第20話:少女の想い。
「………っ!?」
あまりの衝撃に言葉がでない。花音は月姫達みたいに冗談でこんな事を言ったりはしない。ぎこちなく顔を周りに向けると姉妹達も固まってしまっているのがわかる。
「私は、薫を愛しているわ。私を抱いてほしいの」
もう一度花音が告げてくる。その顔は真剣だ。
「「「何を言ってるのよっ!?」」」
繰り返される言葉に呪縛が解けたのか、見事にハモらして悲鳴にも似た叫び声をあげる彼女達に俺は思わず頷いてしまう。
確かにその通りだ。いくら何でも、久々に会った人間に、しかもこれから世話になる初対面の彼女達がいる前で言う台詞ではない。
「何って、聞いたそのままよ。愛の告白。」
「いきなり抱いてだなんてっ!」
さすがに我慢できないのか乙女は非難めいた口調で責めるのだが
「あら?貴女達も似たようなことを言った事あるでしょう?」
「………っ!?」
「図星みたいね?」
花音のかまかけに、見事に引っ掛かり沈黙する。
「…このままじゃなんか私、嫌な女になるわね」
軽く溜息をつき、
「でもね。薫が欲しいのっ」
「……」
「ずっと側にいた人が急にいなくなる不安わかる?連絡先も行き先もわからない。…やっと逢えたと思ったら綺麗な年頃の女の子達と一緒に住んでいるなんてっ!」
今だ沈黙している俺達に花音は口調は段々熱くなっていく。
「…ホントはね、いきなり抱いてなんて言うつもりなかった。でも不安なのよっ!」
「花音…」
「私達は、3年ブランクがあっても10年以上共に過ごした幼なじみ。そこいらの恋人や夫婦より余程お互いを知ってるわ。…知らないのはSexだけ。貴方の温もりを私の物にしたいの」
言葉が出ない。花音は真剣だ。
「お互いの存在を今以上に結び付きある物にしたいの。心にも体にも刻み付けたいの」
こんな展開になるなんて思ってもみなかった…。ただ逢えただけで俺は満足してしまってたのに。
「くすっ。」
思い悩む俺達の沈黙を打ち破るかのように花音が軽く笑う。
「?」
「なんてね?」
「…はぁっ!?」
「あははっ何似合わない暗い顔してるのよっ」
突然の変わり様に唖然とするしかない俺に変わり、織姫が口を開く。
「花音ちゃん…今の冗談なの?」
「今のは本気よ。私の想いを素直に言っただけ」
また真剣な表情に戻り話す。
「でもね?薫を急かすつもりも困らせるつもりもないのよ。ただ、薫に私の本気を知っていて欲しかったの。それに…」
一旦区切り、乙姫・月姫・織姫と順に視線を送り、
「これは宣戦布告よ。貴女達の前で言う事により、引き返せなくするための」
(…綺麗だ)
堂々と宣言する久し振りに逢う幼なじみの姿に見とれてしまう。その俺の姿を見たのか
「わ、私だってずっと好きだったんだからっ!」
「薫ちゃんへの想いは負けてないっ」
「いくら花音ちゃんでも薫くんは譲れないのっ」
口々に姉妹達が騒ぎだす。それを楽しそうに見ながら花音は
「モテモテだね?」
と冷やかしてくる。そして困り切った俺に軽くウィンクするとこう囁いてきたのだ。
「逃がさないから…。何なら本当に今日部屋に来る?」
もう何がなんだか…。話しが上手くまとまらないっす。




