猟師的復讐
赤のオークと漆黒の馬が森の中の道を風のように疾走する。後を追う風が木の葉を落とす。
「なあ!赤ちゃんそんなに揺らして大丈夫なのか!!」
風の音に負けないように声を上げて、赤のオーク、オタルに荷物のように脇に担がれいるフルドが吹いに漆黒の馬、クリシアに跨るフレイヤに問いかけた。
「クリシアは優秀なの、そこらの馬車より快適だから、馬鹿な質問はやめて」
「え?何だって?」
フレイヤの言う通り、赤子のバッシュ、食事を終え、垂れたフレイヤの髪を小さな手で掴み、この速度のなか、スヤスヤと寝ていた。
クリシアの速度の中で寝るなんて、なかなかの神経ね、将来大物になるかも
とフレイヤは感心していた。
フレイヤのフルドへの返答は大声で返答しなかった為か、その声は風と蹄の音にかき消されフルドには聞き取れなかった。
「おい!なんだって!おーい!きこえてますかーー!!」
「・・・・・」
フルドが聞き返すが、フレイヤはそれを無視、
声を上げてバッシュを刺激したくなかったのもあるが単に面倒臭かった。
「クリシアは優秀だから馬車よりも快適だって」
「へぇ、そうなんか、今度乗ってみてぇな、それよか、あいつシカトしたぞ!なあ見た?あれ、僕はそれどうかとおもいますけどねー!」
「ほ、ほら、バッシュ、ようやく寝たし、」
「・・・・あ、そうか、それはすまん」
オタルがフレイヤの代わりにフルドに伝言する。フルドもフレイヤが無視した理由に気づき、小さく手を上げて謝る。しかめ面で、
「!?」
オタルが何かに気づくザザザッと地面を削りながら、その場に立ち止まった。
遅れてフレイヤが乗るクリシアもバッシュの為に緩やかに速度を落とし立ち止まり、踵を返してオタルへと歩み寄る。
側に来るときにはフルドとオタルが地面の観察を始めていた。
「ここで道から外れてる」
「流石オタルさん、ふつうに気づかなかったわ」
「他にも足跡・・・・」
「山に登ったのか、逆から来た方は新しいな」
足跡の中には、道の反対側から森に入っている痕跡がある。他の足跡とは違い新しく感じる
「他の仲間・・・かな?」
「ああ、多分行商人だろな」
フレイヤはフルドのオタルが痕跡から推測を立てる二人を見て無言で観察する。
(この二人まあ中々使える)
フレイヤは素直にそう心の中で呟いた。
(猟師の元で育ったフルドと数多くのオークを置い駆除して来たオタル、フルドは遅いがオタルの機動力で補えるし、戦闘に関しても申し分ない。フルドは弱いがそれを補ってもお釣りがくるような防御力がある・・・・
そして何より飯がうまい・・・・)
そんなことをフレイヤが思っている中で、フルドは枝を取ると近くにあった馬の糞にブスリと刺した。
「行商人?」
オタルがどうして行商人なのか疑問に思う。
フルドは枝を抜き、ついた糞を観察する。よく見れば湯気が立っている。
「ああ、多分な、指名手配で町に入れないやつの換金ルートだからな、まあ、よくある話だ、糞がまだ熱がある、もう大分近いなこりゃ、どうする作戦立てとくか?」
「いい案でもあんの?」
フレイヤの問いにフルドはしばらく考えると、自身ありげな表情で答えた。
「ない」
ーーーーーーー
「なあ、こんだけってのはねーんじゃねーか?」
バッシュの母親達を襲った盗賊、野党の団長が行商人との略奪品の換金、値段交渉をおこっなっていた。
彼らは山中の開けた場所で20を超える人数の野党が、そこを野営地にしていた。
「団長さん、これ以上は無理ですよ、ほらこれ裏に文字が彫ってある。加工しないと足が付んですよその費用だってバカにならないんですから」
「ちっ、しゃーねーな」
「毎度ありがとうございます。今後ともご贔屓に・・・」
商人は換金を終えると、足早にその場を後にした。
この商人のように裏で野盗と取引をする者が一部いる。それなりのリスクを負うが、半額以上の値段で安く商品を仕入れ流ことができる。
野盗側も裏切られる可能性があるため、その商人選びは厳密に行われる。長く取引をする商人程、買取額は低いがその分信頼も厚い。
この商人も、その一人である。
しかし今回は運が悪かった。
