ごみ溜めの夢.
「うえ...あんま変わってねえな」
ダストベルトは相変わらず悪臭が漂っていて、死体や使用済みの注射器もちらほら見えた。空に見える雲間の綺麗な星とはまさに雲泥の差だろう。俺はバイクを加速させた。
「懐かしいな、あそこあたりに住んでたんだっけ。」
一人になってすぐは雨風が凌げる場所は全て家に見えていた。昔の家はいまや崩れたトタン板の山にしか見えない。
あの時の俺は家族でただ一人、犯罪者予備軍だと通告されてここに置いてかれた。親に養ってもらっていた俺にとって一人で生きる術など知る由もなかった。
「どうして...うそよ、うちから犯罪者が出るなんて...」
オラクルから通知が来てから、母が初めて俺にかけた言葉だ。父の酷く蔑むような、恨めしそうな目と俺の指を握った弱々しい妹の手の温もり。そんな自分だけが切り離されてしまった感覚が、あの時はただ寂しかった。
「どうして...そんな、そんなはずない!うちの子が犯罪思想なんて!」
とあの人たちに言ってもらえていたら俺はあの所業を許せただろうか。多分許さなかっただろうなと俺は思う。結局は行動だ。病弱な妹の為とはいえまだ小さかった俺を見殺しにしたのと同じことだ。挙句俺はそこで死んでパタと終わると思っていたのに拾って貰われるなんて奇跡を起こした。我ながら運だけはあるんだろう。
「そこの異色瞳の子、行くあてがないならついてきなさい。世話を見てあげよう。」
そんなふうに綺麗な中華風の装いの背の高い男に声をかけられて、死への恐怖もほっぽり出した俺は着いて行った。夏の日差しの強い日だった。
その後俺は男の言うままに、有名な宗教団体の神の召使いとして生活を得た。
「ナツ?君はナツっていうのかい?」
「ン、です。」
「そんなに固くならないでよぉ、殆ど同い年じゃない。」
「いや、俺は従者ですから」
「じゃあ命令にしよう。神の命に於いて君は私と対等に話せ、これでいいかな?」
「...ユエン様に怒られても知らねえからな、」
「バレなきゃ犯罪は犯罪じゃないよ!ナツちゃん。」
「それで罰されるの俺なんだって...」
あの時俺を拾った男はユエンというそうで、自分の子供を神とした宗教を立ち上げて、実権を握っていた。それは我が子を神ともてはやし、親バカをしているわけではなく、自分のための駒として我が子、宗教を掌握していて恐ろしく気味悪く感じられた。しかし神...いやメディシンは全くだった。普段は神らしく、子供の癖に大人の対応をするやつだったが、ただの従者の俺によく執着してはユエンに窘められていた。
「ま、それのせいでユエンの野郎に解雇されて、また捨てられたんだが」
神が一人の孤児に入れ込んでは他の信者から何か言われかねなくて面倒になったんだろうな。そういえばあの宗教は今はマフィアの階級制度に組み込まれ、マフィアはもはやカルネアの南の政治を担っていると言ってもいい。今もメディシンはユエンの言いなりの「神様」をやっているんだろうか。向かい風が細やかに吹いていた。




