2話
チュンッ! チュンチュン、チュンチュン!
「チュン、チュン、うるせい! あれっ?」
「なになに? 誰かいるの? うそっ! わたし、ファーストキスもまだなのよ! どこのどいつだ! わたしの純潔を! やだ! 誰かと思ったらイノッチじゃない! 何したの!」
目の前にイノッチのデッカイどんぐるまなこが! うそでしょ! なんで、こいつと、朝チュン!
「待て、待て、待て、待て! クッションでおれを打つな! 誤解だ! 誤解! 周りをよく見てみろ!」
イノッチに言われてあたりを見渡した。あれっ? ここは?
「えっ? ここどこ?」
「おれの探偵事務所だ。ここは応接室。どうやっておれたちがここまで来たのかは不明だが、とりあえず怪我はないようだな」
「服、着てる。へー、ここがイノッチの職場か……ってのん気にしている場合じゃない! 荷物は? あるか。靴も……履いてる! イノッチは……コートも帽子も身に着けたまま……」
わたしたちは服を着たままソファに寝かされていたみたいだ。
「それよりおれたち、睡眠薬を飲まされたみたいだな」
「えーっ! ほんとにーっ? あのコーヒーに仕込まれてたんだ……あっ! 指輪は?」
「ポケットに入ってる。指輪が戻ればおれとしては問題ないんだが……もしかして、頭に金属とか埋め込まれてないかな……」
「ちょっと、ちょっと! 相手は宇宙人じゃないんだよ? れっきとした人間だったじゃん! UFOなんか飛んでなかったよ!」
「そうだけど……GHQって言ってたよな。こんな話、誰も信じてくれないだろうな」
「そりゃそうでしょ? それに、政府の関係者って言ってたから、人に話したらヤバイんじゃない?」
「ああ、そうだな。これは2人だけの秘密にしようぜ」
「そういえば、あの男の人が何か困ったことがあったらまたおいでって言ってたよ!」
「困ったことがあったら? 浮気調査とかでもいいのか?」
「そんなわけないでしょ! 命にかかわる一大事ってことでしょうよ! とにかく、わたし帰るね!」
「おいっ! 体はホントに大丈夫なのか? 少し休んでけば? そういえば……家に連絡しなくていいのか?」
「1人暮らしだから大丈夫! それよりも、ここに居たらいらぬ誤解を受ける! わたし、出てくから! じゃあ、バイト代は次に来店したときちょうだいよ! それじゃあ!」
「おいっ! 亜子ちゃん! ちょっと! バイト代か……忘れてたな。まったく! 夕べあんなことがあったのに、ちゃっかりしてるよ!」
わたしは急いでイノッチの探偵事務所から外へ出た。今っていったい何時ごろなんだろ? いずれにしても、イノッチの職場から嫁入り前のわたしが出て来たらおかしいよ! だってイノッチ、住居もここでしょ? ヤバイ、ヤバイ! 雑居ビルの2階からわたしは急いで外へ出た。それを『ムーンマジック』の人に見られていたことも知らずに。




