第34話:共犯者・御子柴薫。
「勇者様っ!お逢いしとうございましたっ!」
そう言うと目の前に立つお姉さん。ガラス窓を割って入ったせいか、頭からドクドク血が流れている。
「……窓弁償、土足厳禁」
「そんなっ。やっと会えたのに冷たいお言葉」
取りあえず怪我の事は無視して言う俺に、ヨヨヨと泣きまねをしやがります。
「貴方が二階堂くんのお姉さん?」
「全然似てないね?」
そう感想を漏らす我が妹達。てか、ツッコム所はそこではないぞ?不法侵入者だぞ?
内心でささやかなツッコミを入れていると、お姉さんはいきなり爆弾投下な言葉を吐きやがりました。
「貴女達が、勇者様に近付く牝豚どもね?」
「ななな何て事をっ!?」
馬鹿かコイツわっ!?…いや確認するまでもなく馬鹿だったんだ。
「なんですって?」
「年増が何か言ってるね?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ。
キャーっ!?家が揺れてるっ!?マグニチュード8だぁっ!。
「サカリのついた牝豚と言ったのです。ぺっ」
唾をはくまねをしながらお姉さんは言う。もう死んだな…多分俺が。今までのオチからして最後は俺にくるし。
「ババァ…」
「棺桶に更に近づきたいの?」
「発情気の牝は大人しくそこらの犬と戯れてなさいな?」
睨み合い罵り合う彼女達。それと同時にドーンと床が抜ける音がした。
(家が潰れる…家なき子になってしまう)
あまりの恐怖にどうでも良い事を思ってしまう俺。 しかし、ここは長男として何とかしなければならん。
「おおお落ち着け」
…俺が落ち着かなあかんやん。
「ちょっとお姉さんっ」
「犬と呼んでください。ご主人様」
「……………」
「豚でも可ですっ!」
ビッと親指をたてナイススマイル。いやなんかもう…死にたいなぁ。
「…じゃあ静香さん」
「…ちっ」
なんだよ、ちって。
「呼び捨てで構いません。薫様」
「あーもうどうでもいいや。なんでここにいる?」
チラッと妹達を見ながら聞く。おー顔が阿修羅だ。
「正妻の座をつかむためです」
「帰ってください」
「そんなご無体なっ!?」
そんな泣きまねしても無理です。今まで散々騙されてきたからな。
「振られたんだから帰りなさいよ」
「年寄りはピップエレキバンとでも戯れてたら?」
あおるなよ…。静香さんが暴走するだろーが。
「ふっ。可哀相に薫様。この牝豚達に脅されてますのね?」
「ある意味そうだな」
「「なんですってぇっ!?」」
ひいぁっ!?しまったぁっ!?つい本音がポロリとっ!!
焦るその時、ヒュンッと何かが俺の頬をかすめ、さわると血が。
「なんじゃコリャーっ!?」
思わず往年の名台詞を叫ぶ俺。見やると月姫が拳をこちらに向けたままのポーズ。拳からは摩擦熱からでた煙が。
(マッハパンチだっ!?)
あまりの速さに拳から衝撃波を出しやがったっ!!
「その年増と共に、お兄ちゃんにも教育が必要みたいね?」
「教育って言うか躾?むしろ調教かな薫くん?」
「すんませんでしたぁーーっ!!」
叫びと共に土下座。頭を床に何度も打ち付け誤り倒す俺。今なら世界土下座選手権一位になれるぞっ。
「薫様…。大丈夫です。私がこの小娘達を成敗致しますから」
「お願いですから喧嘩売らないでください」
涙を流しながらお願いする俺。…プライドのかけらもありません。
「「望む所よっ!!」」
あーダメだぁーっ!今日こそマジで死んだぁーっ!!
先立つ不幸を絶望感いっぱいの俺は、もはやこれまでと離れて暮らす両親に、心の中で詫びていると、やはりと言うかなんと言うか…。奴の声が聞こえて来た。まさにお約束。
「あーテステスッ。犯人につぐ。君達は完全に包囲されている」
お姉さん最高!まさかここまで使いやすいとわっ。二階堂姉弟は使いやすくて助かります。




