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鉄腕オーク   作者: 利
オークと魔女と異世界人
20/70

女とオーク


オタル、フルド、フレイヤとバッシュの4人はハフの村にもう少しの所に到着していた。

標高は上がり、岩端の山道を白い息を吐きながら進む。

所々にはちらほら雪が残っている。

オタル達の視界にはハフの村がもう見えていた。


「案外あっという間だったな」


フルドは立ち止まり呟いた。


「あんたがいなかったら、あと2日は早く着いてた」


「ごもっともですよ、ちくしょう」


フレイヤの言葉にフルドはしかめっ面で返した。


ーーーーーーーーーーーー


ハフの村に到着したフレイヤ、フルド、バッシュの三人とクリシアの一頭、しかし、そこにはオタルの姿がない。

オタルは村から見えない位置でキャンプを張っていた。



村は丸太の柵で囲まれているがかなり老朽化している。かなり昔に設置されたものだろう。

目の前に立つと見張台の兵士の合図ですぐに扉が開く。


「不用心ね、盗賊だったらどうすんのよ」


「確かにな」


兵士の対応に不満をつぶやき、フルドもそれに同意する。


「旅の方ですか?」


「冒険者よ、オークのクエスト出してたでしょ」


「はい、受けてくれたんですね、どうぞ!中に」



「ねえ、あなた兵士?」


「いえ、国の兵士はこの村におりません、自警団みたいなものです。それにしても驚きましたこのようなクエスト、もう誰も来ないかと」


「まあ、距離と額が合わないもんな」


「はい、この季節は冬を越すために出費が激しくなる為あのような額しか出せず、申し訳ありません」


フルドの言葉に対し、礼儀正しく申し訳なさそうに自警団の男は言った。


「それで?ちなみに何人やられたの?」


「いえ、襲われたり怪我をしたものはおりません。鶏が一羽、あとは村の野菜や保存食が少々大した量ではありませんが」


「え、それ、本当にオーク・・・・」


違和感を感じフルドは自警団の男に呟いた。


「はい、村の猟師の者がオークだと、家畜が襲われたりした時も何人かが目撃していますし」


フルドもフレイヤも不思議に思った。

家畜ならわかるが、その家畜も小さな鳥が一羽この事件はオークにしては少し、拍子抜けするほどしょうもない。


「えーと、その猟師と話せます?」


フルドはとりあえずその目撃者に会おうと思った。


「はい、ご案内します・・・・・」


ーーーーーーーーー


「じゃあ、捜索の間だけだけど、」


「はい、もう五人も見てるので安心して下さいな」


聞き取りはフルドに任せ、フレイヤはバッシュをオーク捜索の間、村の主婦に預けることになった。ふくよかな女性がバッシュを抱き上げる。

その主婦の子供たちがバッシュをワイワイと取り囲む。


「コラ!起きちゃうでしょ!!!外で遊んできな!」


母親の言葉を受けた子供たちはそのまま外へと遊びにでる。


子供達を目で追ったフレイヤ。

元気で良い子達に育った子供を見て、この人に預けてもなんの心配もないと安心した。


「じゃあ、バッシュのこと、よろしくおねがいね」


「はい、あのクソガキ達よりも真心込めて預かりますから、でも、気をつけてねこの時期は山は冷え込みが激しいから」


「ええ、ありがとう、じゃあまた寄るわ」


ーーーーーーーーーー


「確かにオークだな」


フレイヤと別れて、俺はハフの村にある畑に、この村の猟師と共に調査のため足を運んでいた。


そこで見せてもらった足跡はよく知るオークのものだった。しかし草鞋みたいのな履物を履いている。、なぜオークかわかったかと言うと、土の沈み具合、こんな体重でこの大きさの二足方向の足跡、そして物を盗むなんてのはオークぐらいしか考えられない。


