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鉄腕オーク   作者: 利
オークと魔女と異世界人
35/71

王都へ

あれから丸一日が経った。


先生はどうにか二日酔いから回復してた。

私はオタルに関する話を先生に相談していた。


「え、そんなに循環させちゃったの?」


「うん」


「その程度で済んだの?」


「うん」


「オタル君帰ってきてら見ては見るけど・・・・」


「たまたまにしてはと思って」


「そうねー、、カオスの殲滅兵オーク」


「御伽噺でしょ?」


「私は信じてるけどね」


古代、最初の魔王とされたケイオス。

私の血にはそれが受け継がれてる。


そしてそのケイオスが生み出した殲滅兵オーク。

今のオークの先祖と言われている。

御伽噺に近い話。

確かめる術はない。


「だって、あんたの魔力循環して生きてるなんて、それぐらいしか考えつかないじゃない?

オークにはカオス因子の耐性がある。

しかも、深層に適応した彼よ?あんたのに適応しても不思議な話じゃないと思うけど」


「他のオークでも試してみるなんて言わないでよ」


「えーどうして?あんたほど濃い因子持ってる人なんて居ると思う?」


「そういう実験は絶対嫌」


「えー残念」


「それはオタル君が帰ってきてからとして、どうなの?貴方の身体の方は」


身体の方、、私の体質の話だ。


「どうなんだろう、気を付けてはいたけど、、、わかんない、オタルやフルドは全然大丈夫みたいだし」


そうだ初めて会った時も、出来るだけ抑えていたし。ハフの村でも意識していたし、出来るだけ人を遠ざけていた。


フルドは加護があるからどうでもいいが、オタルに関しては何も出ていない、もしかすると私の体質が


「治ってるんじゃないかと思う」


「逆強くなってる、まあ抑えるのは上手くなってるけど、頑張ったわね」


「先生の魔具もあったし」


「オタルくんはほら、成長期は深層で生き延びたのよ?あんたが吸ったそばから回復してたんじゃない?あんたの吸収量より多いの上なのかも」


強くなってる、、、先生が言うのならそうなのだろう。

ショックだった。


「でもよかった。あんた意外と寂しがり屋だから、」


「私が?」


「自覚ない?」


「あるわけない」


「そお??まあでも、よかったじゃない、無尽蔵のオタルくんと加護のフルドくん、貴方にはぴったりのパーティじゃない」


「何言って」


「心配してたのよ?それのせいでどんどん人寄せ付けなくなってたから」


「そんな事、一応気を付けていれば止められるし」


「ハフの村では大丈夫だったの?倒れてたんでしょ?」


「どうにかその時まではもってたけど、もうダメみたい、いつ出来る?」


先生が、作ってくれた魔具、私の当たりの魔力を吸収してしまう体質を抑える効果がある。

ハフの村の一件で寿命を迎えてしまった。


「とりあえず予備ならあるけど、作るのはここじゃ無理、いったん勇都に帰らないと、、いいんじゃない、これを機に戻ったら?

