第0話:ぷろろ〜ぐ
「俺らって負け組?」
「…なんだよ。いきなり。」
俺が通う星光学院・2ーAの教室。いつもの様に、くだらない話しをしている昼休み。
唐突に、我が校が誇る最高の馬鹿、二ノ宮誠が、言ってきた。
「失敬なっ!俺達は二人で一人の馬鹿なんだ!…あっ、ちなみに俺が馬で、お前が鹿な。」
「心を読むなっ!」
変な力説をする誠に、脱力しそうになるのを堪えながらも、相手をしてやる俺って優しい。
「うむ。貴様は我輩の次の次の…飛んで20番目くらいに優しいな。」
「だから、心を読むなっ!大体何なんだよ?負け組って?」
「そう!それだ!お前はともかく、この優しくてカッコイイ俺に、なぜ彼女が出来んっ!!」
「…。馬鹿だからだろ。」
「てことは、鹿のお前のせいかぁーっ!!」
「なんでやねんっ!」
ガックンガックンと俺を揺さぶりながら血の涙を流さんばかりの表情で…実際流しながら訴えてくる。
「言っただろう!二人で一人の馬鹿だと!俺一人なら馬ですむんだっ!」
…その発想が馬鹿なんだよ。
普段は似たような目で(心外だが)見られる俺も、コイツといたら常識人な気になってくる。
「俺は馬でも、超サラブレッド!連戦連勝、大金持ちな名馬のはずなのに、種馬にすらなれんっ!!」
…神様。下品なコイツを抹殺してください。女子が引いてるではないか。
(黙っていれば、格好良いんだけどな。)
改めて誠を見る。身長180はある体格に、製った顔立ち。茶色に染めた少し長めの髪。前髪が緩やかなウェーブを描き、その整った顔にかかっている。
そんな誠を観察していると、奴はワナワナと震えだし
「き、貴様。何を見つめて…。まさか、俺に惚れたのではっ!」
…神様。さっきの願い早く叶えて。
「俺は、彼女が欲しいんだ!彼氏はいらブギャッ!!?」
言い終わる前に、神様が願いを叶えてくれたのか、誠は派手に吹っ飛ぶ。
「…痛いじゃないか。親友」
俺に非難の目を向けながら頬を押さえる。
「ん?俺じゃない。神様さ。」
「やはり、お前はソッチ方面の人だったのか。」
「やはりってなんだよ。てか、話し進まねーだろが。」
「うむ。困った奴だ。」
(…お前がな。)
もはや口に出す気力もなく、心の中で呟く。
「周りを見ろ!最近はブームと言わんばかりに、カップルが急増している!まるで発情期ですと言わんばかりだっ!」
「…で?」
「俺も発情したいんだぁーーーっ!!!」
「死んでください。」
奴の心からの叫びに、即答する。
…発情って。ねぇ?
「何故っ!?」
目を見開き、唖然とした表情で俺を見つめる馬鹿。
「はぁ…。お前といたら、俺も永遠に彼女が出来ん気がするよ。」
「お前も、やはり発じょグハァッ!!」
言い終わる前に、再び神様の罰が奴にくだる。
「何ををする…。ソッチ方面の趣味はないぞ。」
「どっち方面だよっ!」
「むぅ。さっきからのその態度。よもや彼女が出来たのではあるまいなっ!?」
「…いねぇーよ。てか、出来ないだろ。あの悪魔達がいる限り。」
「だ〜れが、悪魔なのかなぁ?お兄ちゃん♪」
(…はぅっ!もう戻って来てたのか!?)
俺の後ろに立って話し掛けてくる人物に戦慄しながら、振り向く。
その人物は……。
ああ、自己紹介が遅れたな。俺は、御子柴薫。こんな名前だが男だ。
 




