第32話:伝説の勇者様。その4
「今なんと?」
誠が歌った内容に耳を疑う俺。
「姉だと言ったのだ」
「結局貴様がらみかぁーーっ!!」
「叫ぶな。ご近所に迷惑がかかるだろう」
「お前の存在が多大な迷惑をかけてんねんっ!!」
何なんだよもうっ。この馬鹿の姉かよっ。…なんか納得してしまうなぁ。
「勇者様っ!今すぐこの魔王をってきぁあっ!?」
お姉さんの呼び掛けを遮るかの様に体に縄がしばりつく。
「絶技。薫恥ずかし固め改」
「変なネーミングつけんな!ぼけーっ!」
「薫ちゃん捕縛用に編み出した48手の一つなの」
「花音に教えてただろっ!?」
そのせいで以前貞操危機に見舞われたんだぞ!?
愚痴りながらお姉さんを見遣ると、そりゃーもう文章じゃ表現できんエロエロな…。俺にあれをしようとしたのか?
「ああ。なんか擦れます☆」
「ナニモイウジャネー」
ご近所の皆様方からの白い目線が痛いっすよ?
「…ようはお前達の兄弟喧嘩に巻き込まれたんだな?」
うっすらと殺意が芽生えちゃうぞ?コラ。
「この女が迷惑かけたな。」
「お前もな。大体何で俺を知ってる?」
俺はお姉さんを知らなかったのに。
「うむ。それは貴様の隠し撮り写真をコヤツに見せていたからだ」
「………今なんと?」
「貴様の恥部を見せていたのだよ」
「死にさらせぇーーっ!!」
渾身の一撃を見舞う。おーきりきり舞いだ。
「痛いじゃないか。」
知るかボケ。
「薫ちゃんの隠し撮り写真見せてたの?どんな?」
「トイレシーン・脱衣シーン・一人遊びシーンだ」
「あー欲しい!」
「では、一枚2000円で」
「馬鹿言うんじゃねーーっ!!」
頼むから勘弁してくださいっ!一体俺が何をしたっ!?
「勇者様のその悶える姿…素敵です」
「黙れ変態!」
「言葉責めっ!?ならもっと過激に…」
「なんでやねんっ!!」
駄目だ…。二階堂姉オソルベシ。
「で。喧嘩の原因は?」
「はい…。私が精魂込めて制作した勇者様の1/1フィギアを花音さんとやらに売ったと言うので。薫様萌の敵!魔王ですっ!」
「あれを作ったんは貴様かぁーーっ!!」
めちゃくちゃ恥ずかしい思いをしたんだぞっ!!なんて奴だっ。大体薫萌って。やはり誠と同じ思考を。
「せっかく、前世みたいにご主人様プレイをしようとしたのに…。次は私が女王様で。萌萌です」
「もう何も言うなぁーーっ!!」
涙が出ちゃう。
「薫ちゃんの等身大フィギアっ!?花音ちゃんから強奪しなきゃっ!!」
「おい」
「じゃね?薫ちゃん!」
キーンとアラレちゃんばりのスピードで走り去る乙姫。……死にたくなりますな。
「…俺も帰る。てか帰らしてください」
「ご主人様っ!?次は無期限放置プレイっ!?」
ナニモキコエマセン。キキタクナイ。
胃に穴が開きそうなので、馬鹿姉弟を置き去りに足早に立ち去ろうとしたその時、俺に凄まじい衝撃が襲って来た。
「ぐっ……!?誠!?」
薄れ行く意識の中で、誠がなにか歌っているのが聞こえた。すげームカつく内容の。いつか殺してやる!
「意味はないけれどっムシャクシャしたからぁ〜御子柴の頭を殴ってみた♪カッキーンっ!」
二階堂姉の名前はとくに考えてません。てか誠に姉がいたのかぁ…。知らなかった(笑)




