第7話:ナンパに行こう。3
「更に続編っ!?」
ありえない事態に戦慄しながら、横を歩くゴミ…。ボロボロになっている誠に目を向ける。
「当たり前だ。まだ、お前は何もしていない。」
「誠の放置プレイなら、嫌になる程味わったがな。」
誠の行為を思いだし、頭が痛くなる。
「失敬なっ!?あれは、れっきとした逆ナン待ちだったのだぞ。」
…ナンパの極意じゃなく、逆ナンだったのかよ。
「俺には変質者にしか見えんかったけどな。」
「ふん。貴様の目はふし穴か?俺を見つめていた幾人ものギャルの熱い眼差しが見えなかったのか!?」
「あまりのショックで立ちすくんでただけだよっ!…大体、誰も寄ってこなかったじゃないか。」
「照れやなベイビー達だったんだよ。」
「…殺してぇ。」
コイツの頭の中身はスッカラカンに決まってる。
「この間、カランコロンと鳴っていたから空ではないぞ。」
「おいっ!?」
…冗談に聞こえないんだが。
「とにかく、次はお前だ!」
そう言い放つと、前方を歩くかなり小柄な女の子を指差す。
「アレを行け。」
「…って、アレはうちの中等部の制服じゃないかっ!?しかも、あんな小柄な子を?ガキだぞっ!!」
「愛に年は関係ないっ!」
「愛してないし…。」
「ぬぅ。煮え切らん奴め!あえて難易度が低そうな子にしてやってるんではないかっ!ゴチャゴチャ言わず行かないと、写真ばらまくぞっ!」
…おのれぇ!
「仕方ない。…すればいいんだろ?」
「うむ。ちなみに、死して屍拾う者無しだっ!!」
「うるさいわっ!!」
誠の暖かい(?)激励を浴び、女の子に向かうも、
…どうすりゃ良いんだよ?
誠の手本はまったく使えんしな。
(ええい!仕方ない。適当にするか。)
入れたくもない気合いを入れ、心を決めて声をかける。
「ちょっと君!何してんの?暇なら俺と…。」
「はい?」
最後まで言わずに、振り返った彼女を見て、俺は気が遠くなった。
「な、な、何してんだぁーー!!!」
「何って…。薫くんにナンパ?」
…最悪だ。織姫と気付かなかった。
「薫くんも、ナンパするんだー?よくするの?いけないんだぁ。」
「ち…違うぞっ!織姫っ!今初めてしたんだっ!!」
しかも無理矢理なっ。
「あ〜ん。初めての人を織姫にしてくれたんだぁ☆」
体を自分で抱きしめながら、クネクネとダンスをしている我が妹。
「でも、乙姫ちゃんや月姫ちゃんと違って、本当の兄妹なのよっ!いけないわっ!!」
「いや、…ちょっと織姫?」
なんか盛り上がってきてるぞ。
「コイツは、織姫くんと知って声をかけたんだっ!!」
様子を見てた誠が、いらん事を宣う。
…コイツ織姫と気付いてたな。
「…本当?薫くん?」
…なぜ、瞳を潤ませる。
「うむっ!愛があれば、年の差も血も越えられると力説していたしなっ!」
「捏造だぁーっ!」
「前半部分は本当だろう。」
「貴様が言ったんだろがぁーーっ!!」
俺の魂の叫びは、まったく織姫には届いてない様子で、俺を見つめ言い放つ。
「…本当は知ってたわ。」
「何がだよっ!」
「薫くんが、織姫に淡い恋心と激しい劣情を覚えていることをっ!!」
「なんでやねんっ!?」
「バレてたみたいだな?照れるな御子柴。」
「違うわいっ!!」
「恥ずかしがらなくていいのよっ薫くんっ?織姫嬉しいっ!!」
これはあれか?デートをしなかった復讐か?
「…ふっ。両想いではないか御子柴。」
「話しを聞けぇーーっ!!」
「聞いてるわ、薫くんっ!織姫もホントは愛さえあれば、オールOKよっ!!」
もはや、ピンクの思考に染まった織姫には、何を言っても届かない。
目をギラつかせて、鼻息荒くにじり寄ってくる織姫に、俺は滝のように流れる冷や汗を拭いながら、後退る。
「待てっ。落ち着けっ。」
「さぁ薫くんっ!!二人で桃源郷に旅立つのよっ!!」
「お前は月姫かぁーーっ!!」
飛び掛かる織姫から逃げ惑いつつも着実に、俺の服を剥ぎ取っていく。
「キャーーッ!!やめてぇーーっ!!!」
俺の悲鳴が街に響き渡る中、誠は呑気に笑いかけてくるのであった。
「カップルさん。ホテルは逆方向だぞぉ。」




