帰郷
レオン
ゲラルドワーカーズ、
今日は穏やかな日だった。
子供たちに稽古をつけ終わり、妻のティアラが入れてくれた茶を飲む。
走る音が聞こえる。ゲラルドワーカーズの仲間の獣人があわ正しく事務所の扉を開けた。
「レオンさん!」
「どうした?」
「オタルが帰ってきました!」
ーーーーーーーーー
事務所の寮の広場に仲間たちが集まっている。
1人のドワーフの老人、建築部のコルビンが声をかけてきた。
「あれがオタルか?」
そうだった。
コルビンはオタルを初めてみる。
話だけは知っているが。
「ああ、怖いか?」
「いや、話の通りだと思ってな、安心しろオークは嫌いだが、お主の弟子だろ?失礼はせんさ」
「それは有難い」
集まりの傍に見覚えのあるエルフの女性とホルム人の青年、サブス人の少女の姿があった。
ふと目が合う。
彼がオタル手紙とロッシュカッターからの情報にあった、フルドキャンセムだろうか。
コルビンとの話を終えて皆の集まるところに近寄る。私に気づき、みなが道を開けてくれる。
開けたら中に懐かしい顔を見る。
優しいオークの顔を。
「よく帰ったな、おかえりオタル」
「レオンさん!・・・・ただいま」
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事務所にオタルとフレイヤ様とフルドさんとタイラさんを迎える。
申し訳ないが仲間たちには仕事に戻ってもらった。
妻のティアラが手を叩いて喜んでいた。
「オタル!おかえり!また背伸びたんじゃない?」
「ただいまティアラさん」
「ゆっくりしてほら座って、あなたがフルドさん??こちらは・・・」
「こちらがフレイヤさんとタイラさんだ」
「フレイヤですよろしく」
「フレイヤさん!タイラさん!良くいらしてくれました。
どうぞ座って」
ーーーーーーー
オタル、フルドさん、タイラさんを歓迎し、オタル達の旅の話を聞いていると、遅れて広場に来れなかったオタルの親友、いや兄弟のリカードや他の仲間たちが自分に駆け込む。
「オタル!?」
「オタルさん!?」
「良く帰ってきたな!!」
仲間たちは共々にオタルに駆け寄る。
「リカード!久しぶり!
ファン!背が伸びてる!すっかり変わったね」
オタルと仲間たちが再会の感激に浸ってる中、私はフルドさんに声をかける。
「すまんな、客人をほったらかしにして」
「いいよ」
私の言葉にフルドさんが答える。
そしてフレイヤ様が私に声をかける。
「レオンさん?よかったら2人でお話しできない?」
「ああ、大丈夫だ、オタルの礼もしないといけなからな」
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奥の客間、扉を固く閉め、誰も通さないようにティアラに頼んだ。
薄暗い客間に私とフレイヤ様は席についた。
最初に言葉を発したのは私だった。
「こんなところで出会うとは思いませんでした。姫様」
「もう姫じゃないわ、ただのフレイヤ、畏まらないで」
「・・・いえ、この場ではそうさせて下さい、」
「好きにして」
「フレイヤ様、まさか本当に名前も変えていないとは」
「父上や母上からもらった名前だし、変えたくない」
「立派です、危ういですが・・・・」
「あの時は幼かったけど、良く覚えてる。レオン百人長の率いる獅子部隊、有名人ね」
「光栄でございます。私の元へ訪れたのは決起派のことでしょう?」
「ええ」
「貴方自身が決起の抑止を行なっていたとは、仲間・・・元仲間から聞いた時はまさかとは思いましたが・・・・・」
フレイヤ様は静かに私を見つめていた。
目が魔王様の奥方に似ている。
「私には一才その気はありません。仮にあなたがそちら側だとしてもです」
「本当?」
「はい、後ろにいる隠密に気付いたからではありません、心から、このまま仲間たちが戦争を経験しないことを願っています」
