第19話:少女の告白。
「…で?説明してくれるんでしょうね?」
ここは御子柴家のリビングなのだが…。
目の前には仁王立ちした月姫。ソファーに座る俺の横には俺に腕を絡めている花音。
「な、何をでしょうか?」
冷や汗が流れていく中、乙姫と織姫を見ると、こちらは少し困った表情を浮かべているのがわかる。
「貴方達のイチャツキぶりのことよっ!」
怒ってる。そりゃもう怒髪天をつくってくらい。てか、髪がウネウネと動いてるよ。
(何故こうなったんだろう?)
月姫から放出されている闘気を肌に感じながら、記憶を掘り返してみる。
皆が揃った食卓で、改めて花音が紹介され、こちらに来た事情を説明した。
偶然にも、花音の父親と月姫達の父親が仕事先で知り合い、俺の情報を得たらしいのだ。父親からそれを聞いた花音は、皆の制止を振り切ってここに来たわけだ。ご丁寧にも月姫達の両親を味方につけて。
そして花音がこの家に来る事になったのは、昨日。乙姫が父親から連絡を受けたのだ。俺を含め知り合いがいる所に住んだ方が良いとの事で。
(なんていい加減で、早い展開なんだ。)
花音達の行動には呆れてしまう。再会出来たのは嬉しいのだけどね。
織姫は、花音に会えた事が余程嬉しかったらしく、食事中もずっとニコニコとしてたっけな?
(まぁ、それは良いんだけど…。)
食事が終わり、一服をしている時にいつもの様に月姫が俺にからんできた。それを見た花音が割り込み、今の状態に至るわけだわ。
(…俺別に悪くないやん。)
そう思うのだが、口に出せるわけもなく。…おれって弱いから。
「わ・た・し・の、お兄ちゃんから離れてくないかしら?」
こぇーっ。超こぇーよっ!なんか部屋中から、ラップ音が聞こえてるぞっ。
「ごめんなさいね?3年ぶりの再会だから、気分が高まっちゃって。」
全く悪びれた様子もなく、むしろ更に抱き着いてくる花音。
ビシィィッ!
はうっ!?ゆ、湯呑みに何故か亀裂がっ。
助けを求めもう一度、乙姫と織姫を見るが、怒りと困惑が半々みたいな表情だ。
乙姫は花音を引き受けた立場、織姫は姉とも慕う大好きな幼なじみと言う立場がある為だろう。
(てか、半分は怒ってますのね。)
ピリピリとした空気の中、どうしたものかと悩んでみるも何も思いつかん。
大体、花音はこんな事するキャラじゃないはずだが…。この3年の間に変わったのか?
うんうんと唸っていると花音が俺に向かって口を開く。
「薫…。この子、月姫ちゃんと付き合ってるの?」
ぶはっっ!!
いきなり何を言う。吹き出してしまったではないか。
「つ、付き合ってなんかねぇよっ!てか、誰とも付き合ってないっ!」
俺のその言葉に、花音は笑顔を浮かべ、月姫は顔を歪ませる。乙姫や織姫も悲しそうな顔だ。
(…何でそんな顔するんだよっ!)
いや、本当はいくら馬鹿な俺でもわかっている。わかっているけど…、まだ俺は…。
悩む俺をよそに、花音は軽く深呼吸すると、よく通る声である言葉を口にした。
そりゃあもう、核爆弾並みの破壊力のある言葉を。
「私は薫を愛しているっ。私を今日抱いてほしいの。」
ついに20部ですな。今回のタイトルは久々に文中からの引用はしてません。織姫のお誘い。以来かな?…だから何?って感じですが。