第43話:少女達の恋。その6
「ふざけないでっ!!」
私は今猛烈に怒ってる。原因は目の前の彼。
「何がだよ?織姫?」
「あんたに呼び捨てにされる覚えはないんだからっ。セクハラよっ」
同じクラスの男の子。彼が薫くんを馬鹿にしたの。
「呼び捨てにして良いのは、愛しいオニイサマだけかよ……」
どこか拗ねた感じで言う彼。だけどそんなの知った事じゃない。
「大体何が、薫くんだよ?馬鹿じゃねぇの?」
「……ッ!?」
また言ったっ!許せないっ!
「兄弟でさ。お前の兄貴変態じゃねぇ……」
パンッ!!
響き渡る破裂音。彼が最後まで言う前に、織姫はひっぱたいてやった。だって許せないもん。
「なっ何しやがるっ!?」
彼も周りも唖然としている中、彼に向けて
「あんた馬鹿?」
「……ッ!?」
あっ顔が引き攣ってる。
「…あんたこの間、織姫にフラれたのが気に食わないんでしょ?」
「………」
やっぱり図星みたいね。
「で?織姫の大切な人をけなして……あんたに惚れるとでも?」
馬鹿じゃない?そう続け思う。まるで子供の癇癪。好きな人を馬鹿にされて許されるわけないのに。
「でもっ!兄弟だろっ?」
「だから?」
彼の切り返しに即答で返すと
「好きになるのにそれが関係あるの?」
「関係あるだろっ」
ただ叫ぶだけの彼。分からず屋ね。はあ−−軽く溜息をつくと
「ないわ。悪い事じゃないもん」
話しを続けていく。ホントは顔も見たくないんだけど、いい機会だし周りの子達に聞こえるように、声を大きくし話すことにする。
「織姫は別に悪い事してないもん。ただ好きなだけ…。人を好きになることがいけない事?」
「……でもっ」
「でもじゃない。兄弟だからなんなの?別にあなたに文句言われる必要ないもん。好きになる事は悪い事じゃない。それを受け入れるかは相手次第だけどね」
「………」
ん?ダンマリになってきた。
「少なくても…相手をおとしめるようなあなたより、よっぽどマシな恋愛してるわ。それに…」
無理矢理、怒りを鎮め彼に畳み掛ける。織姫の想いを
「普通兄弟がありえないなら……そのありえない相手を好きになるくらい薫くんは魅力的だと言う事よっ」
少なくともあんたよりはね?と続けて言う織姫に、周りは神妙に聴き入っている。
「以上っ。なんか文句ある?言い返せる?」
もっとも、なんか言ってきたところで気にしないけどね。
口をパクパクして必死に言葉を探してるみたいだけど……自分勝手なお子様には、自分をきちんと持ってない彼に言える台詞はないみたい。
「わかったら二度とくだらない事言わないで。じゃないとあんた一生彼女出来ないわよ?」
自分勝手な想いをぶつける限りはね。
大体厳しい恋愛しているのは言われなくてもわかっているんだから。それでも曲げない負けないっ。織姫は純粋に薫くんを想ってるから。
様子を見ていた彼の友人が、教室から彼を連れ出していく。途中ちらっと織姫を見たけど、視線なんかあわしてやらない。
「織姫の気持ちは、薫くんにしか向かないんだから……」
そう呟くと近付いてきた友達に笑顔を見せて、暗い雰囲気を払拭するかのように勢いよく話始めた。
愛は人それぞれ。愛する事自体は素晴らしい事です。ただ方向性を間違わなければ。好きになると結構自分勝手になってしまうもんですがね。若いときは特に。