しばらく馬車を走らせた頃、商人の周りを地面から這い出た黒い帯のような者が馬、馬車、商人をきつく縛りあげた。
口にまでその帯に縛り上げられ。身動きが取れない。
あまりに一瞬の出来事に驚き、目を見開き、どうにか縛り上げられていない、鼻から精一杯の呻き声を張り上げた。
強い締め付けにより、馬すらその場から動けなかった。
ガサリと茂みの物陰から、3つの影が現れた。
「うわー、便利だなそれ」
最初に声を出したのは普通の青年だった。
「先に馬を放してやって、可哀想だから」
「うん、わかった」
次は黒髪の美女、そしてそれに答えたのは赤色のオークだ。
ただえさえ冷や汗の止まらない商人からどっと脂汗の量が増える。
「フレイヤさん、ここの黒帯いいですか?」
「敬語になってる。わかったわ」
「あ、すみ・・・ごめんなさい」
赤色のオーク、オタルが、フレイヤに邪魔になる黒帯を解いてもらいながら馬と馬車を放している中、
フルドが馬車に上がり、商人の前に立つ。
「今から口のやつとるけど、声上げるなよ、わかりました?」
そうナイフを商人の首に当てならが脅すフルドの言葉に商人はほとんど動かない首を必死に縦に振った。
ちらりとそれを見たフレイヤが商人の口を縛る黒帯を解除する。
「よし、じゃあとりあえず、あの野盗の人数は?ーーーーーー
ーーーーーーーー
商人はあっけなく全てを話した。
その後は商人は馬車にあった縄で気に縛り上げられた。
「あまり動くなよ、縄にすれて血が出たら魔物が寄ってくるかもよ、この辺多いぽいから、あ、叫んでも一緒だからな、後、小便も我慢した方がいいぞ」
「フルド、あった、これ?」
バッシュを抱いたフレイヤがフルドに声をかけた。
オタルがあらかじめ商人に吐かせた。今日野盗から買った品を馬車の荷物を引っ張りだしながら、中身を物色し、その中から2本の弓を見つけたのだった。
「あー、こっちのちっさいのがバッシュのだろうな、まだ鉉が付いてない、こっちが親父のだな」
バッシュの形見は割とすぐに見つかった。
それから、フルドとオタルで荷物を物色していく中、フレイヤは起きたバッシュをヨシヨシと優しくあやす、
バッシュはあまり泣かないらしい、
その光景をほんのすこし落ち着いた商人は驚愕したように見つめていた。
オーク、エルフ、ホルム、赤子、旅をするにはあまりに不可解な面子。
何より異彩を放っているのがあのオーク、
しっかりと服を着て、大人しく理性のある口調で話している。
時折赤子をあやす仕草は魔物ではなく人や亜人魔族そのものだった。
フルドとオタルは全ての商人の荷物を物色を終え、バッシュの家族の持ち物であろう物をどうにか回収することができた。
父親の指輪、弓、ナイフ、
バッシュに送られた弓とナイフ、
これらは猟師に育てられたフルドの経験で判別することができたが、他のそれらしい物に関しては、商人の記憶からある程度は絞れたが、全てに判断をつけることが他できなかった。
「他の盗品と混じってるな、あとは野盗どもから聞けたら聞くか」
「そうだね、もうすぐ夜になりそうだしそろそろ・・・・」
「そうだな、じゃあ、フレイヤ、ガキんこと頼むぞ、」
「はいはい、いってら」
3人で話し合った結果、やはりフレイヤは野盗の討伐に不参加となった。
いくらフレイヤが優秀な魔法使いとしても、万が一がある。
商人にある程度の情報を吐かせたにしても、野盗達の力量は人数程度のことしかわからない。
20人と言う数を聞いて、フルドは返り討ちにあう可能性も入れなければならなかったが、そんな不安をよそに、フレイヤはオタル一人で充分と自信ありげに言っていた。
むしろ不安は別にあった。
「あんたが足手まといで、むしろマイナスになりそうなんだけど」
とフレイヤの別の不安を言われ、フルドは顔をしかめることしかできなかった。
「ま、まあ、二人、、3人は倒してみせますよ!」
苦し紛れに自信のない決意を宣言し、野盗の方角に向けて歩みだした。
フレイヤは言葉を返さず、ただだ呆れた顔をした。
「んじゃ行くか」
「うん」
フレイヤのフルドの戦力不足の不安をよそに、オタルとフルドは森の中へと進んだ。