オークの件はもう動いてるし、あらかた周り終わったんでしょ?」


「まあね・・・・」


先生の提案に私は少し迷った。

勇都に戻る、、


「・・・・少し考えるわ」


「そ、まあゆっくり考えなさい」


ーーーーーーーーーー


夕日が落ちる頃、オタル、フルド、ビンゼルが帰ってきた。


「おかえりー」


先生が迎える。

よくみると三人は土や砂で汚れている。


「なんでそんなに汚れてんの?」


「いやー、遊んでた」


私の言葉にフルドがそう返答する。

するとビンゼルが追って話し出す。


「すみません、少し稽古を」


「ビンゼルまで、まあいいけど、オタル、ちょっとこっちきて」


そうしてオタルを呼び、回復の後遺症を先生に見てもらう。

オタルの手を触りながら検診する先生。

少しの沈黙の後口を開ける。


「ほんと、こんだけで済んでぇ、、奇跡的よホントに」


「治る?」


先生の言葉に私はそう聞いた。


「治るねぇ、戦闘はある程度なら出来るだろうけど、オタル君どお?」


「やっぱり練るのが難しいですけど、大丈夫だと、思います、毒で死ぬところだったんです。ちょっと難しいだけですし、僕はこのままでも満足です」


オタルはそう言った。

そう、魔力の練りが難しくなったとしても、それでもオタルの強さは上位、匹敵する猛者なんてそうそういない。

しかしだ。


「治るんならそれに越した事ないでしょ?」


私の言葉を聞いて、先生が私を見てニヤリと笑う


「そうねまずは掃除ね、できれば毎日」


「悪化しない?」


「大丈夫大丈夫、あんたの色に耐性あるみたいだし、ダンジョンで暮らしてたから回路も太いし、どうにかなんじゃない?」


「そんな簡単なら最初からしてる」


「とりあえずやってみたらいいじゃん、ダメだったらダメだった時」


この人は、、、、普通なら命に関わることを軽々と言う。本当に賢者と呼ばれていたのか疑わしい。しかしやはり、それぐらいしか方法はないのか、、


「はあ」


「大丈夫だよフレイヤ、その僕はこのままでも十分だよ、本当に命を助けてもらって感謝してるし、これ以上してもらうなんて悪いよ」


オタルは気遣って私にそう言った。


あんたはそんなに私に気を使わなくてもいいのに、私が向いてないから回復術の修練を怠ったの1番の原因なんだから、

私に出会う前まで戻してあげたい。

それが一番スッキリする。


「・・・・・・・そうね、命が助かったんだし、今でも強いし少しくらい悪化しても問題ないか」


「え?」


「練習にはピッタリかもね」


「え?」


長い時間一緒にいたせいな、オタルの表情がすぐにわかる。私の冗談に困ったオタルを見て私は少し笑った。


ーーーーーーー


「え?勇都?」


身体を洗い終えた、フルドが私の提案を聞き直した。


「別にあんたは来なくていいんだけど」


「オタルは行くのか?」


「うん」


「なんでい?」


フルドはそう聞く。そうするとオタルが代わりに答えてくれた。


「フレイヤに治療してもらうから一緒にって」


「そか、じゃあいくわ」


こいつはなんでこうもオタルについてこようとするのか、、、、


「はあ、旅費は自分で払ってね」


「んだよケチ、ん?なんだ?、クリフォードの調査はいいのか?」


「本格的に国の調査隊が向かった。後は国が動くから」


「ああ、そゆこと、」


国の調査員、二人にはそう説明している。

嘘ではないが、いや私の変化した姿を見たフルドは気づいているかもしれない。


ーーーーーエルダとビンゼルの会話ーーーー


フレイヤ達を見送りエルダとビンゼルは宿のソファに腰をおろしていた。


「フレイヤがパーティを続けるなんてねぇ」


「吉か凶かわからんがな」


「ふふ、あ、フルド君に手解きしたんでしょ?珍しいのね」


「んあ?ああ、まあな」


「あんだけシラド君以外は弟子を取らない言ってたのに、シラド君妬いちゃうかもよ」


「馬鹿言え、フレイヤ様と共するからな、技を一つ二つ教えた程度だ」


「どお?」


「どおとは?」


「フルド君、加護はすごいけど、大したことないでしょ?二人の足引っ張るんじゃない」


「まあな、」


「でしょ?」


「魔力は下かもしれんが、鍛錬は積んだように見える。五感がいい、自分の力量を理解している。なによりあのフレイヤ様が認めている。問題ないだろう」


「あんたがそう言うならいいけど」


ーーーーーーーーーーー


ガシャガシャと引かれる馬車の中で私は目が覚めた。

いや寝ていたわけではない、虚無からふと覚醒した。足首に嵌められ枷が皮膚を傷つけ、忘れていた痛みが蘇った。

私は売られたのだ。

母は早くに亡くなり、父の賭博の借金で私は売られることになった。これからどこかの娼婦で死ぬまで体を売ることになるのだろうか。

すでに何度も汚された。

恐怖と不安、悲しみ、怒り、憎悪を感じながらも心は諦め、何もする気も起きなかった。

逃げることさえ、生きることさえ、自死することさえも、


ガコォンと衝撃音と共に乗っている馬車が回転する。

宙に浮いた感覚と共に床になった壁に叩き連れられた。

痛みに苦悶していると、外から男達の声が聞こえる。一緒にグォォォオオという魔物の声。


魔物に襲われたのか。


中にいた用心棒の男は警戒しながら外にでいった。


天井になった壁を見つめながら


「殺しちゃえ」


とつぶやいた。

私のはじめてを奪ったあの男達を殺してくれと願った。

その願いはあっさりと叶ったようだ。

男達の声がなくなる。

しばらくして

代わりに魔物の興奮した大きい息遣いか聞こえる。ゆさゆさと馬車が揺らされる。

ミシミシと馬車が潰れていく音がする。

途端に恐怖が押し寄せきた。


生きたい


生きたい


生きたい


脚に付けられた枷を必死に引っ張る足から血が滲んでいく。開くはずもないのに指でこじ開けようとして爪が割れる。


ガン!!!!!


