↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

あるキモオタの自決

掲載日:2016/03/11

「ぴ…らたは…汚さ…ほしかった…なぁ…」

「あ…と…む…住み分…それで、…ったのに…」

薄暗い部屋で不明瞭な呟きが漏れた。

聞く者はいない。聞いた所で、その意味を解する者もいない。

不細工な男は、ふらつきながらも立ち上がる。

水を飲み、上着を羽織る。扉を何とか開ける。

久しぶりの「外出」だが、祝いの声など上がるはずもない。

深夜である事だけは、男にとって救いだった。


男は静かに歩みを進める。

その容姿ゆえに、誰も顧みる者はいない。


人間は、「美しさを知るのは人間だけだ」と誇り、他の生物を見下す。

しかし、「美しさを知ること」を真に人間の定義とするのならば、

人間などこの世に数えるほどしかいない。

世の支配者は豚だという事になるだろう。


この醜い世界への反抗として、美しき男は、決然とそれを完遂したのか?

そうだ、と言えればよかったが、しかし、男は無様だった。

間違えるはずの無い買い物を間違えて、買いなおす。

まっすぐ、迷い無く進めたはずの歩みは、何故か自室とは別の道に向かう。

誰も彼を気に止めない事は、この局面においては、むしろ救いであった。


それでもようやく、自室へと戻る。

HDDの整理等はしなかった。今更見栄を張っても仕方がない。

部屋を簡単に片付ける。

「処理」をする人の負担を、少しでも減らしたつもりだった。

選んだ手段も同じ。いや、これはただ、恐怖心との相談の結果か。

発見の遅れを考えれば、結局処理には手間がかかる事になるのかもしれない。

男は、どこかへの連絡を考えて、やめた。

そこまでの義理はない、何より、失敗の言い訳にしてしまいそうで、怖かった。


いよいよ、後は成すべきを成すのみ。震えはそれほど激しくない。

脳みそは生存本能を全開にしだす。遅きに失しているが、出来損ないの機械だって、

好き好んで出来損なったわけではないのだ。

呪い続けた自分の心身を、彼は許そうと思った。

ならば、と脳は、その許しを「他者」へ広げる事を求める。

しかし不細工な男は、それについては極めて強硬だった。

かえって、それらの脳の働きをテコにして、

勢いをつけて、

彼は、

実行した。



それは狭量で

弱く愚かで

間違っていて

無価値で

醜かった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。