ーーーーーーーーーーーーー
日は落ち、月は雲に隠れ、焚き火の光だけとなった、20人ほど居る野盗のキャンプ。
半数は眠りに落ち、半分は商人が置いていった酒で宴会を続けていた。
座っていた野盗の一人が立ち上がる。
「ちっとクソいってくらぁ」
そのまま森へと歩こうとすると、それに気づいた団長が声をかける。
「おい!逆いけ逆、風上行くと臭いがくんだよ!臭えんだよテメェの」
「お!すまねえすまねぇ、相変わらず団長は鼻が効くねぇ」
「テメェのが異常に臭えんだよ」
その会話に周りも団長も立った男もゲラゲラと笑う。
団長の言われた通りに、逆の方向へ野盗の男は森へ入る。
適当な場所を見つけようと歩きながら、数日前に襲った集落を思い出す。
「にしてもいい女だったな、生きてたらまたヤリてぇな〜」
そうポツリと言葉にした瞬間、口を何者かの手で覆われ、首にナイフが突き立てられる。足元を崩され地面に腰を落とされた。
盗賊が反応するまもなくナイフがそのまま首の中にずぶりと入りこみ、抉るように抜かれた。
血がドボドボと首を伝い地面に落ちる。
そのまま力なく地面に横になった。
ガサリとオタルが森の影から現れる。
「こ、殺したの?」
「ああ、・・・・そういやオタル、もしかして人は殺したことはないのか?」
オタルは、不安そうな顔で頷く。
「そっか、まあいいけど、この後何十人も相手にすんだからな」
「わかってる。」
「・・・・ま、お互い危なくなったら逃げる。お前、人殺したくないんだろ?」
「う、うん・・・でも」
「とりあえず数人は生捕が目的だ。殺す生かすはお前の判断に任せる」
「俺は殺すぞ、余裕ねえしな、止めんなよ」
「・・・・うん、わかった」
オタルは頷いた。
キャンプの周りを囲うように数人の見張りが交代制で巡回をする。
異変は静かに起こった。
「なあ、俺次交代じゃなかったか?こねぇんだけど」
見張りを終えて戻って来るはずの仲間が来ない、それを不審に思った仲間が、別の見張りに聞く。
「あ?知らねーよ、そういや豚野郎もいねーな、確かもう1人あのアマだったよな、ヤッてんじゃねーか?」
「だったらおもしれえ、覗き行こうぜ」
消えた2人を探しに森を探す2人、しかし、そのヤッている2人は見つからなかった。
当たり前だ2人はもうフルドの手によって死体となっているからだ。
2人の後ろにも、大きな影がぬらりと姿を現した。
気配に気づき、振り返る前には、目にも止まらぬ速さの手刀が、2人の顎を揺らし、糸人形のようにその場に崩れ落ちた。
いつのまにか見張りは5人6人と徐々に減っていく。
明らかにおかしいと気づいたのは団長だった。
「何かがおかしい。お前ら武器を取れ、賞金稼ぎだ」
それを聞いて野党の1人が馬車に武器を取るため中に駆け込む。剣を取り抜いて馬車の中から周りを見渡す。
その野党の後ろから、影が動き出す。音もなく出された手が野党の口を塞いだ瞬間、サシュリととういう音と共に喉がぱっくりと割れ、野党は馬車の奥へとひきづられた。
野党の全員が目を覚まし、戦闘態勢をとるが敵の姿は見えない、恐怖と動揺が野党達に広がる。
ひひん!と馬が鳴き、蹄が慌ただしく音を出す。馬車から外された数頭の馬が勢いよくその場から逃げ出した。
「くそ!見張りは何してんだ!」
「もう殺されてる、逃げると殺されるぞ」
焦り出す手下に団長が落ち着いた口調で警告する。
しかし、それをパニックになった野党の一人が慌てて逃げ出した。
釣られて他2人も後を追う。
「おい!引き返せ!!」
団長の声はもはや聴こえていない。必死に逃げ、松明の光が届かかない暗がりへと到達した時、3人の横から現れた影がとてつもない速さでその3人を持っていった。
叫び声が森中に広がり、そして途絶える。
「なんだあれ!」
「魔物か!?」
「固まれ!あいつらのようになるぞ!」
団長だけはあの影が人型だと理解していた。
「多分ありゃオークだ」
それを聞いた手下にどよめきが起きる。
「頭!オークって、だ、だが、あんなに早く動けるもんなのか!?」
「知るか!!あの体格オークには違いねー!」
