ファン・ハッシュドア
オーガの一件から数か月、意外とオーガの嫌がらせはなかった。
裏でフレイヤが働いてくれたのか。
以前はかなりゲラルトワーカーズの邪魔をしていたようだ。
、、、、、とりあえず何事もなく安心している。
冬の風が冷たくなり、この勇都ガノリアにも雪が積もった頃。俺とオタルはハッシュドアという小さな事業を立ち上げた。
ダンジョンに潜るようになって、ダンジョン内での人命救出が何度かあった。
いくら気を付けていてもダンジョン内では死人や行方不明者が後を絶たない。まあ当然だ、魔力の濃いダンジョン内の魔物は地上のそこらの魔物よりも危険だ。
そこでその中で冒険者たちの救助、治療を生業とするギルドも少なくない。
お人好しのオタルさんの大好きな人助け。お他の提案もあり、この事業に手をだすことにした。
最深層から生きて帰ってきたオーク、その噂を聞きつけて依頼してくる客もいた。
初期投資はフレイヤから借りた。まあぼろ儲けとは言わないが、まあまあ経営できている。
ガノリアの端、人気のない古びた母屋をゲラルトワーカーズの職人コルビンに監督してもらい改装しながら起業して1か月、とある人物が助屋ハッシュドアを訪れた。
「こんにちわ」
「あ、ファン、いらっしゃい」
ファン・ハッシュドア
彼もゲラルト・ハッシュドアに育てられた一人だ。
見た目はサブスだが、人狼という危険な特徴を持っている。
珍しいことに若くして人狼の力を制御できているようだ。ゲラルトハッシュドアというゴブリンは危険な種でもお構いなしに育ててしまうらしい。オタルといい、ファンといい、どんな教育をしたらこんなに思いやりのある優しい性格になるのか、全人類を教育してほしいくらいだ。
ファンを出迎えたオタルがお茶をいれている間、俺が対応した。
「いらっしゃい、どしたん」
「ちょっと近くに寄ったので、あ、これお菓子です」
「あらあら、気使わなくていいのに」
うん、気の利くいい青年だ。
「ありがとう、いつでもきてよ」
オタルがお茶をファンに注ぐ
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「はあ、寒ぃのにようやる」
ファンが来たときは大抵こうなる。
組み手
二人とも温厚だがどうも戦闘狂らしい。稽古が好きでたまらないようだ。
ファンの土産を食べながら家の中からそれを眺める。
せっかくの休みだが、少なくなった薬でも補充しとくか
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