「・・・・安心した」
「たしかに私たちとホルム人は分かり合えていません。互いにまだ恨みが消えていないのでしょう。
しかし、あの王は私たちを理解し歩み寄ろうとしています。
少なくともこの国には恨みはあれど彼を敵になる同胞はいませんよ」
「私もそうであって欲しい・・・・・一つ良い?」
「はい、なんとでもお聞きください」
「クリフォードという名に聞き覚えは?」
「・・・・いえ、特には、良くある名前としか・・・何か?」
「・・・・・・」
「魔王様に誓ってありませんよ、理由をお聞きしても宜しいですか?」
「大陸の南にアマゾネスを配下にしたオークの軍が出来つつあるの、その頭目がクリフォードと言う名」
「・・・・・決起の為に、決起派が協力していると?」
「えて、未だ関係があるのかも定かではないけど」
「可能性は十分にあると」
「うん、
今も水面下で計画が進んでいるかも、
私はもう、姫として見放されたから、軽蔑してるでしょ」
「まったく、気にすることはありませんよ、あなたはもう黒の魔女フレイヤなのですから、私は貴方の好きな道を歩んで欲しい・・・慎みは大事ですが」
フッとフレイヤ様は笑う
「・・・・ありがとう」
ーーーーーーー
リザードマンのリカードはそう会話をつなげた。
リカード、俺とタイラの三人はフレイヤを待たずにリカードにゲラルドワーカーズの案内をしてもらっていた。
オタルはレオンさんの事務所でお留守番だ。
オタルを知らない働き手もいる。
びっくりされてもめんどくさい。
製造、建築、運搬、林業、鉱業、飲食、幅広くしているらしい。良くもまあこんな短時間にここまで広げたようなもんだ。
建設中の建物が沢山ある。この一箇区がほとんどゲラルドワーカーズ関連の会社や家らしい。
リカードは各種会社の斡旋、紹介、派遣、補償などの繋ぎをしているらしい。
わけぇのに良くやる。
「ゲラルドワーカーズは会社じゃなくて、会社同士、繋げて仕事がどこにでも誰にでもできるようにするギルドだ。
仕事がないところには仕事を、人が足りないところには人を、技術がなければ顧問をつける。金がないところには金を貸す」
「ようやってんな」
「まだまだ、問題や試行錯誤だらけ、ズルする奴もいるしな」
リカードと問題なく打ち解けたと思う。
「てか、話ってなんだろな」
リカードはぽつりとそうつぶやいた。
「さあな」
旅の途中、オタルからレオンは戦争時に有名な軍人だと聞いた。
フレイヤの仕事何となくだが予想はできた。
決起の抑止、あいつは多分魔王の娘のフレイヤ姫だ。普通名前変えるだろアホなん?
未だこの大陸でも、奴隷撤廃制を反故にしている国は少なくない。仲間の為に決起を目論む魔族は沢山いるだろう。
あいつはそれの抑止の為に旅してたんじゃないのか?と俺は思ってる。
あのハフの村での一件の時、変化したフレイヤを見た。
カオスの血を継ぐ者だっけ、
別に魔王だけじゃない、ごくまれに一般人にもカオス継ぐ者が現れるらしい。
例えば世界に数人しかいない超珍しい血液型みたいな感じだ。
この世界の時代背景を、あの情報オタクのあいつに教えてもらわなければ、フレイヤのことなんてただの大食い女しか思わなかっただろうが、
ずいぶんとファンタジーな巡り合わせになったもんだ。
「ここがタイラさんの職場だ」
リカードはそう言って建物の扉を開ける。
中では十数人の魔族たちや亜人が作業をしていた。裁縫工場、主に皮や布製品を作っているらしい。
「タイラさんは経験あるんだよな」
「は、はい」
「即戦力は助かる。女性が多い職場ならここが一番最適だ」
「悪いなわがまま言って」
タイラの為に男が少ないところを選んでもらった。
「いいよ、このくらい、逆に人手が欲しかったくらいだ。そんでタイラさんいつから入れる?