気がつけばもう、野党の数は半分の数になっていた。残された野党達は、キャンプの中央で見えない敵に恐怖を抱きながら、只々警戒することしかできなかった。
シュンっと風切り音が聞こえた。
団長は聞き覚えのある音を素早く聞き、その方角を振り向く。
ズク
矢が野党の1人の首に刺さる。軌道に刺さり、口からカヒュっと音が漏れた。
矢の刺さった野党は、その場にうずくまり、仲間の手当て虚しく、血に溺れて命を落とした。
矢の飛んできた方向に野党達が弓矢やボウガンを放つ。
「矢を無駄にすんな!!」
団長がそれを止める。
「団長!!オークが矢使ってやがる!!」
「知るか!!テントをばらして盾つくれ!」
見えない敵、見えない攻撃に野党の恐怖が増していく。
団長としても、こんな経験は初めてだった。
今まで何度か賞金稼ぎや、冒険者の襲撃にあったことはあるし、どうにか返り討ちにしてきた、しかし今回は別だった。
俊敏なオークの出現、団員が半分になるまで音、匂いすら気づかなかった。
おそらく風下から近づいてきたであろう、その敵は、確実に経験を積んでいると団長は読んだ、
音、弓の腕、匂いですら考慮して襲ってきた敵はかなりの経験者だということは明白だった。
「火を消せ、暗闇に目をならせ」
ーーーーーーーー
木の陰にフルドは座って野党を監視していた。
そこに、気を失った3人の野党を持ったオタルが木の陰から現れた。
フルドの案で、一瞬オタルが3人を掻っ払う姿を野党達に見せたのは正解だった。
あの俊足の脅しにより、散り散りに逃げ出そうと考える野党は出てこない。お陰で、ジリジリと視野の外から攻めることができる。
「それ死んでる?」
「いや、気を失ってるだけだよ、」
「どうしたもんか、縛るもん取ってくりゃよかったな、あ、こいつらのベルトで代用すっか」
「うん、それでどう?あの数なら行けると思うけど」
オタルの強気な発言、いや、実際に楽勝なのだろう、オークの群れを一人で駆逐してしまうような奴だ。
今回の相手は人間、オタル自身が極力殺したくないようだから、こんな、時間のかかる作戦にしたのだ。
フルドはそんな余裕がない、極力殺さないというのは難易度が高く、あまりできないが、
「んーまあ、でも、あいつらも手馴れてるぜ、火消して、目を慣らしてやがる」
「どうする?」
「12人か、やれるか?」
「うん、大丈夫」
即答だった。
「そっかなら、行くか」
ーーーーーーー
野党は恐怖した。
見えなかった恐怖が、森の中から音を立てながらこちらに進んでくるのがわかった。
森の闇から現れたそれは間違いなくオークだった。
野党達は一斉に弓矢を射る。しかしそれが当たることはない。驚異的な反射神経と脚力で弓を避け、距離を一気に縮める。
次の装填は間に合わない、恐怖に抗うために野党達は声をあらあげて、剣や斧を抜いた。
12人と野党の集団に、赤のオークが砲弾のように突撃した。
「うっそ」
遅れてオタルの後をついてきたフルドは笑いの息を吹き出してた。
オタルが集団に突撃したとたん二人が宙を舞い、一人が2回転してテントに突っ込んだ。
「まるで闘牛戦車だな」
その後はあっけないものだった。ものの数秒で、野党達は全滅。
逃げ出そうした盗賊はフルドが足を射抜き阻止
、一番健闘した団長は、どうにか不意をついたまではよかったが、オタルの技で華麗にいなされ、その鉄拳により意識を飛ばされた。
ーーーーーーーーーーー
「あらお帰り」
帰ってきたオタルをフレイヤと迎えた。
バッシュはスヤスヤと寝息を立てていた。
木に縛り付けられた商人は怯えた目にでオタルとフレイヤを見つめていた。
「ただいま」
「アイツは?」
「帰ってろって」
ぽりぽりと頬をかくオタル、その笑顔とはいえない微妙な表情をフレイヤは気にした。
「どうしたの?」
「・・・・・・ダメだっていわれた。」
「・・・・そっか」
「殺せなかった」
オタルは泣きそうな顔になる
「命を奪うのだけフルドに任せちゃった」
なんとなくだがフレイヤはフルドの気持ちがわかった。