「やはりか、俺も一時期戦争に出ててな、間違いはないと思ってたが、自信がなくてな、冒険者さんがそう言うなら間違いないな」


この村の亜人の猟師、3・40代後半くらいのもさもさしたヒゲを生やした、いかにもな猟師だ。


「よく残ってたな足跡」


「貴重な痕跡だからな、村の人にも入らないように言ってあった」


「流石は猟師さん、じつは俺も猟師に育てられたんすよ」


「なんだそうか、なら山も心強い」


「・・・・えーと、バンズさんも捜索に?」


「この山は天候も荒れやすい、言っちゃ悪いが、魔物退治ならあんたらの方が上でも、この山に関しては・・・・」


「確かに、じゃあすんませんけど案内頼みます」


困ったことになった。

猟師バンズさんも一緒についてくるとは、オタルは待機させるか、フレイヤだけでもオーク一体なら討伐ぐらい楽勝だろう。


流石に地元の人無しでは、この山の捜索が困難なのは俺でも理解できた。


「ちょうど明日、最後の猟にでる。そこで探そう、あんた達がいるなら心強い」


「期待はしないでくださいよー、で、この足跡ちょっとおかしいというか、」


「やはりか、俺もそう思ってた」


俺とバンズさんは眉間にしわを寄せた。


ーーーーー


俺は一旦、周りを見てくると嘘をつき村から少し離れた場所にいるオタルの元へと戻っていた。

焚き火を起こしテントを張り、料理まで作っていたオタル、


流石、旅慣れしてるぜ。


「どうだった?」


「オークの痕跡は一体だけだった」


「・・・.うん、下っ端のオークを使って、食料を取って来させるのは良くあることだから、もしかしたら数頭いるかも」


「その下っ端が捕まえた女と同伴ってのはあり得るか?」


「え?・・・・・ないと・・・思う」


「オークに関しては草鞋みたいなのを履いてた。お前は履いてるけど、他のオークは履くのか?」


「履いてないと思う、でもここは雪があるからもしかすると履いててもおかしくはないと思うけど、ちょっと変かも」


畑にあったオークの足跡と共ににあった女性の足跡。不可解だった。


「盗まれた野菜の量がよ、明らかに女が一人で持てる量じゃねーんだ」


「でも、その女は走ってるんだよ、結構軽々とよ、明らかに盗んだ野菜はオークが持ってた。」


「それって」


「もしかしたら、女は捕まえたんじゃなくて、自分の意思でオークと一緒にいる」


「そんなことないよ」


俺の言葉にオタルは即答で否定した。


「オークが、そんな」


オタルの顔が怖くなり、握りこぶしを作る。

オークの話をするとオタルはこんな顔になる。


「お前オークそんなに憎いの?」


「うん」


「優しいオークかもしんねえぞ」


「それはないよ、オークなんていちゃ行けない」


「お前もオークだろ?」


「・・・・・・・」


俺の言葉にオタルはハッとして黙った。

コイツにとってはオークは絶滅すべき種族、しかしコイツもオークだ。

コイツの優しすぎる性格はわかっている、だからこそ違和感があった。

オークに見せる執拗な殺意。

今回の被害、あの野党共がしたことに比べればなんて軽いもんだ。

明らかにそれは生きるためにやっていること。


あの野党達は殺したくなかったオタル、まあ俺は殺したが、しかしなんで、このオークは殺したい?