近くに簡単な寮がある。
金があるなら格安で物件も手配できるが」
俺の言葉にリカードは笑顔で答える
「え、あ、その、」
タイラはまだ初対面の男性が怖いらしい。
「治安のいいところがいい、寮はどれくらいかかる」
「基本給料から差し引きだが、月に2から3銀ってところだな、ワーカーズ関連なら警備がいるから安心だとは思うが」
「わかったそれで出来るだけいいところを頼む。それでいいかタイラ?」
「は、はい」
申し訳ないが俺が決めさせてもらった。
オタルの恩を感じてもらえるなら出来るだけでも贔屓でも、いいところに住んで働いてもらいたい。
「おう任せてくれ」
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リカードに宿まで手配してもらった。
至れり尽くせりだ。
リカードに準備してもらう間、俺はタイラと宿に入り荷物を整理する。
部屋で別れる前、
そうだこれを渡しておこうと荷物からあるものを取り出す。
「これは」
「馬車を襲った魔物の毛皮、就職祝いだ」
「え、でも、売らなくていいんですか?」
「好きにしろ、一応そいつがいなかったらお前は今頃売られてたかもしれねえし、もらってくれ」
あの魔物がタイラの乗る馬車を襲わなければ俺たちは素通りしてただろう。
おかしな話、彼女の不幸を救ったのはあの魔物だったわけだ。
「・・・・・ありがとうございます。大切します
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レオンとの話を終えた私はオタル元へと戻る。
オタルはレオンの奥さんと料理を作っていた。
いい匂いがする。
「フレイヤおかえり、なんの話ししてたの?」
「あんたの小さい時の話し」
「え、」
オタルは焦ったようにレオンを見つめる。
「レオンさん変なこと言わなかった?、いや何で2人で僕のこと、仕事の話って」
「仕事の話ついで」
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その後、仕事を終えた元奴隷区の仲間たちは集まり祭りのようにオタルの帰りを歓迎していた。
タイラはティアラさんの手伝いを買って出て言ってしまった。
その集団の傍に私とフルドは酒をつまみながら
その賑やかな光景を見ていた。
「お前これからどうすんだ?」
「どうって?」
「また決起抑止の旅か?」
気づかれてたか
「さあね、あんたには関係ないでしょ」
「まあな」
少しの沈黙、
「あんた、オタルとダンジョン潜るって言ってたけど、無理そうね」
「あ、んなことねーよ」
「あの歓迎振り様、ここで仕事するんじゃない?」
「いいや、今だけだよ」
「わかった風な口ね」
「オタルが旅に出た理由がわかるか?」
「まあね」
「風評被害、どんなにあいつらがオタルを擁護しても、自分から離れるよアイツは、迷惑かけたくないって」
否定できなかった。
「あいつがどんなにいい奴でも、オークなんだよな」
「・・・・いつか」
「いつだ?ホルムとエルフ、ドワーフ?サブス?は何年かかった?
魔族とあと何年かかるよ?
・・・・オークを魔族と認めるか?
勇王の姪の力ならどうにかなるか?」
「あんたそれ、一応国家機密なんだけどね」
「あ、しまった、俺のお茶目さん」
「気持ち悪い」
「知り合いにな、向こうの世界の情報と交換で色々この世界のこと教えてもらってな、教えてもらった」
「アーノルドゲインズ?」
「んだよ知ってんのかよ」
「先生とビンゼルが会ったって、あんたの情報を流してくれたって」
「あいつまじかよ、軽すぎだろ」
「オタルの情報をどうするつもり?」
「どうも、残すだけ」
「何の目的で?」
「あいつは物語が消えていくのが嫌いなんだよ、オタルみたいな奴なら尚更だ。
まあそれを情報の種として使う時もあるだけ、お前みたいなのは面白そうって相当調べてるだろうな」
「そ」
「一応言っとくが、別に俺がブックマンじゃなくてもオタルについていくし、お前のことは大飯食らいとしか描いてない」
「はいはい」
「てかあいつのことだからもう知ってるだろうけどな」
