第一話 一匹の犬と一人の飼い主
いい天気だ。爽やかな陽気が鼻腔をくすぐる。
ぐぐぐ・・と伸びをする、僕は犬だ。犬。
これは犬、僕とその他もろもろの話である。
散歩、行きたい。
ねえ、こんなに天気良いんだよ。
犬の気持ちはえらく熟睡中の飼い主には届かないよう。窓をのんびり覗いている僕に気づいた、近所の親切なおばさんが
「あら、 早川さんのわんちゃん。散歩に行きたいねえ」
分かる?行きたいよ。
だけど、えらく熟睡中の飼い主には届かない。
はぁあ。
犬は静かに伏せる。晴天の下の家で、犬は飼い主の起床を待っていた。
ジリリリリリリリリリリリリ!
バンッ!
あ、飼い主起きた。
階段の下。犬は二階にある飼い主の部屋の方を見上げた。
だけど悲しいかな。犬はこれくらいじゃ飼い主が起きないのを知っている。
犬には時計は見えないけれど、でも飼い主の早川さん。いつも寝坊さんの小学生、町村君は学校に走って行ったよ。
散歩、無しかなぁ。
犬はまた静かに伏せる。
ジリりりりりりりりりり!
目覚まし時計はどうやらスヌーズ付き。
そんなことは犬は知らないが。
「う・・・ふぁあ。朝ぁ?」
飼い主早川の寝惚けた声。やっと起きた。
待ち疲れたよ、僕は。
犬は大きな欠伸をして起き上がる。
飼い主早川はお腹を掻きながらゆっくり階段を下りてきた。
「おっはよ~モク。」
僕の名前はモクである。飼い主早川はだらだらと朝ごはんを作り始めた。
僕の分と自分の分。
そういえば、朝ごはんまだだったな僕。
「はいっ!」
早川は皿を僕の前に置いた。
言いたくないけど、ドッグフード飽きちゃったよ。仕方がないから食べるけど。
もぐもぐ。もぐもぐ。もぐもぐ・・・ん?
クンクン。なんかいいにおい。
飼い主いいもの食べてるなあ。ウィンナー、たべたいなぁ。
犬の言葉は飼い主には通じず。早川はけろりと食べ終わる。
「散歩行くか?モク」
待ってたよその言葉。
「・・・ん。ちょっと・・・トイレ・・」
飼い主早川はお腹を抱えてトイレ。
ピーンポーン。
あ。お客。
どうしよ。トイレだよ。
「俊くーん!いないのぉー?」
あ。この声。
「鍵開いてる。入るよ?」
この人、飼い主早川のカノジョ、とやらだ。
「モク君!俊くんどこ行っちゃった?」
トイレだよ。
ジャーーーー。
あ。終わったみたい。
「あ・・唯。」
飼い主、顔青い。
不調なのかな、腸。
大腸あたり。
「俊。デートじゃん今日」
「あ」
あ って。
忘れてたな早川。
寝坊してたし、今から散歩行こうとしてたもんね。
「忘れてた。ごめん」
「えーっ!?ひどい!」
ごもっとも。ひどい。
でも飼い主早川の顔は涼しげ。
「ごめん。じゃあ一緒に散歩行こ?」
全然じゃあ、には繋がらないけど。
「なにそれ。さんぽ?反省してる?」
「してるよ?唯も愛してるよ?」
してないよ、飼い主早川。
顔だけはいい飼い主早川。
僕が飼われて二年。
何度カノジョが出来て何度いなくなったことか。
「もう。・・分かったよ。散歩行く。私も俊好きだし」
結局こうなる。
ラブラブだね。僕は去勢手術されて恋も出来ないけど。
「でも来週の日曜日はデートね?」
「その日はちょっと・・」
「え?なんで」
「モクとドライブ♪」
「私とのドライブは?」
「あ」
またカノジョ燃えてる。
飼い主早川、僕のが優先みたい。ドライブ楽しみだなあ。
でもカノジョとは危ないかもよ?
飼い主早川さん。
こんにちは!夕空です!
初めての投稿で落ち着かない、おぼつかない
ところが数々出現します(笑)
よろしくお願いします。