大きな音がするとガチャガチャと暴れる音がしてすぐにシンと静かになった。


「フルド、中に人がいるかも」


「生きてんの?」


「多分・・・・」


男の声と足跡がきこえる。

馬車の扉を開く


「あん?硬って!オタル開いて」


「あ、うん」


がこんと力強く扉がこじ開けられる。

火が差し込む、そして最初にひとりの青年の姿が見えた。

もう1人の男は胸から下しか見えない。

赤い肌がみえる。オーガ族だろうか。


青年と目が合う。


「ああ、」


青年は困ったような顔をした。


「フルド、僕はあっち行ってるね」


「あ、なんで、、ああ、もう怖がられるくらいきにすんなよ」


「でも・・・」


「わかったよ、フレイヤ呼んできてくれ」


「うん」


そう言って赤い肌の男は消えた。


「大丈夫か?」


青年は中腰で横転した馬車に入ってくる。

助けてくれた人、しかし男である彼を警戒し恐怖してしまった。

無意識に体がびくりと震えて強張る。


「何もしねぇよ」


私の足枷に目をやる。


「・・・・・・ちょっとまってろ」


そう言って外に出ていく。

馬車の周りでゴソゴソと何かをしている。

したいを弄っているのかもしれない。

そして再び馬車の中へと戻ってくる。


手には鍵があった。

数本ある鍵を足枷にさしていく。

3本目でガチャリと足枷が外れた。


「立てるか?」


私に手を差し出す。

しかし私はまたしても彼を拒否をしてしまった。

本能敵に逃げようとして脚で彼を蹴ってしまった。


「いって」


馬車の奥へと逃げてしまう。

彼が助けようとしてるのはわかっても、身体や本能が彼を恐怖して拒否しているようだった。

バクバクと心臓がうるさい、

空気が薄い、

魔物に襲われた時の恐怖が未だに続いてるようだった。


そんな恐怖の中、私の目に映ったのは

青年が困った顔で馬車から出ていく姿だった。


ーーーーーーーー

しばらくして


「何?」


女性の声が聞こえた。


「中の奴、男がダメみたいだ、中見りゃわかるよ」


そして、彼の仲間と思われる黒髪のとても綺麗な女性が私の元へと馬車の中に入ってきた。


「大丈夫?」


「・・・・・・・はい」


少しは落ち着いたのか私は答えた。


「私フレイヤ、安心して、とりあえず馬車から出よ」


「私、これからどうなるんですか?」


「どうも、お腹減ってる?その前に怪我の手当てね。とりあえず出ましょ」


私は安心と不安の入り混じる中、彼女の手を取った。取るしかなかった。


その後はあまり覚えていない。いつの間には私は意識を失い。目が覚めたのは夜だった。


ーーーー

視界には夜空が広がっていた。

横から火の暖かさを感じる。


話し声が聞こえる。

最初に見つけたのは先程の女性の横の姿だった。


「儲けてんのな、見ろよこれ、絶対いい奴だよ」


「あんたも野党と一緒ね」


「あのままにしても誰かが取ってくだけだろが、金のあるフレイヤ様とちがってこっちは金がいるの」


「あっそ」


「おい、目覚ましてっぞ」


青年のフレイヤという女性が私に見る。


「大丈夫?食欲はある?」


「・・・・・・はい」


ゆっくりと起き上がる。背中や頭に痛みが走る。


「無理して動かないで、頭パックリ切れてたから足も捻挫してるみたい、はい、スープ」


女性は優しい私にスープを渡す。

周りを見渡す。

先程の青年がおそらくあの奴隷商の物だと思われる武器や金目のものの血を拭き取っていた。

私に目を合わせない。

そして隣に大男がなぜか、私に対して背中を向けて座っていた。

女性が大男に声をかける。


「オタル、いつかみられるんだから、ごめんね、彼オークなんだけど、本当に何もしないから怖がらなくて大丈夫だから」


オーク?一瞬理解できなかった。

そして、そのオークがオドオドを体を焚き火に向ける。

息が止まった。


「あ、あの、オタルです、よろしくお願いします」


「ぶふ」


オドオドしたオークの挨拶に隣の青年が声を漏らして笑った。


「なんで笑うのフルド」


「いやお見合いかよって」


そしてフレイヤさんが私の背中に手を当てる。


「大丈夫ほんと無害な奴らだから」


「・・・・・・はい」


とりあえず私はいい匂いのスープを頂くことにした。

暖かいスープは今まで口にした中で一番美味しく感じた。


