人柱
注意書きの看板、ポスターってあるじゃないですか。
「この先、通り抜けが出来なくなっておりますので別の道をご利用ください」とか書いてあるやつのことです。
あれって何であんなに存在感があるんでしょうね。
注意書きといえば、エスカレーターの前で「このエスカレーターは工事中ですので階段をご利用ください」という看板を持って立っている人がいました。
あれもきっと仕事のうちなんでしょうけど、私に言わせてみればどうしてそんな仕事が存在するのか意味不明です。
第一、彼らは看板を掲げているだけで何も生み出していないじゃないですか。
そんなものに給料を払うくらいなら、三角コーンに看板を張り付けた方がよっぽどマシに思いますね。
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すみません。先ほどの文章では看板を持って立っている人のことをボロクソに言ってしまったのですが、最近、その意義がわかりました。
普段は何もない空間に人が立っていることによって、通行人はその注意書きに気づくことが出来るのです。
人の存在感が注意書きの存在感を補助しているというカラクリです。
なるほど、これならその仕事が存在することに意味が見出せそうな気がします。
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上で書いたことを友達に話してみたのですけど、その友達は顔をしかめてしまいました。
彼は点と点が繋がったような顔をしており、何か恐ろしいことに気づいてしまったようです。
どうしたのか彼に尋ねると、ぽつりぽつりと話し始めました。
まず、前提として聞いて欲しいんですけど、その友達っていうのは、いわゆる霊感があるタイプの人なんです。
そして、この世の者ならざるものが近くにいるときは、いつも決まって耳がゾワゾワするらしいのです。
どうして見えないのにそんなことが分かるのかというと、彼が成長に伴って霊感を失ってしまったことが関係します。まあ、よくある話ですよね。
そして、彼が幼い頃は勿論幽霊も見えていたんですけど、その時、いつも耳がゾワゾワしていた。そして、耳のゾワゾワは今でも起こっている。
話を戻しますと、彼はいつもある場所の「立ち入り禁止」の前に行くと、耳がゾワゾワすると言います。
そのため、その看板には近寄らないようにしていたようなのですが、私の話を聴いて、ある恐ろしい仮説が浮かんでしまったと。
通常、注意書きを掲げる期間は数週間で良いわけですが、中には工事がうまく行かずにそれを永遠に掲げる必要があることがあります。
そのため、看板を持っている人の魂を吸い取ることによって、看板単体で掲示したときにも存在感を発揮するようにする。
そんな仕組みが存在しているんじゃないですかね。
以上、看板を掲げるバイトには応募してはいけないという話でした。