「バレていいの?あんた、殺されない?」
「何笑ってんだよ・・・・.別に、そん時はこの手帳がただの紙になるだけだよ」
そうやってフルドは手帳を取り出す。
実物は初めて見た。ブックマンの手帳、
あれに書いた文字はなんらかの形でアーノルドゲインズの情報として蓄積される・・・と聞いている。
転移魔法の究極に近い術式だ。
「こっちから情報が送れても、向こうからは一切来れないんだよ、だから俺から情報引き出そうとしても無駄だぞ」
「別に期待してない」
「あっそ」
「・・・・・あんた、学園いく気ある?」
「はあ?別に今更憧れなんて・・・・ありますけどー」
「あんたはオタルとダンジョン潜ろうとしてるけど、私、彼を学園に入れてやりたいのねー」
「はあ?なんで?」
「彼まだ世間知らずじゃない」
「親かよ」
「ゲラルドハッシュドア、彼は元は歴史学者だったらしいの、オタルって昔の話の本好きだったじゃない?頭悪いわけじゃないし、別に戦うことなんてしなくても、学者とか道だってあるのかなって」
「んな夢見物語なこと」
「彼に興味をもった学者も多いの、多分色々条件飲んでくれると思う。騎士、軍士官、学者、魔導は無理か、でもあそこならオタル好きな道を選べるでしょ?」
「だから親か」
「うっさい、だからあんたにも聞いてんでしょ、
オタルが本当に魔族になるためには学園ってかなりの近道だと思わない?」
「お前、意外とお節介野郎だよな」
「野郎じゃねーよ、やば、移った」
「くふふふふは」
「私が保護者になってあげる。
あんたも一緒ならオタルも安心するでしょ、
ワーカーズの仲間にも学園に行ってる子いるらしいし」
「え?まてよ?もしかして俺の学費も払ってくれんのか!?」
「貸しね」
「んだよー」
「食堂開いたら一生タダ飯で許しあげる」
私の言葉にフルドはキョトンと私をみる。
「・・・・っ、ばはははは!!!」
いきなり笑い出すフルド、
イラッとして舌打ちをする。
「お前そんなの借金返した方がまだ現実味あるわ」
「で、どうする?」
「乗った、いいね、物語もそっちの方がおもろそうだわ」
「なんの話してるの?」
オタルが一息ついて私達の元へと食事を持って来てくれた。
「あ。これフレイヤ好きかなって思って」
「ありがと、いただく」
「なんか珍しいからきになって」
「珍しい?」
「二人が楽しそうなの」
そんな別に仲が悪いわけじゃない、童貞ぽくて気持ち悪いだけ、
楽しそうだった?
「いやフレイヤがおもろいこと言うからよ」
フルドがいらないこと言う。
「なんて言ったの?」
「聞かなくていい」
「えー教えてよ」
「まって、あんたちょっと酔ってるwww」
「あはは、そうかな?」
ーーーーーーーーーーーー
フレイヤの提案は驚いた。
よっぽどオタルに情が湧いたらしい。
まあ、気持ちはわかる。
こいつにはホルムだろうが魔族だろうが皆と仲良く幸せになってほしい。
酔ったオタルと、酔ったオタルが何故かツボにハマったフレイヤが笑っている。
懐かしい、
懐かしい??
なんで懐かしいんだ?
え、
ああ、、、、
古い記憶がよみがえる。
そうか、そうだったのか、
マジかよ、、、、、
なんで今頃気づかなかったのか
まあそうだよな、見た目が違いすぎるんだもん
心地良かったのはこれだったのか、、
ああ、そういうことかよ、
視界がふやけていく
涙が溢れていくのを我慢できなかった。
「ふ、フルド!?」
「え、ちょ!wwww!まって!?何泣いてんのあんたww」
俺の涙に気づいたオタルが驚く
ツボにハマっているフレイヤがさらに笑う
「もう旅が終わったから寂しくなったの!?
あんたそんなっwwwww腹いったい」
完全にツボにハマってやがる。
こいつも酔ってんな
涙を拭く、
「うるせぇ!!夢のキャンバスライフに感動してんだよぼけぇ!!!」
この世界に生まれたわけを思い出した。
レオン 獅子型の獣人族 黄色と茶
オタルの武術の師、育ての親の一人
ティアラ 豹の獣人族 黄色と黒の縞模様
リカード 薄い緑のリザードマン
オタル親友、兄弟に近い
頭がいい
ファン 狼のサブス人(亜人)
イケメン オタルをとても尊敬している。




