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魔王軍の『命を賭けた強制労働』に違和感を持ったので、法務部を立ち上げてストライキを主導した結果、魔界の労働環境が激変してしまった件

おのれ、魔王め! 必ず貴様を、葬ってやる。待っておれ~~~~!



「いいか、貴様ら! 魂が摩耗して砕け散るのが先か、敵を屠るのが先か――魔王様のために、最後まで使い潰されるのが兵の誉れだ!」


魔界の最前線、地獄の業火が吹き荒れる防壁の上で、人事部長の悪魔が拡声魔法で吠えている。

私の隣では、昨日まで一緒に飯を食っていた同僚が、魔力の使い過ぎで全身から灰を吹き出し、文字通り「崩れ落ちた」。後片付けの部隊がやってきて、その灰を乱雑に箒で掃いていく。


なるほど。この魔王軍、完全に『労働契約』の概念が崩壊しているな。


私は死体から剥ぎ取った『魔王軍兵士・雇用契約書』の羊皮紙をポケットから取り出し、冷めた目で眺める。現代日本でブラック企業の法務として、数多の過労死ラインをギリギリで回避させてきた私から見れば、この魔界の運用はあまりにも杜撰だ。


「……魔力制限の条項が一方的すぎて、実は契約そのものが『神聖な契約魔法』の効力を発揮していないんじゃないか?」


私が独り言をこぼした瞬間、目の前を巡回していた人事部長の巨大な影が立ち止まった。

ギロリと、獲物を狙う猛禽類のような視線がこちらを向く。


「おい、新入り。何か言ったか? 魂を食らわれたいのか?」


私は羊皮紙を畳み、背筋を伸ばして一歩前に出た。感情はない。ただ、違法な労働環境を是正する『担当者』として、淡々と事実を述べるだけだ。


「部長、質問がございます」


戦場に一瞬、奇妙な静寂が訪れた。誰もが魔王軍の幹部に逆らうなど死を意味すると知っているからだ。だが、私は構わず続けた。


「この『魂の摩耗』に対する代償条項ですが、約款第8条の『安全配慮義務』と、第12条の『補充不可の免責』の間で重大な矛盾が生じています。これ、法的に是正しないと、この防壁の維持に必要な魔力供給そのものが、明日にもストップしますが?」


人事部長の目が、驚愕に大きく見開かれた。

暴力が支配する魔界で、初めて突きつけられた『論理』という刃。それがどれほどこの組織を終わらせるものか、部長はまだ気づいていない。


「……法、だと? 貴様、何を寝ぼけたことを!」


「いいえ。法という名の、魔王軍を縛る鎖の話です」


私は不敵に微笑んだ。

明日、この軍隊を機能不全に陥らせるためのカウントダウンは、今この瞬間に始まったのだ。


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