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あるキモオタの自決

「ぴ…らたは…汚さ…ほしかった…なぁ…」

「あ…と…む…住み分…それで、…ったのに…」

薄暗い部屋で不明瞭な呟きが漏れた。

聞く者はいない。聞いた所で、その意味を解する者もいない。

不細工な男は、ふらつきながらも立ち上がる。

水を飲み、上着を羽織る。扉を何とか開ける。

久しぶりの「外出」だが、祝いの声など上がるはずもない。

深夜である事だけは、男にとって救いだった。


男は静かに歩みを進める。

その容姿ゆえに、誰も顧みる者はいない。


人間は、「美しさを知るのは人間だけだ」と誇り、他の生物を見下す。

しかし、「美しさを知ること」を真に人間の定義とするのならば、

人間などこの世に数えるほどしかいない。

世の支配者は豚だという事になるだろう。


この醜い世界への反抗として、美しき男は、決然とそれを完遂したのか?

そうだ、と言えればよかったが、しかし、男は無様だった。

間違えるはずの無い買い物を間違えて、買いなおす。

まっすぐ、迷い無く進めたはずの歩みは、何故か自室とは別の道に向かう。

誰も彼を気に止めない事は、この局面においては、むしろ救いであった。


それでもようやく、自室へと戻る。

HDDの整理等はしなかった。今更見栄を張っても仕方がない。

部屋を簡単に片付ける。

「処理」をする人の負担を、少しでも減らしたつもりだった。

選んだ手段も同じ。いや、これはただ、恐怖心との相談の結果か。

発見の遅れを考えれば、結局処理には手間がかかる事になるのかもしれない。

男は、どこかへの連絡を考えて、やめた。

そこまでの義理はない、何より、失敗の言い訳にしてしまいそうで、怖かった。


いよいよ、後は成すべきを成すのみ。震えはそれほど激しくない。

脳みそは生存本能を全開にしだす。遅きに失しているが、出来損ないの機械だって、

好き好んで出来損なったわけではないのだ。

呪い続けた自分の心身を、彼は許そうと思った。

ならば、と脳は、その許しを「他者」へ広げる事を求める。

しかし不細工な男は、それについては極めて強硬だった。

かえって、それらの脳の働きをテコにして、

勢いをつけて、

彼は、

実行した。



それは狭量で

弱く愚かで

間違っていて

無価値で

醜かった

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