはさっきの交渉が無駄になってしまう。
「生きてるか?」
ガランドの安否を確かめるアマゾネスに声をかける。
アマゾネスはそれにコクリと頷く。
「さっきの小僧に治療師をつけてやれ」
クリフォードは後ろの従者にそう指示した。
そして最後の対戦相手が現れた。
アマゾネス、武器は大きな鉈のような武器。
かなりの基礎魔力が伺えた。
ガランドより遥かに強い。
エルバはひしひしと感じていた。
試合の合図がなる。
凄まじ速度で轟音を鳴らしながら剣を交える二人。他のアマゾネス達が見張るほどの戦い。
長期戦だった。
徐々にエルバの体力が先に尽きていく。
押されるエルバ、一際魔力を込めたアマゾネスの一撃を紙一重で避ける。
あたりに砂埃が立ち込め、一旦二人は間を取る。
アマゾネスも消耗はしているが、エルバの疲労の方が明らかに上だった。
「外にはお前みたいな奴がゴロゴロいるのか?」
アマゾネスはエルバに問いかけ。エルバが答える
「・・・・ああ、お前は」
「グリア・ボー、あんたは?」
「エルバ・アドリースだ、・・・・」
エルバの返事にニヤリとするアマゾネス。
「力が戻ったらまた戦え、だったら今回負けてやってもいい」
エルバはしばらく考え込み
「わかった」
「よし」
グリアは武器を地面に落とし、嬉しそうに負けを宣言した。
その光景をクリフォードはやれやれとため息をついた。
クリフォードが椅子から立ち上がる。
「困った奴だ、手を焼く、しかし約束だ、誰を逃すか決めろ」
「・・・・彼を、護衛付きだ」
エルバが指定したのは国の調査員の男だった。
名をダニエル・クリフト、記録が主な業務である。地理に詳しく、知識があり、地形の把握の為エルバ達と共に調査を行っていた一人だ。
「いいだろう、用意してやれ」
「かしこまりました」
アマゾネスの女に指示をし、クリフォードはその場を後にした。
その後ろ姿をエルバは凝視していた。
「へ、兵長」
「すまない、信じるしかない、これは賭けだ」
「いえ、覚悟はできています。私の力不足で・・・」
「そんなことはない、帰還するなお前が一番なんだ、いいか、頼む」
「・・・・・はい」
ダニエルは悔しくさを噛み締め、首を縦に振った。