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モニター7  作者: 青木一郎
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4話 客はただでは返さない

 扉を順々にめぐってノブを回していくと、抵抗がありどれも開かなかった。最後の白い扉だけ鍵がかかっていなかった。入るべきか、否か。唯の答えは決まっていた。親友の青のためにも手ぶらで帰るわけにはいかない。


 中に入ると、白い部屋の中に一台のモニターが置かれていた。唯がいぶかしげにのぞき込むとひとりでに画面が光り、メッセージが表示された。


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 あなたのショジキンは 10000パルスだ。


 なにがほしい?


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「どういうことなんだ?」


 唯はしばらく画面を見つめて動けずにいた。


 メッセージが唯の驚きをくみ取ったかのように変わった。


------------------------------------------------------------------------


 ほしいものがあったらキーボードからうちこんでケンサクできる。


 ただしキーボードは5000パルスだ。かう?


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 唯は頭の中が読み取られているような気持ち悪い感じがした。


「お前はなんなんだ……」


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 ぼくについてのジョウホウはたかいよ


 いまのあなたには、はらえない


 パルスがほしいならなにかうりなよ


------------------------------------------------------------------------


 とにかく訳が分からなかった。とりあえず、このモニターはどうしても唯の考えていることをお金に置き換えないと気が済まないようだ。下手に何かを口走っていったらとんでもないものを買わされるかもしれない。それでも一つだけ聞かずにはいられないことがあった。


「私たちをなぜ閉じ込めた? 早くここから出せ」


 モニターの画面に一瞬、砂嵐が入る。まるで機械が動揺したかのように見えた。


 次の瞬間、砂嵐は消え、新たなメッセージが表示されていた。


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 かわなくてもいずれわかる


 それまでいきていればね


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 唯は生唾を飲み込んだ。機械が意味するところは、自分たちが命を落とす可能性もあるということだろうか……。


 とにかくこのモニターについて青に相談したいと思った。もしくは、モニターのそばから離れたかっただけかもしれない。踵を返して唯は扉に歩いて行った。


 推測するに、10000パルスとはどうやら電子通貨のことのようだ。どの程度の価値があるのか、すぐには想像できなかったが、半分の5000パルスを今すぐ「キーボード」なるものに使う気にはなれない。


 扉のノブに手をかけてひねると、先ほどと異なり固い抵抗を感じた。唯は振り向き、モニターを睨みつけた。


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イチゲンさんはオコトワリだよ


ヘヤにはいるたびにカギはしまる


なにもかわずにでたければ10000パルスはらわないといけないよ


----------------------------------------------------------------------------


「ほんと、めんどうなことだらけ……」


 今すぐ10000パルス叩きつけこの部屋を出て、何の責任も感じずに布団に入りたい気分だった。青に約束した手前、そんなことはできない。そもそも布団がない。唯は額までかかる長い前髪を掻き上げるとモニターに面と向かい合った。


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