オークに対しては慈悲なく殺してしまうオタルだが、人に対しては誰よりも優しいこのオークが、例えば罪人だとしても、人、亜人の血でその手を汚して欲しくない
フレイヤはおそらくフルドがそんな気持ちで彼をここに戻したのだと悟った。
「まあ、わからないでもないけど、あんたに人を殺させたくないってことでしょ」
「だけど、、僕、なにか、ずるい、無責任な」
「現にあんた、殺せたの?」
「・・・・いや」
「殺すことが正義だなんてのはバカの話だから、
ま、私はどうでもいいんだけどね」
「・・・・・・」
「慣れてるアイツに任せてときなさい、それより早くご飯作って」
「あ、うん」
ーーーーーーー
どうして俺はオタルを戻したのか、もしオタルが先程の戦闘の場合、人を殺すのも仕方がないという仕草を見せたのだったらフレイヤの元に向かわせてないのかもしれない。
ただアイツの戦い方を見てわかった。
アイツの戦いは不殺を極めていた。
一番の重傷でも足や腕の骨折程度、明らかなる手加減を行なっていた。
あの親子達にあんな仕打ちをしたこいつらに対してもだ。
だから見せたくはないと思った。今から行う残酷な有様を
「うう、」
野党の一人がうめき声をあげた。
俺が殺した野党以外、生き残った奴らは手足の健を切り、丈夫そうな木に絶対に解けないように縛り上げた。
縄はこの野党どもの馬車から余るほど見つかった。
そして一人一人、丁寧に全員の脚の腱を切ってやった。
人数が多く手間をかいたが魔物に比べたら楽なものだ。
野党の頭が、こちらを睨んでいる。
「あんた、ハーベスト・ランチだろ?」
「賞金稼ぎか」
「ちょっと違うな。通りすがり」
「じゃあなぜ俺を?」
「わかるに決まってるだろ、同じ元猟師だろ?
猟師の間じゃ結構有名なんだぜ、あの母親にしたことみて大体わかったよ、お前かもって」
「そうかよ、俺たちに同じことしようってか!?」
こんな状況でも、野党の頭ハーベストランチは不敵な笑みをやめなかった。しかしその笑みには明らかな怒りが夜の暗がりでもすぐにわかるほどひしひしと現れていた。
「あ、わかるー?そそ」
「まて!!!俺たちはそこには行ってない!!」
手下の一人が声を上げた、それに乗じてほかの野党達が助けて、自分はやってないと慈悲を求めた。
「どうだっていいよ、連帯責任だ」
ハーベストの笑みが完全に消える。
「ま、まってくれ!宝もん隠してんだ俺しか知らねぇ、助けてくれたら教えぐぶっ!!」
いきなり謙ったような笑みで俺に取引を持ちかけた。その顔に怒りを覚え、顔に蹴りを入れて黙らせた
「はいはい、わかったわかった」
そして運んできた死体から血を、布に吸収させる。
バーベストの顔がみるみる恐怖に染まって行くのがわかった。
そして、その布を絞って縛られた野党全員に浴びさせる。ついでに布を木に叩きつけながら周りにも振りまく。
慈悲や罵倒の叫びが森中に響く、
耳のいいオタルに聞こえなければいいが、
全員にかける血の量には困らなかった。
運ぶのは難儀だったが、死体は何体もあった。
血が固まり手が真っ赤だ、早く洗いたい。
そして、ハーベストに特に沢山を血を掛けた。
自分の命がダメだとわかったハーベストの顔からは怒りと恐怖の入り混じった表情で俺を睨みつけた。
もう余裕はない。
「じゃあな、運が良ければ助かるって」
循環派の処刑方法だ、今じゃ知ってる者さえ少ない。
俺は友達に別れをを言うようなテンションで、野党達に手を振って、その場を後にした。
後ろから悲痛な叫びが聞こえる。助けてと慈悲を求める鳴き声や。怒りの罵倒、ハーベストの声は一際大きかった。
早く戻ってこの血だらけ手を洗いたい。
よく見れば服にも血がかなり付いている。
しばらくして、ザザザザザと森の中を何かが走る抜ける音がする
遠くで魔物の呻き声が聞こえる。
それと共に野党どもの叫び声。
「・・・・案外早かったな」
いくら血を巻いたからと言ってこれは早い。
狼型の魔物の群れでも近くにあったのか、運がいいのやら悪いのやら、これも山の神の思し召しか?
まあいいや、俺も魔物に見つからないうちに早くずらかるか。
と俺は忘れかけていた筋肉痛を再び感じながら駆け足でその場を後にした。