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「ふんわりと飴玉食べよ」

作者: 今野
掲載日:2026/04/26




 昔、家族と遊園地に行ったことがある。ジェットコースターに乗りまくっていた。今は怖くて乗れない。高所から落ちたら死ぬと、当時知らなかったとしか思えない。風景が滲みながら後方へ吹き飛ばされていく快感。自分が暴風だと信じて疑わなかった。


「どうしたの?」


 大人になってから怖くなったのは、高所だけではない。お化け屋敷も怖くなってしまった。先ほど彼氏に連れられ、人が脅かすって分かってるんだから! と意気込んだものの、怖いものは怖かった。無理。足ガックガクである。


「連れ出すからでしょ」


「でも怖いの苦手って知らなかった」


「わたあめ買ってきて。私の機嫌が直るよ」


「アッツ。ストロベリーとプレーン味買ってくる」


 おうっ頼んだ! 言いながらベンチで足を休ませた。怖いもの知らずの子供の頃は、一体どこにいったんだろう。子供心が育って大人になったというより、私から子供心が家出した感じだ。


 彼氏はわたあめを買おうと列に並んでいる。スマホをいじりながらも、たまに手を振ってくる。こういう無邪気な感じが好きだ。こんなかわいい彼氏がいてよかった。そう思いつつ、私はそんな無邪気な子供心はないんだよなあと思う。


 私という入れ物に、子供心を抜いて大人心を入れたとする。なら、彼氏は上手くそれらを共住させている。子供ながら大人。私はそうはなれなかった。


「はいわたあめ。どっちがいい?」


 手渡された白と赤のわたあめ。何かどこかで同じ光景を見た気がした。子供の頃だっただろうか。親から渡されたわたあめを、食べたくなくて泣いた気がする。


 ジェットコースターで暴風だった私は、もう雲でさえ友人だった。かわいい勘違いだけど、私はわたあめを雲だと思っていた。友人を食べたくなかったのだ。


「うーん」


「どっちも食べたくない?」


「いや。子供の頃わたあめを友達だと思ってたから」


「今は?」


「もう砂糖の塊ってわかってるから。全然食べれるよ。いちごがいい」


 どうぞ、と手渡されたわたあめは、甘くて美味しい。家出した子供心に罪悪感を抱きつつ、私は砂糖の塊をバクバク食べた。


「でもほら。こうやって手でまとめると、ほら、なんか飴玉みたいじゃん」


 砂糖を紐状から固形に戻しただけだった。


「ねえ、汚い。あとそれが友達だったらグロい」


「うはは、そうかも」


 砂糖の塊。そうやって思うけど、それは大人になって知ったこと。当時は知らなかったから、これが友人だったらグロいことや、そもそもベタベタして汚いこともわからなかった。でも、知っていくと、こうやって目の前の人と笑える。いいね。


「ふんわりと飴玉食べよ」




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