プロローグ -始まりはいつも突然に-(4)
話をしていたら、腹が減ったと思いの外訴えるから俺は飯の準備をする。
‥なんで俺がやってるんだか。
茶碗の場所を聞いて机の上に飯を並べていく。彼女、‥和城は律儀にも手を合わせてからご飯を食べ始めた。その時の幸せそうな顔ときたら‥。その辺の男ならコロッと落とせそうなほどだと思った。
が、それもつかの間、飯を食べながら話をしようと思ったのに、和城はもう飯しか見えていないようで、俺の話には相槌を打つだけ。肉じゃがに釘付けだ。俺は肉じゃがを取り上げて和城を怒ると、和城から思いもしない言葉が返ってきた。
「ちゃんと考えてますよ。ここに住めばいいじゃないですか」
「……‥は?」
こいつ何言ってんだ。
俺は思わず自分の耳とこいつの正気を疑った。
なのに和城は俺の手中にあった肉じゃがが手に入ると満面の笑みで咀嚼していた。
「お前自分が言ってることわかってんのか!?」
あまりにもへらへらしている和城に俺は怒鳴るとまではいかなかったものの、思わず大きな声で怒ってしまった。仕事柄、誰かを怒鳴りつけるなどはしないものの、怒ると大抵の女は泣いてしまうためマズイと思って慌ててフォローしようとした。が、
「わかってますよー。いいじゃないですか、別に。ここ幸か不幸か知らないですけど2DKだから1部屋余ってるし。まぁだからルームシェアなんてするんですけど」
和城はそれすらも臆することなくへらへらと俺に言った。
「だからって、」
あまりにも平然としてるから、俺は怒っているのに、少しだけ全く動じない和城に焦った。なんだかこのままいけば、まるっと丸め込まれるかもしれない。
「お前本気で言ってんのか」
「本気とかいてマジですね」
「ふざけてんじゃねぇ」
「大真面目ですよ、これでも」
「お前のどこが真面目だ!?さっきから飯しか食ってねぇし、飯のことしか頭にないだろうが!?」
「まぁ否定はしませんけど」
「そこは頼むから否定してくれ」
「って言われても」
「お前自分が女だってわかってんだろ?」
「そりゃあまぁこの身体で20年生きてますから」
こいつ今何て言った?20?20歳って言ったか?どっかの不良校のバカ生徒とかじゃなくて?
「お前いくつって言った?」
俺は確認のためにもう一度和城に聞く。和城は面倒くさそうに少しだけ細かく教えてくれた。そして唖然とする俺にいたずらっぽく笑って「老けて見えました?」と言った。その笑顔にドキリと胸が高鳴ってしまった自分に俺は頭を抱えたくなった。
「‥やっぱりルームシェアは無理だ」
「やっぱりって、さっきから1度も首を縦になんか振ってないじゃないですか」
揚げ足とりやがった、こいつ。
「さっきは仕方ないかなとは思った。でもやっぱりダメ」
「なにがダメなんですか」
むぅと膨れるが、和城は意味を分かって言っているのだろうか。ルームシェアとは言え、相手は男だぞ?もしかしたらってことがないわけじゃないのに、なんでこいつはこんな余裕でいられるんだ?普通
焦るのって女の方がないのか。
「別にルームシェアなんだからいいじゃないですか。学校とか一緒だったらまだしも菜月さん社会人みたいだし、歳も違うからばれたってどうってことないでしょ」
最悪、いとこのお兄ちゃんで話は通るとでも思ってるんだろうな、こいつ楽天家っぽいし。
「とにかく!お前とルームシェアはできない」
「そんなこと言われても私もう菜月さんに胃袋掴まれちゃったし」
「‥は?」
「菜月さんのご飯すっごい美味しいんですもん」
「そんなの知るか!」
そういうことを言ってるんじゃない。和城と言い合いをしながら俺は考えた。
…高校生なら、ひとまわりくらい年下だから変な気も起こさないだろうし、恋愛対象としては見ることはないと言いきれた。
でもだ。それが大学生って…。正直言いきれない。しかもついさっき不覚にも俺はこいつに胸を高鳴らせた。同じ家で暮らすのは、ダメだと思った。
「‥じゃあ聞きますけど、」
和城はへの字に曲げていた口を動かして俺を睨む、というか見上げて言葉を続ける。
「菜月さん今すぐここを出てどこか行く当てあるんですか?」
「‥それは、」
無い。
いたいところを突かれた。和城はそらみろと言わんばかりに俺を見てくる。
「だったらここに住むしかないじゃないですか」
「‥ネットカフェにでも泊まれば済む話だろ」
かなり金の無駄だがそれしか方法はない。寝れるかどうかも怪しいが仕方ないだろう。
「何日そこで過ごすつもりですか」
「は?」
「そんな簡単に家が見つかるわけないでしょ。今春だよ?部屋が空いたら即行で埋まるっての」
和城は机に頬杖をつきながら俺にそういってのける。さっきから思っていたが、こいつかなり口悪いんじゃないか?なんか居酒屋で酒癖の悪いオッサンに絡まれてる気分なんだが。
まぁ言ってることは正論すぎるんだが。
「だったら家が見つかるまでの間でもここにいればいいじゃない」
そうすればご飯食べれるし、と付け加えた和城は何を想像したのかすごく幸せそうな顔をした。
「家が見つかるまでって、」
「それに、私どこに就職するかわかんないし、この近くでない限りここに住み続けないから。2年もしたら私がここからどくと思うし」
和城はまた、いたずらっ子ぽく笑う。やはり、その笑顔に俺はドキリとした。まずい、なんて思いながら、俺は和城の提案を呑むしかなかった。
菜月 千晶
性別:男
年齢:今年28歳
誕生日:10月3日
血液型;O型
高校の学校教師をしているイケメン。担当教科は数学。
炊事、洗濯、掃除、どれをとってもほぼ完ぺきにこなす。いつ主夫になってもオッケーな人。
千晶の性格の方向性ちょっと迷ってます‥
やっぱり俺様かなー。でも紳士なのもいい‥うーん、落ち着いた大人ってのは今更か(笑)
千晶君、どんなキャラがいいですかね(゜゜)?