もしかするとオタル、お前と一緒で優しいオークかもしれないのに



俺は、コイツの優しさ、いや、価値観に何かおかしさを感じ始めていた。


「・・・・・まあ良い、行けばわかることだ、お、フレイヤも帰ってきたぜ」


フレイヤがクリシアに乗って帰ってきた。


オタルは未だに暗い顔をしている。まずいこと言ってしまったかもしれない。コイツは自分がオークであることにコンプレックスを持ってたんだった。


「オタル!聞いてっか?」


「あ、うん、ごめん、・・・あ、フレイヤさん、二人とも村で食べてくると思ってちょっとしか、す、すぐ作るから」


「いいよ、報告だけだから、とりあえず俺はまた村に戻って話してくるよ、あいつも多分そうだろ」


「う、うん、」


「あんま気にすんなよ」


「え?」


「俺も、多分フレイヤも、お前がオークとか人間だとか気にしちゃいねーよ」


「・・・・う、うん、ありがとう」


俺の精一杯のセリフだったが、

効果はなかったようだ。オタルは悲しそうな顔のままでそう言った。

その後の言葉は何も言えず、俺はその場を後にした。


こちらに向かってきたフレイヤとすれ違いうまえにお互いに足を止める。


「オタルのぶんの飯しかねーぞ」


「あんた探してたのよ、一声かけろバカ、で?どうだった?」


「明日村の猟師と探しに行く。お前とオタルは残れ」


「なんで?」


フレイヤは当然のように理由を聞いてきた。

猟師がいるからオタルは連れていけない。

フレイヤは大丈夫なのだが、雪道は馬は向いてないし、歩きになればフレイヤも苦戦するだろう。

雪山なら経験のある俺がいいだろう。

最悪事情を話してオタルを連れて行く案もあったが、

さっきの会話で、もし優しいオークだった場合でも、オタルが殺しかねないと思った。


それくらい異常だったのだ。

まるでオークを殺すことが当たり前のような、


まあ当たり前なんだが・・・・・



オタルと出会って、オークと共存出来ると俺は思っていたのだ。

しかし不幸なことに、当の本人はそれを望んでいないのだ、


「・・・・・群れだったらお前らを呼ぶよ、待機しててくれ」


「群れだったら?1頭ならあんた一人で倒せるの?負けないにしても逃げられるんじゃない?」


「・・・オタルみたいなオークかもしれねぇ」


「なんでわかんの?」


「女が一緒にいる。多分協力し合ってる」


「・・・・・・・・・」


「・・・あいつなんでそんなにオーク憎んでるか知ってるか?」


「・・・・知らない」


「あいつ、優しいオークかもって言っても殺す気だったよ、・・・普通嬉しいと思うけどな、自分と一緒なオークがいたらよ」


「・・・何?喧嘩でもしたの?」


「してねーよ・・・・・でもお前もオークだろって言っちまった」


「そ、私の知ったことじゃないけど」


思いやりのない女だなこいつは


と心の中で呟く


「あいつ一人にしたらこっそり付いてきてオークぶっ殺しそうな感じすんだよ、だからお前が抑えといてくれ」


「・・・・・・」


「もし悪いオークでも1匹ならやれるさ、オタルに比べたら雑魚だろ」


「それはオタルに一撃入れてから言って」


悪態をついてきたが、拒否はしていない、概ねわかってくれたのだろう。


「はいはい、あ、お前からオタルにお留守番って言ってくれよ、言うの忘れた」


「は?そんなの自分で」


「頼むよ」


「・・・・・・今回だけね」


「すまん」


今はオタルと顔を合わせにくい。フレイヤは伝言を頼まれてくれた。

嫌々ながら受け入れてくれたのだ。嫌な女だが、今回ばかりは有難い。


俺はハフの村へと向かった。



ーーーーーーーーー



「やっぱり、元猟師だけあって足腰が強いですね」


「おう、あざっす、でも使う筋肉違うからやっぱ疲れるわこれ」


翌日、俺と猟師二人で、早朝から出発して、中腹にある猟師小屋で休憩をしていた。


「このくらい歩ければ充分ですよ、すぐにでも復帰できるんじゃないですか?」


「ははは、そうかねー」


「フルドさんの山はどんなところだったんですか?」


「この山に比べたら積もってもここの半分くらいだ。鹿と猪が多かったな、たまに狼とか」


「ここも一緒みたいなものです」


「サイズがチゲーだろ、俺のところはもっとちっちゃい」


若い猟師、猟師のバンズさんの息子リムルだ。

年は俺のこっちの年齢よりも下だ。

しかし身長は頭一つ俺よりも高い、なかなかのイケメンだ。街に行けばそこそこモテるだろう。


バンズさんの獣耳と違って、彼のは普通のホルムの耳だ。

おそらくサブス(亜人)とホルムのハーフだろう。


冒険者に興味深々なようだ、キラキラとした目で俺に話しかけてくる。

移動中バンズさんがうるさいと怒られてならは無言だったが休憩になって、溜まっていたかのように俺に質問を始めた。


悪い気はしない。


猟師の家に泊まった時に見た獣皮から分かるが、ここの動物も魔物もやたらでかい、俺の弓じゃ仕留めれる自信がない。

一緒にいる猟師二人が持っている石弓も頭から腰までの大きさがある。装填するのに苦労しそうだ。小さい石弓も腰に着いている。ここの猟師は大小の石弓を使い分けるみたいだ。


