第12話:ラブレターパニック。その3
「捕虜らしくキリキリと歩きたまえ。」
何故か偉そうに彼女に言う誠。
…お前達のアイドルじゃなかったのかよ。扱い酷いぞ?
「星野さん…。」
…ついに一般人まで巻き込みやがった。いや、今までも俺の知らない所でやっていたみたいだが。
(それにしても…)
「なんか縛り方がエロイんですけど。」
とても文章じゃ書けん。
「乙姫スペシャルなの☆」
大きな胸を反らし誇らしげに言う乙姫。
「そんなスペシャルはいらんわっ。」
…もう!こいつらはこの現状に何も思わんのかっ?
「ごめんな?星野さん。…巻き込んじゃった。」
「ううん。私が勝手に捕まっただけ。」
ああ。何て良い子なんだ。こんな目に遇いながらその言葉。
「薫君の、ヌード写真くれるって言うからつい…。」
…なんですとっ!?
「今…なんと?」
「えっ?…だから薫君のヌード写真くれるって言うから、ついてきたら捕まっちゃったの。」
「お前もソッチ側かぁーーっ!!」
しかも簡単に餌づけされやがってっ。誘拐氾に狙われても知らんぞっ。
「エエッ!?二階堂くん、ヌード写真、私も欲しいっ!?」
うるさいぞ。月姫。
「とにかく…。星野さんの縄を解いてやってくれ。痛そうだろ?」
「んー。乙姫スペシャルは、感度3倍なはずだけど?」
「なんの感度だよっ!」
「わ、私はこのままでも大丈夫だよ?」
「何で顔を赤らめながら言うっ!?」
なぜか、俯きモジモジする星野由香。
(…危険だ。よくわからんが、とにかく危険だ。)
「うむ。御子柴よ。ユーカりんは新たな境地に目覚めたのだ。ここは暖かく応援メッセージを電報で。」
「だから何の境地だよっ!しかも目の前にいるのに電報かよっ!!」
「薫くん、お子ちゃまなんだからぁ。あれはね、エス…」
「わああぁぁーーっ!!」
織姫が最後まで言う前に何とか遮る。
聞きたくない聞きたくない。まだ、子供でいたいんだっ。
「まぁこれでお兄ちゃんを惑わす悪魔は大丈夫だわ。」
「悪魔はお前達だろーがっ!」
「薫ちゃん…。星野さんは私に任せてね。」
乙姫がそう言い、由香の縄に手をかけていく。
「あぁ。お姉さまっ☆」
「戻って来いっ!星野由香ぁーーっ!!」
あかん。あいつこのままではホントに遠くに行くぞ。…コリン星くらいまで。
「さぁお兄ちゃん!星野さんに私とのラブシーンを見せ付けてあげましょう。」
「ダメだよ。薫ちゃんは今から私に縛られるんだからっ。」
「違うよ。薫くんは織姫と桃源郷に旅立つんだからっ。」
「うむ。では我が輩は全てをフィルムに収めてやろう。そしてどっかに投稿してやる。」
口々に勝手な事を言い出す奴らを尻目に俺は問う。
「結局俺にどうしろと言うんだーっ!」
悪の魔の手に襲われる覚悟が出来た俺は、今日もまた叫び声をあげる。
「もう何でも良いから、オチをつけてくれぇーーっ!!」
たった一通のラブレターから始まった、訳のわからんこのパニック。
心から涙を流す俺を潤んだ眼差しで見つめ、我らがユーカりんは言うのであった。
「これ癖になりそう。薫君。きゃっ☆」
話しのパンチが…。もうメチャクチャです。




