第14話:アイドルになろう!
「アイドルにならないか?」
………はぁっ!?
貴重な休日に俺を呼び出した誠は開口一番にそう言った。
「毎度の事ながら意味がわからん。」
「だからアイドルにならないかと聞いているっ。」
だから、何でそうなるんだよ。コイツの言う事はホントにわからん。
「アイドルはモテる。=彼女がワンサカできるっ。」
「あほか…。」
まだ、彼女作りを諦めてなかったのか。
「我らのルックスがあれば、売れっ子間違いなしっ!!女子からは常に熱い声援を受ける毎日だぞっ。」
(黙っていれば、日常生活でも人気はあったさ。入学当初はモテてたしな…。)
今は亡き、過去の栄光に思いを馳せる。
「なんか最後は、熱い声援を受けるんじゃなくて、痛い罵声を受けそうだけどな。」
恐らくそうなるであろう未来のビジョンを述べてやるのだが、まったく聞き耳を持たない馬鹿。
「そんな悲観した未来を見つめて楽しいのかっ!?もっと現実を見ろっ!!」
「お前が見ろよっ!」
おれはお前にツッコミをする為に呼ばれたのか?
「とにかく今からオーディションに行くのだっ!」
「ええっ!?うそっ!?」
そう叫ぶ俺を引きずって誠は歩み始めた。
……
………
……………
…来てしまった。
途中何故か目隠しをして連れてこられた俺。
(スター・○ォーズのテーマソングが聞こえたのは何故だろう?)
なつかしの、某拉致られ系電波番組の若手芸人の心境がわかった気がするなか、辺りを見渡してみる。
(マジにオーディションじゃねーかよっ!)
舞台の上に俺と誠との他に何人かたっている。
胸には番号のついたワッペン。
目の前には、審査委員らしき人達。
(いつの間に、こうなったんだ?)
俺の疑問を余所に、事は進行されていく。
(…全員まとめて審査するのかよ。)
手抜きに思われる様なオーディションにも誠のテンションは変わらない。
「見よっ。御子柴よ。我らに明るい未来を与えてくれる神様達だっ。」
「やかましいっ。人を拉致しやがって!少しは、まともな思考を持てよっ。」
「何をうっ!?」
俺達の漫才(?)を無視し、オーディションは進んでいく。
(ん?あの子は、霧島あずさじゃないか。)
審査委員ブースに座る女の子に目を惹かれる。
今を時めく人気アイドル。
透き通る様に白い肌に綺麗な顔立ち。緩やかなウェーブがかかった長い髪から覗く瞳は少し潤んでいる。。
…メチャクチャ可愛い。
彼女の人気は今や社会現象になるほどだ。
(何でいるんだろ?…まぁ彼女を生で見れただけでもラッキーだな。)
少しだけ誠に感謝していると、俺の自己紹介の番が来た。
(何を言えば良いんだろ?)
心の準備が出来てない俺の代わりに誠が口を開く。
「こいつの名前は、御子柴薫、17歳。3人いる姉妹に手を出す極悪人だ。」
「…おい。」
いきなり何を言いやがる。
「…そうなんですか?」
ああっ!人気アイドルあずさちゃんが引いてるではないかっ。
「うむ。ついたあだ名は、姉妹殺し。夜な夜な兄・弟と言う立場を利用し悪事に励む鬼畜な奴なのだっ!」
「やかましいわぁーーっ!!」
「ホントの事であろうが?この間乙姫くんとSMプレイをしていた。」
「あれは、無理矢理拘束されてたんだよっ!!」
「月姫くんとの生々しい隠し撮りが…。」
「お前達の騙し撮りだろーがっ!」
「織姫くんが、お腹を押さえて“出来ちゃった”と…」
「出来るかぁぁーーっ!!」
ハァハァ…。オーディションの場でなんと言う事をっ。
「…す、凄いんですね。」
何故か尊敬の眼差しを向けてくる美少女アイドル。
「うむ。オーディションに受かった暁には、ブラウン管の中で、兄妹役を君とし、その鬼畜ぶりが全国に放送されてファンに、袋だたきにあうだろう。」
「そんなんあかんやろがぁーーっ!!」
オーディション合格する気ないだろ?俺をイジメて楽しんでるだけだよな。
俺が心の中で誠を10回くらい殺していると、あずさちゃんが口を開いた。
「…そうゆうのも楽しいかも。」
「なんでやねんっ!」
「ん…。新しい刺激?」
「いらんわっボケェーーッ!!!」
何を言い出すんだ?このアイドルはっ。誠の親戚かっ!
「大体刺激を受けるのは俺だろうがっ!男どもからの痛い刺激をなっ!」
「あははっ上手〜。」
「ウケるなぁーっ!」
「うむ。これで合格間違いなしだ。感謝しろよ?」
「するかぁーーっ!!」
もはや何のオーディションかわからない雰囲気の中、何故か誠とあずさちゃんは意気統合し、俺をイジメていく。
血が出そうな程叫ぶ俺にあずさちゃんは言うのであった。
「優しくしてね?お兄様っ☆」
オチ弱し。単発の中では一番行数が多いかと。2話分くらいあるし。