途端に涙が溢れ出す。

グス、グスと泣いている中、フレイヤさんがずっと肩をさすってくれた。


ーーーーーーーーー


私はこの三人とともに旅をすることにした。

勇都にいるオタルさんの知り合いが、私を雇ってもらえるかもしれないということだ。

不思議なオークだった。

そして、私はそれに縋ることにした。


私は未だに男性に恐怖を感じるようだった。

フルドさんオタルさんにに対してもだ。


それをわかってかフルドさんは私には最低限のことしか話しかけてこなかった。

一定の距離を保ってくれていた。

私はそれが嬉しいながらも申し訳なく感じた。


奴隷商の馬車を襲ったあの魔物、熊型の魔物を倒したのフルドさんとオタルさんらしい。

オタルさんがフルドさんを投げて?あのガンっという音はフルドさんと魔物がぶつかった音だった。


オタルさんはとても気さくで温和な方だった。

彼の作る料理も絶品だ。

教えてもらううちにオタルさんには普通に話せるようになった。


フレイヤさんはお姉さんのような人だった。

兄弟姉妹はいたことはないが、もし、姉ならばフレイヤさんみたいな人がいいなと思った。

とても大食いで、なのにとても綺麗な体型で、すらっとして美人で強くて、憧れて、何も持ってない自分が悔しかった。

妬みという気持ちも感じていたと思う。


フルドさんは、よくわからない、

あまり話さないから、私のためだと思う。

オタルさんとフレイヤさんと話す時は感情豊かに笑っていたから。


ーーーーーーーーーー


ある日とある小さな町に宿を取ることにした。

パルミアと勇都の途中にあるということで小さいながらも賑わっている。


オタルさんは町に入る前に首輪をする。

形上はフレイヤ様の使役ということになっているらしい。


オタルさんを入れてくれる宿探しには手間取ったが、いままでの私なら一生泊まれないような綺麗な宿に泊まることができた。

お金はフレイヤさんが出してくれた。

本当に申し訳なかった。


その夜私はフルドさんとオタルさんのの寝室に訪れた。


「・・・・ごめんなさい、ずっとお礼が言えなくて」


「あ、、そうだっけ?」


フルドさんと目が合うとっさに視線を逸らしてしまった。何と言えばいいのかわからなくなった。


フルドさんは私に背中を向けた。


「これで少しはマシか?」


「・・・・・・」


言葉が出ない私に彼が口を開けた。


「気にすんな、男が怖いんだろ??

あんなことあったなら当然だろ、大丈夫」


隣にいたオタルさんが静かに頷いてくれた。


「・・・まてよ、てかなんで、俺はダメでオタル大丈夫なんだ!見た目確実にこいつの方が怖いだろ!」


「そんなこと言われても」


「え、俺そんなに人相わるいですか!?ねえ!」


「あれじゃないかな、フルドかなり無愛想に見えてたよ」


「あれは、怖がらせないように!」


「怖がらせないのと無愛想で関わろうとしないのは違うと思うけど・・・・・」


「・・・・・・・お前俺よりコミュ力高いよな」


そんな2人の会話を聞いて、

くすりっと笑ってしまった。


そんな私をフルドさんは少し見て安心したように笑った気がした。


ーーーーーーーー


「見て!タイラさん、働いてもいいって、住むところも手配してくるみたい」


勇都の手前の町についころ、ゲラルドワーカーズから手紙が届いていた。

私の就職が決まった。


私は聞きたかったことを聞いてみた。


「勇都に着いたら皆さんはどうするんですか?」


「私はのんびり食べ歩き」


「楽しそうですね、私働いてお金入ったら絶対ご馳走しますから!」


「私に奢るの?破産したいの?」


「あはは、本当にしそうだから困ります。お二人は?」


「勇都だろ?オタルとダンジョンでも潜ろうかと思う」


この頃になると私はフルドさんと話す分には問題なく話せるようになった。


「一応だけどオタルって勇都だと国民権あんだよ、2人で適当に潜って売って、金貯めて、食堂でも開くかって話してる、まだ決まってもないけどな」


「もし開店したら雇ってくれますか?」


「開店したらな」


そして短く感じた旅は終わり、私たちは勇都へと到着した。


タイラ・ペン

猫のサブス人

赤茶の髪


好きな食べ物、土いも(じゃがいも)

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