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鉄腕オーク   作者: 利
オークと魔女と異世界人
32/70

リカードの記憶

奴隷区、後のダンジョン


俺たちのいる奴隷区はかなり良かったと思う。


魔物は多かったがちゃんと働けばその分食物には困らなかった。

他の場所の話を聞くと、殺しや強奪、強姦はざらにあったらしい。


俺はまだ魔王が倒される前の世界を知らない。

奴隷の子として生まれ物心がついた時には親はいなかった。


勇王を恨んでいる大人もいたが、認めてる奴も同じくらいいた。

俺たちは国の所有物だった。

だからだと思う。ホルムやサブスに理不尽に殺されたりなんてことはなかった、兵士長のお陰か兵士達も俺たちに何かしら嫌がらせをするなんてこともほとんどなかった。


奴隷としてウランダから勇国に買われ、国の奴隷としてあの奴隷区でゲラルドさん、レオンさん、仲間たち、そしてオタルに出会った。


ゲラルドさんやレオンさんに育てられていたオタルは驚くほど温厚な性格をしていた。

個体差か環境か、理由はわからないが、レオンさん曰くゲラルドさんの教育が大きいと言っていた。

しかし俺は最初は警戒していた。

オークの凶暴さは知っている。

前の奴隷区でも、オークが暴れてが何人も死人が出ていた。

同年代の仲間たちと一緒にオタルに魔物だと軽蔑し、嘲笑い遠ざけていた。

オタルは友達が欲しかったんだと思う。とても悲しそうな目をしていたことを今でも覚えている。

本当に馬鹿なことをしたと思っている。

オタルを親友となったのはそれから1年が過ぎた頃だった。


俺たちのいる奴隷区にも数十頭のオークがいた。

ある程度言葉はわかるし、力は強い、運搬などの力仕事はかなりの役に立っていた。

しかしながら知能はありながらも本能が強く、自制が効かない、案の定食い物を巡ってオーク同士で争いはじめた、興奮状態になれば手がつけられず、2頭から3頭、4頭と数頭が暴れはじめた。


小さかった俺はそのうちの一頭に見つかり襲われかけた。

閉じた目を開けるとオタルがツルハシでオークに攻撃を仕掛けていた。


「逃げて」


とオタルはオークに立ち向かいながら叫んだ。

しかし俺程の背丈しかなかったオタルが大人のオークに勝てるはずもない、すぐに投げ飛ばされ壁面に叩きつけられた。

それでも痛みを堪えて泣きながらもオタルは立ち上がり、俺の盾となるように勇敢に大人オークに立ち向かった。


遅れてきたレオンさんや腕の立つ魔族たちがオークを無力化することができた。

結果的に数人の仲間たちが巻き込まれて死んだ。

強姦された女もいた。


生き残ったオーク達は危険と判断され殺処分されたと聞いた。

オタルもその中に入る一歩手前だったが、

ゲラルトさんや、レオンさんが責任を取ると言う形でどうにか当時の若い兵士長はわかってくれた。今思えば、魔族に理解のある兵士長だった。

彼が俺たちの地区の担当で本当に良かったと思う。


オタルが居なければ俺はもう死んでいただろう。

しかしながら

大怪我をしたオタルだが、レオンさんの妻、ティアラさんの治療され、後も徐々に回復、すぐに仕事にも戻ることができた。


そして俺はオタルに意味での謝罪と助けてくれた礼を言って友達になったのだ。


あいつはほんとにいい奴だった。

オークだと言うことを忘れるほどに。


その頃からだった。オタルがレオンさんから武術を習い始め、危険だった洞窟の奥に入るようになったのは。


それから数年オタルは強くなった。

性格も変わらず、身寄りのない子供達の為に洞窟に深く潜っては高価な鉱石や素材を持ってきては、それと交換した食材をろくに食えない奴隷達に配っていた。

俺たちは奴隷だ。一日働いてようやく1日分の食料と交換できる。普通なら餓死者だって珍しくない。

しかし俺たちの区には餓死者は出なかった。

オタルのおかげだ。

数年掘れば目的の鉱石は出なくなる。

洞窟の奥に入るしかない。しかし奥に行けば行くほど魔素は濃くなり魔物の危険性もます。

奴隷の中にもレオンさんと言った戦闘が出来る者が居なければろくに採掘もできない。

当たりが出なければその日もろくに食えない。

そんな中オタル、奥へ奥へ潜っていき帰ってきては大量の素材を持って帰ってきては、食料に換金しては食えない者に配るを繰り返していた。

何十人分の働きをあいつはしてくれたのだ。


オタルは休まずに何度も繰り返した。その身に傷の数を増やしていきながら。


ある日、怪我も治らないうちにまた潜ろうとするオタルと、それを止めようとする俺は言った。


「みんな感謝してる、傷が治ってからでもいいだろ!お前だけ危険なことしなくてもいいって!」


「大丈夫だよ。僕オークだから」


「関係ねーだろ!」


「あるよ、皆んなの役に立たなきゃ、僕魔物だし、そうしないと・・・・」


オタルその言葉の続きは言わなかった。

そして再びオタルは深層に潜っていった。


未だに鮮明に覚えている。


そうしなければ自分には価値はない、そう言っているように聞こえた。





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