第5話:ナンパに行こう。1
「出番だぁ〜っ!!」
…また、始まったな。
退屈な授業がやっと終わり、帰宅準備をしていると叫び声をあげながら、こちらに突進してくる馬鹿が一匹。
「やっと、俺の出番がギャファッ!?」
とりあえず、鉄板入りの鞄の角を突っ込んでくる馬鹿の頭に突っ込む。
「…突っ込む×2とは…中々腕をあげたな。」
ダラダラと頭から血を流しながら、どことなく満足気な誠。
…血が緑色なのは気のせいだよな?
「それより…。やっと俺の出番が来たのだっ!遅いぞ作者っ!!」
俺の心配気な視線をよそに、会話を続けていく。
「よって、初回の俺達の会話の続きをするっ!!」
訳のわからん言葉に戸惑いつつ先を促してやる。
「…で?」
「うむ。この学校の女は、俺の魅力に気付かない愚か者ばかりだ!」
…気付いてるから、近寄らないんだよ。
俺の憐れみの視線を、己を讃える熱い視線と勘違いをしたのか勢いを増し叫ぶ。
「よって…。今日はナンパをするのだぁーーーっ!!!」
ザッパ〜ンッ!!
何処から持ってきたのか、波飛沫の絵をバックに、ラジカセで音を出している。
「うむ。…ナイスタイミングだったな。」
満足気な顔をしながら、イソイソとかたずけていく。
…何処にかたずけるんだ?
誠の怪しげな行動には、毎度毎度疲れ果てる。
「じゃ、行ってらっしゃい。」
奴が、小道具をかたずける隙に去ろう。
「親友〜!俺達は二人で一人だろぉっ!!」
すかさず縋り付く誠にヒジ打ちをくらわるが、ビクともしやがらねぇ。
「ええいっ!しがみつくなっ!暑苦しいっ!!」
「うぬぅっ!良いのか?これをばらまくぞっ?」
奴が何かを取り出し、見せくる。
「…ぶっっ!?」
思わず噴き出してしまった。
「貴様…。いつの間に!?」
俺と月姫が写っている写真。
ただの写真なら良いのだが、写り方が非常にマズイっ!
「うむ。この間、屋上でお前が押し倒されているときにな。月姫くんに撮るよう指示をされていて。」
…あいつぅ。
脅しのネタにするつもりだったな?
ご丁寧に、写真には字が書かれてある。
《禁断の兄妹愛・屋上での蜜月》
…おいっ。
文字の内容にのけ反りながらも、いつか復讐する事を誓う。
…100%返り討ちだな。
己の無力さが恨めしい。
あいつら以外なら負けないんだけどなぁ…。
同じ武術家でも、あの三姉妹とはレベルがな…。
…諦めるか…。
「…わかった。行くよ。」
「うむ。信じていたぞ。アミーゴッ!」
「やかましいわっ!!」
心の中で盛大に溜息をつきながら、街へと繰り出すのだった。
「…続くのかっ!?」




