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1/2の確率  作者: ゆきうさぎ
<0章>
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プロローグ -始まりはいつも突然に-(2)

どうすればいい?という疑問をかかげてからどれだけか経った。バイトをして帰ってきた私にとって、今は正直考えることよりも食べることを考えたい。さっきからお腹の虫がうるさいのだ。


「お前考えてないだろ」

「いや考えてますよ?今晩何食べようかなって」

「‥あのな、」

「仕方ないじゃないですか。こっちは朝から昼ごはん抜きでバイトしてくたくたでお腹空いてるんですから。聞こえません?私の腹の虫の音。もう限界なんですってば」


男、それもイケメンに向かって、自分の腹の虫の音が聞こえたかなんて聞く女、多分私くらいだろう。でも今はそんなことよりもご飯が食べたい。空腹で死ぬ。


「‥もうすぐ出来るから待て」


菜月さんはそう言うと、さっきまでいたのだろうキッチンに戻ると、コンロの火をつけた。しばらくするといい匂いがしてきて、目の前の机には美味しそうな料理が並べられていく。


「茶碗はどこにある?」

「お茶碗ですか?右の棚の一番下にあります」

「そうか」


菜月さんはお茶碗を取り出して、ご飯をよそって2人分を机に置いた。だいたいのものが揃ったところで手を合わせて一口。…うまい。え、なんでこんなうまいの。独身だと(勝手な思い込み)料理ってこんなにもうまくなるの。


「なんだ?」

「いや、料理上手なんだなーと思って」

「別に。一人暮らしが長いと料理もできるようになる」


いやそんなことないと思う。大学の男友達とかもう2年は一人暮らししてるけど家事とか全くできないし。いつ見てもこの世のものとは思えない謎の物体が出てくるし。


「‥とりあえずどーするか、だな」

「ですねー」


と、相槌を打ちながら、ほくほくの肉じゃがをパクリ。ああ、うまい。なんて幸せ。


「話する気あるか?」

「そりゃあもう存分に」


ある、と言い切る前に肉じゃがをつまもうとしたら、ひょいと肉じゃがが遠のいた。


「あ、ひどい」

「考えないからだろ」

「ちゃんと考えてますよ。ここに住めばいいじゃないですか」

「……‥は?」

「お、届いた!」


菜月さんの手中にあった肉じゃがにはしを入れて、煮崩れ寸前のジャガイモを口の中に頬張る。もう、最高。


「お前自分が言ってることわかってんのか!?」


菜月さんはここにきて初めて怒鳴るとまではいかないものの、怒るという感情を見せた。それを平然と見ながら、私は大皿に乗っていたピーマンの肉詰めを咀嚼する。


「わかってますよー。いいじゃないですか、別に。ここ幸か不幸か知らないですけど2DKだから1部屋余ってるし。まぁだからルームシェアなんてするんですけど」

「だからって、」


菜月さんは私の言葉に怒ってるのに、なんだか焦っているようにも見えた。


「お前本気で言ってんのか」

「本気とかいてマジですね」

「ふざけてんじゃねぇ」

「大真面目ですよ、これでも」

「お前のどこが真面目だ!?さっきから飯しか食ってねぇし、飯のことしか頭にないだろうが!?」

「まぁ否定はしませんけど」


だってご飯超絶うまいんだもん。こんなうまい料理食べたの久しぶりなんだってば。最近お母さん何も送ってきてくれないし。


「そこは頼むから否定してくれ」

「って言われても」

「お前自分が女だってわかってんだろ?」

「そりゃあまぁこの身体で20年生きてますから」


身の丈ってやつはわきまえてますよ、はい。ずずーっとお茶を飲みながらひとり頷いていたら、菜月さんは私を凝視していてかたまっていた。‥私変なことした?あ、お茶すすったのがダメだった?


「お前いくつって言った?」

「20です。あ、でも今年で21歳ですよ」

「…マジかよ」

「もっと老けてると思ってました?」


あ、でも学生かってさっき聞いてきたし、だいたいの察しはついてたんじゃないのかな。


「‥やっぱりルームシェアは無理だ」

「やっぱりって、さっきから1度も首を縦になんか振ってないじゃないですか」


いじけるように見て言えば、うっと言葉をつまらせた菜月さんはさっきみたいに頭をわしゃわしゃとかいた。ツンツンの髪のせいか、くしゃってしてもそんなに乱れてはいなかった。それにしても、わしゃわしゃする仕草がすごっく似合うなぁ‥。


「さっきは仕方ないかなとは思った。でもやっぱりダメ」

「なにがダメなんですか」


年齢?しかないか。さっき私の年齢を聞いてダメって言いだしたんだし。ていうかそれってふつうに失礼じゃないか?

菜月さんは私の質問に答えることなく、視線を私から外す。まるでもう話すことはないとでも言うように。

‥いやいや、話すことありますから!


「別にルームシェアなんだからいいじゃないですか。学校とか一緒だったらまだしも菜月さん社会人みたいだし、歳も違うからばれたってどうってことないでしょ」


最悪、いとこのお兄ちゃんで話は通ると思うし。全然、全っ然、似てないけど。


「とにかく!お前とルームシェアはできない」

「そんなこと言われても私もう菜月さんに胃袋掴まれちゃったし」

「‥は?」

「菜月さんのご飯すっごい美味しいんですもん」


もう感激です。ヒデキ感激っ!ってやつです。肉じゃがの味付けと言い、煮崩れ具合といい、ご飯のお米の硬さと言い、すべてが私好みです!

もう胃袋掴まれたどころか鷲掴みされちゃってます、えへ。


「そんなの知るか!」

「知るかって言われても掴まれちゃったものは仕方ないじゃないですかー」

「お前は飯のことしか頭にないのか!?」

「ハハー、5割ご飯、5割睡眠ですかねー」

「そんなことは聞いてない!」


え、聞いたじゃないですか。ご飯のことしか頭にないのかって。あれ、違う?






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