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鉄腕オーク   作者: 利
オークと魔女と異世界人
23/70

遭難

雪崩によって積もった雪の一部がモゾモゾと動く。


ガバッとフルドが雪の中から起き上がった。

「くっそ!!リムル!!リムル」


共に雪崩に巻き込まれたリムルを呼ぶ!

あたりを見回わす。見上げると高く遠くに落ちてきた崖が見えた。かなりの高度から落ちてきたとフルドは理解した。

リムルを呼びながら辺りを探す。雪に深く埋れながら、時折バランスを崩しながら必死に探す。


フルドの声を最初に聞いたのはあの弓のアマゾネスだった。


カタリア・ンド


元狩人の彼女は静かに目を覚ました。

自分覆いかぶさる男リムル、毒で動けなくなった自分を必死に運ぼうとした男だ。


自分を見捨てれば雪崩に巻き込まれて、こうやって雪の中に埋もれなくても済んだかもしれない。


「こ・・・ここだ!!!」


毒と雪で身動きが出来ない、大声も出せないほど毒が身体を麻痺させている。しかしながらアマゾネスの耐毒性と普段から毒を扱い抗体のある彼女は動くことはできないまでも、早くも意識を覚醒し感覚だけは取り戻し始めていた。

リムルは意識を取り戻していない。

顔から頭に生暖かい水が流れるのを感じた。


(・・・・・血)


リムルの血だ、彼は出血している。息はあるが

こんな雪に埋もれた状態ではすぐに凍死するだろう。

彼女は出しうる限りの声で叫んだ。


「ここだ!!」


そしてその声はフルドに届いた。

フルドは急いで微かに聞こえた声の方向へと走る。


「おい!声出せ!!」


「ここだ!」


「リムルは!男は!?」


「一緒にいる!」


急いで声の方向と掘り始める。

時折氷のように硬い雪のブロックを退かしながら掘り進める。

その間、風が強くなり雪も降り始める。再び山は荒れようとしていた。


30分程、経った頃雪をかいたときリムルの防寒着が姿を見せた。さらに急いで掘り返えす。

そしてついにリムルを引き上げた。

額がパックリと割れ失血している。

そしてリムルの下にリムルの血で真っ赤になったカタリアを、見つけた。


ーーーーーーーー


再び吹雪が襲った。

フルドとリムル、カタリアはどうにか崖の窪みを見つけて非難していた。


雪を積み上げて風除けを作り、雪崩と共に落ちていた木材を拾い、運良くリムルが持っていた火種道具で火を焚いた。

ほとんどの道具ば雪崩に埋もれ紛失。

フルドは剣と手帳程度しか手持ちがなかった。

アマゾネスからはナイフと保存食程度

戦闘の際、バックパックを置いていた為、道具も食料も殆どない。


そんな中、体温の下がっているリムルを早急に温めねばならなかった。


「薪拾ってくる」


そう一言だけ残しフルドは何度も吹雪の中に消えては薪を拾い戻ってきた。


カタリアは無言で見送った。

腕や足は未だ痺れて動けない彼女はリムルの隣に寝かせられていた。


「リムルを温めろ」


フルドはそう言って彼女の防寒着を剥ぎ、フルド自身の防寒着と共にリムルと密着させて二人を包んだ。


(異常だ)


と、カタリアは驚きを隠せなかった。

フルドは薄着のまま吹雪の中に薪を拾いに行っては真っ白になって戻ってくる。

普通は凍死している。

身震いもしているし、鳥肌は立っている、時折手を吐息で温めているり寒さは感じているようだが・・・・


しかしフルドは平然と戻ってきた。


あの矢を弾いたときもそうだ。

今見ればわかる。薄着の彼の胸の服はやの衝撃で敗れ、ほんの少しの切り傷が見えた。


あの矢を受けてのあの程度の傷。

こいつの防寒着にもそれらしい強度はない。

フルドの肉体が強靭なのだ。


(・・・・世界にはあんなヒュムもいるのか)


