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火の脅威1

俺は

私は

僕は

わしは

meは

俺様は

自分は

拙者は


みんなのために


「……さん。碧斗さん!」

「ん…………んぅん?」


ミーシェの柔らかい肉球にほっぺを突かれて目が覚めた。なんて良い目覚めなんだ。しかし何だってこんな時間に?辺りはまだ暗く、睡眠で回復する俺のお疲れパラメーター的に、リャオを仲間にしたところで寝てからそんなに時間は経っていないはずだ。


「おはようございます」


猫にモーニングコールされるなんて幸せだ。もう死ねる。このままもう一回永遠の眠りに……冗談に聞こえないからやめよう。


「なんだよ、まだこんなに暗いぞ……」

「本当に申し訳ないのですが……」


暗闇に目を凝らしてよく見ると、申し訳なさそうに俯き、耳をぺターンとさせるミーシェがいた。どうしようもなく可愛すぎて、それからびしびしと伝わる緊張の空気でパニックに陥りそうだ。


「で、何があった?」


息を潜めて訪ねると、ミーシェは体勢を低くして俺の耳に顔を寄せた。


「私が着いていながら……本当に申し訳ありません」

「いや、あ、うん」

「いつもならこんなミスは犯さないのですが……本当です!信じて下さい!」

「うん、わかったわかった。それで……」

「今回は、そう……たまたま、たまたまこのタイミングで」

「うん、だから……」

「ああああ、あんまりにも美味しくてお腹一杯になりすぎて爆睡してしまうなんて!」

「もう、可愛いから許す」


既に普通のトーンで飛び交う会話にリャオも目を覚ました。


「……んん、なんだよ。まだお腹一杯……」

「お前もか。ほら、しゃんとしろよ」

「だからー、なに?」

「囲まれました」

「「え?」」


俺とリャオの声が重なり、目を会わせてもう一度ミーシェを見る。


「敵に囲まれています。おそらく数は三十程かと」

「「さ、さんじゅう!?」」


また重なった。急な危機に単純な言葉しか出てこないようだ。危機だからだ。こいつと一緒にしないでほしい。


「……まじか。どうするよ……」

「まずは敵と対峙してみないことには……敵が何であるか知る必要がありますので」

「おぉ、そうか。いったいなんでまた……」

「敵の目的を知る必要はありません。倒した方が勝者であり、生き残るだけですから」

「……さいですか」


なんか冷てーな。冷たいけど……


ドクンっ


興奮する。


「じゃあまず、火でも炊きますか」

「えぇ!?どうしてですか?」

「俺、暗かったら見えねぇもん」

「えー、そうは言いましても……」

「そうだぞー。火は……怖くはないけど、あ、危ないぞ」

「お前ら結構慣れただろ?敵はもっとビビるって!」

「ちょ……」


ごちゃごちゃと言われる前に一気に火を着けた。


ボオオオッ


「「ひっ」」

ドタドタっ、


その瞬間、二人の小さな悲鳴と、辺りから騒がしく動く音がした。やっぱり全方位囲まれているみたいだ。これは……んー、かなりやばいか?


……こいつらも。すっかり縮みあがって塞ぎ混んでいる猫と、ただのチビ。もうこっちが泣きたい。


なんの役にも立たないと絶望的だった、が、ミーシェが人間に化けてゆったりと立ち上がった。かなり久々に見た気がする。既に両手にはあの持ち手がH字の剣が握られている。


「これは……私の失態でもありますからね。決着つけさせていただきますよ、はい。私が悪かったんですよ。はいはい」

「なんか……ちょっと逆ギレ混ざってない?」


足はガクガクだし、剣もプルプルカタカタ震えてるし、見てられない!


「僕は……」

「おぉ」


リャオが立ち上がった。


「僕にはこのリュックとやらを守る義務がありますからね。怖くなんかないもん。大丈夫だもん。任せて下さいよ……ヘヘ……」


もう何キャラだよ。火の怖さと襲われているという現状に完全に混乱している。無理しまくってるのバレバレだよ。本当に見てられない。


……でもリャオは、言ってることは普段より頼もしくなったか?これは……うん、使えるかも。本当にヤバイとき、人って変われるんだな。……人じゃないけど。


「さて、じゃあどうするかなぁ。もうばれてんだから、出てきてもいいんじゃねーかー?それとも俺らのことが怖くて出てこれなーい?」


軽い挑発。


「そ、そんなこと言っても……」


だよなー。こんなのに乗るほど馬鹿じゃないだろうし……でもこっちの方が不利だしなぁ。どうしよう。


ドタッ


「「「…………。」」」



ドタドタドタッ


「ちょ、やめっ」

「なんだ、押すなっ」

「やめんかい、おっ……」

「いやんっ」

「ちょっ」


ドタドタドタッ

ズシャーーーーッ!


一部の陣形が崩れたようで……敵が雪崩のように崩れてきて、火の明かりが届く場所に姿がさらされた。敵ももちろん人型……しかし一見変わったところがある。


鋭くとがった一本の角が、でこのあたりから伸びている。それは白くて、火の明かりに当たってか美しく輝いている。各々がゆっくりと立ち上がり始めた。目や髪の色は様々なため、奴等はパット見……欧米の鬼。


「っしゃあ、来いや!」

「一切容赦しません」

「いざというときは消える」


いきなり逃亡宣言!?ふぅ、まあいいや。気を引き締めろ、俺。これから戦うのは俺を殺しに来る敵。油断してはいけない。この世界は弱肉強食。殺らなきゃ殺られる。


背中はとりあえず二人に任せて、俺はじっと雪崩れてきた敵を見る。敵はもう完全に立ち上がり、低い姿勢でこっちを睨んでいる。


……来るかっ!……


しばしの沈黙の後、一人がゆっくりと口を開く。


「……火……」


それからは、


「火だ!火だぁああ!!!」

「おい、そこのやつらもみんな出てこいよ!お前らだけ隠れてずる……」

「もう、帰りたいぃ」

「お前、絶対逃げんなよ!」

「お前もなぁ!?ぜっったい逃げんなよ」

「あ、やべ。武器どこだ?」

「早く、出てこい!森のなかにいるやつ!」

「嫌に決まってんじゃん!」

「いやんっ」

「俺、死ぬ」

「早まるな!たかが火だ!!」

「たかが火、されど火。」

「誰だ今の!うるせぇ!!」

「とりあえず火のないところにまで退避しませんか」

「だめじゃ!ここで逃げたらわしらの負けになる!!」

「俺らは負けない!火以外には!」

「あ、武器あった……違う、骨の残りかすだ」

「あぁあ、押すなってばぁぁあ!!」



………………もう、帰れ。






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