バンズさんはこの辺りの簡単な地図を広げて、説明を始めた。


「この小屋がこの辺りだ、少し休んだら少し東向きに進む、しばらく行くと森があってな身をを隠しやすい」


「北側は?」


「魔物だって住んじゃいないような雪と氷だけの未開だ。もしそっちに行ったならもうキンキンに冷凍保存されてるだろうな」


探索ルートはすぐに決まった。

やはり現地に詳しい人がいるのは大変心強い。


「じゃあやっぱり森か」


「予定より早い半日もあれは着くだろうよ」


まじか、・・・・きつい


ーーーーーーーーーー


目的のオークについてだが、案外簡単と痕跡を見つけられた。

森と雪山の境目にから煙が上がっていたのだ。

しばらく歩くと足跡も確認できた。


女の足跡だ


考えた結果、煙ではなく女の足跡を追うことにした。

身を隠しながら足跡をたどる。

森の中を進んでいくと川の音が聞こえ、すぐに小さな川を発見した。

少し高い場所から観察すると、望遠鏡を持ったバンズさんが、目的の女性をすぐに見つけた。

望遠鏡を借りて確認する。水を組んでいるようだ。よく見ると毛皮の防寒着を羽織っている。


俺たちが来ている防寒着となんら遜色のないちゃんとした物を着ていた。


おそらくこれから元の道へと帰るだろうと待ち伏せをすることにした。


「もしオークが出ても俺の指示があるまで身を潜めて撃たないでくれるか?見つかっても俺が盾になるから」


「え、どうしてですか?」


俺の発言にバンズさんの息子リムルはどうしてかと聞いてきた。


「リムル、いい、わかった指示通りにする」


バンズさんは理由も聞かずに受け入れてくれた。器の大きい人だ。


皮袋に水を蓄えて女は元の道を進んでいく。

褐色の肌だ。


こちらには気づいてない、流石はバンズさん、上手く隠れている。リムルも中々だ、


近づいてきたところで俺は弓を構えた


「止まれ、敵意はないから」


怖がらせるかもしれないが用心のためだ、もしこの女が、弓なんてすぐに避けてしまう手練れの場合を考えて猟師二人には離れた場所で隠れたままでいてもらう。


女びくりと肩を揺らす。


「すまん、用心のためだ、何もしないなら打たねーから、、ゆっくりその袋持ったままでいいからこっちを向いてくれ」


女は言いつけに応じてゆっくりとこっちを向く。


「突然で悪いがオークと一緒にいるだろ」


女は表情を険しくさせ、こちらを睨む。


「いえ、知りません」


「自分の意思で一緒にいんのか?」


女は呆気に取られた顔をした。

逆の立場だったらわかる気がする。

でも俺は優しいオークを知っている。今までの情報を集めればこの女と一緒にいるオークはきっと、

女はしばらくの沈黙のあと、口を開けようとした瞬間弓の風切り音が聞こえ、俺の真後ろの木にカンと刺さった。


バンズさんの合図だ。


近くにオークがいる。女からは目を離さずに周りに意識を広げる。


「見える位置にでてこい!じゃないとこの女を射る!近づいてきてもだ!矢尻に毒を塗ってある!かすりでもしたらすぐに死ぬぞ!」


俺は大きい声でそう言った。

すると俺の後ろから雪の音が聞こえた。

この雪の中でよくもまあ、俺に気づかれずにこんな距離まで近づいたもんだ。


音からして、向かってくる様子はない。

それは距離を保ちながら俺の視界の中へと徐々に入ってきた。


フサフサとした毛をもつオーク、頭には牛の角のようなものが生えている。


牛型か?


それて女と同じような防寒着を羽織っている。

オタルよりも大きい。力も強そうだ。


「武器を下げろ」


牛型のオークはすぐに手に持った手斧を捨てた。


・・・・もう確定か、


このオークには人質が効いている。


「た、頼む、その女は何もしていない」


オークは自分から手のひらを空に向けて、土下座のような体勢をとった。


明らかなる降参の姿勢、このオークにはもう戦意はない。

すると女が突然走り出した。さっきのバンズさんの合図の矢をみて、他にも誰かがいるってことは分かっているだろうに、彼女は俺の矢に恐れることなくオークの元へ走ったのだ。


まあ、俺が矢を放つつもりがないことがバレたかもしれないが。


それでも彼女は走りオークを庇うように自分を覆い被せたのだ。


「お願いします!見逃してください!もう誰にも迷惑はかけません!お願いします!お願いします!」


そう懇願する女をオークは優しく引き離し自分の体で俺から女を隠した。

矢が当たらないようにだろう。


・・・・・こいつは優しいオークだ。


矢を下ろそうとした瞬間、再び風切り音と共に合図の矢が地面に刺さった。


理解に遅れた。

この合図の矢は俺の気づいていない場所にオークや魔物が近づいてきた時の報せだ。


もう一体のオーク?それとも魔物?


雪の地面を衝撃音を立てながら向かってくる音が聞こえた。

森の中から雪を撒き散らしながら現れたそれはオークだった。


この状態では、そこらのオークや魔物よりも、タチの悪い奴だ。




俺ががよく知る、赤きオークがこの場に現れた。



見たこともない、明らかなる殺意を持って

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