6話 バングルは外れない
「バングル?」
心当たりは一つしかない。
『これだよ』
青がバングルを差し出す。黒鋼の流線形が美しく、中心に紅玉がはまっていた。
「そのバングルは私がさっき別の部屋で購入したものに違いない」
唯は青に一連のいきさつを説明した。
『つまり、唯は機械にこのバングルを買わされたってわけか』
「そういうこと」
『パルスを稼げばまた別のものも買えるかもな。とりあえず付けてみるか』
「いや、止めておいた方がいい。何があるか分かったものじゃない」
『大丈夫。万一のときは叩き壊すから』
そう言って、青は腕にバングルをはめた。唯はうなだれて首を振る。親友ながらどうしてそう軽々しく行動できるのか理解に苦しむ。
『特になんともないみたい』
「良かった。私は一瞬で青の首が吹き飛ぶところまで想像した」
『せめて腕だろ!』
青がモニターに向けて腕をかざす。青の肌はきめ細かく、手首のバングルがよく似合っていた。他に変わったことはなさそうだ。と思っていると、突然、青の横にタブが開いた。
特性: 雷
レア: <1%、S、☆☆☆☆
氏名: 東海 青【トウカイ アオ】
性別: 女性
年齢: 16歳
身長: 170 cm
体重: 55 kg
所持金: 10000パルス
装備: なし
青についての情報がタブの中に羅列されていた。
「青がバングルを付けた後、モニターに表示が追加された」
『えっ、ほんとうか』
「読み上げるよ」
身長、体重など唯も知っているデータから、そうでないものまで含まれている。レアリティが特に目を引く。Sがどの程度高いのか分からないが、全体の1%以下ということから非常に希少な存在なのだろう。
『あたし、優秀じゃねえか!』
「調子に乗らないように。他の人にも渡してみて。もしかしたらバングルを付けた人の情報が分かるのかも」
『それがさ……バングルを付けた途端に小さくなって外せなくなっちゃったんだわ』
青は舌を出してばつが悪そうに笑った。
「あほ」
唯は脱力して椅子に沈み込んだ。
その後、詳しく調べると、所持金は時間によって徐々に増えていくようだった。青の提案によりもう一度白い扉の部屋に行くと、青の手持ちだけ唯の使えるパルスが増えていた。唯はその所持金でさらにバングルを購入し、別のクラスメートがそれを腕にはめ、再びパルスを手に入れた。このサイクルを繰り返すと、クラスメート全員にバングルが行き渡った。
『これで全員が手に入れたか』
「みんなの情報を見てみたけれど、だいたいの人はBかCだね。Aはほんの数人。Sは青だけだった」
『特性はどうだ?』
「青しか特性は持ってないみたい。雷ってどういう意味だろう?」
バングルが全員のもとに行くと毎秒増えていくパルスの量もそこそこになった。さらにリストを閲覧していたら「基本物品リストLv.2」が追加されていた。
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あるジョウケンをクリアするとリストがふえる
たまにチェックしたほうがいいよ
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モニターは頼んでもいないのにお節介なアドバイスをしてくれていた。この場合、クラスメート全員がバングルを所持するということが「基本物品リストLv.2」の出現条件だったのだろう。