ーーーーーーーー


十分な程の薪が集まり火の勢いも強まり、カタリアのおかげか、火のおかげか、リムルは徐々に体温が戻っていった。


「んで、あんたクリフォードの追手か?」


「・・・・・・・」


「ミルやコランからは話聞いてるよ」


「こちらの事情だ」


「はいはい」


「・・・・お前はなんだ、あの赤いオークも」


「さあな」


「・・・・・」


カタリアはフルドを睨む


「んだよ知りたいか?」


「別に」


「リムルに感謝しとくんだな」


「頼んだわけじゃない、置いてけと私は言った」


「まあ、確かにな」


「そっちはいいのか、毒が消えれば・・・・何かは知らないがお前がいくら丈夫でも、その程度の腕ならいくらでもやりようがある」


「それ言う??その程度にやられたくせに、

言っとくけどリムルなんて戦闘経験ゼロなんだぞ」


「・・・・だろうな、人なんて殺したことないような面だ」


ーーーーーーー


パチパチと焚き火と吹雪の音が響く。

リムルは静かに目を覚ました。


「お、気がついたか」


「・・・・フルドさん」


「起きるな、そのままで、痛いところはないか?」


「・・・・頭が痛いです」


「他は?」


「節々が少し・・・大丈夫です」


「そか、今雪とかしてるから待ってろ」


「あの、、、フルドさん・・・・これ」


若い女が隣で寝ていることに狼狽るリムル。

村に同じくらいの歳の女がいないリムルにとってはかなり刺激的なことだろう。とフルドは狼狽る元気のあるリムルを見て安堵する。


「あー、身体が冷えてたんでこいつで温めさせた・・・・なんだ、暑そうだな」


アマゾネスのカタリナ、額を汗で湿らせ、息遣いが微かに荒い


「多分毒の副作用です、俺も下手をして毒が入ったことがあります」


「どうなんだ?」


「しばらくは熱がでます。全身痺れたように痛いし、かなりきついです」


「・・・・まあ冷えたお前にはいい湯たんぽになるだろ」


「フルドさん・・・それは・・・」


「しつこく言っとくが、こいつは俺らを殺そうとしたんだぞ、殺されてないだけマシなんだからな」


「それは・・・」


「とにかく寝ろ、血無くなってんだからな」


「は、はい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


トクン・・・・トクンと


雪の深い中に黒い帯で作られた繭が静かにそこにあった。

繭の中には毒で昏睡状態のオタル、その隣で姿を変えたフレイヤの姿があった。

黒紫の模様と一部の箇所は硬質化したように形を変えている。目は獣のような目に変化している。

座ったまま、目を瞑り、オタルの体に手を当てながらフレイヤ、魔力を常に消費しながらオタルの不得意な治療、解毒に専念していた。


フレイヤは嵐の中を出るよりもこのままオタルの治療に専念することを選んだ。


ーーーーーーーー


吹雪が続き夜になる、そして、そのまま朝が来た。

風は落ち着いたが、相変わらず雪の量は変わらない。


フルドは迷っていた。


リムルは出血により貧血気味、敵であるアマゾネスの女は毒の副作用に熱にうなされている。


連れて行くべきか、そりをつくればそれに乗せて移動できるが、また吹雪がくればリムルの身がもたない。


このまま待つか、しかし、考えたくはないが他の皆は先日の雪崩に巻き込まれて負傷、最悪は死亡している可能性もある。


「くっそ」


フルドは自分自身に怒りを感じていた。


冒険者としてこの地に来た。しかし結果は村の猟師の親子にガイドをしてもらい、そのガイドに助けられて、そしてそのガイドは雪崩に巻き込まれてしまった。


何一つ、与えられた仕事ができていないことに無力感を感じる、その無力さに怒りを感じた。


「・・・さあ俺でも見つけられるかな」


「気をつけてくださいね、雪兎の歯はかなり危険ですから」


「わかった、探してくる」


「ほんとにそんな薄着でいくんですか?

やっぱり防寒着を」


少しは動けるようになったリムル、しかし起き上がるだけでも貧血でフラフラと倒れそうになるリムルをフルドは動くなと静止する。


「いいよ、大丈夫、マジで大丈夫だから、ほらちゃんと食っとけよ」


「これはフルドさんの分です!もらえません」


「元はお前が持ってた食料だろ?大丈夫自分の飯くらいどうにかするさ」


「でも!」


「いいか自分のことだけ考えろ」


そう言ってフルドは外にでる。


小さい声で


「すまん」


と呟きながら


「き、気をつけて!!」


そんなフルドを見送りながらリムルは隣で眠るアマゾネスの額に手を当てる。


(熱が下がらない)


自分達を殺そうとしたアマゾネスのカタリナを心配しながら


「自分の事を考えろって、ならフルドさんも見捨てていけばいいのに」


と悪態をついた。


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