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復讐者  作者: 安慶
勇者と魔族とモフモフ
93/421

25.解散

 翌朝、レイはチルに叩き起こされた。

「何だよ。もう。」

「大変ですよ!起きてください!」

「起きてるよ。何だ、魔物か。」

レイは素早く鎧を身に着ける。

「違います。外見てください。」

 チルに促され外を見ると、日がようやく昇った空の下、村長と村人が建物の前で正座していた。どうやら村人全員いるらしい。

慌ててチルと一緒に外に出ると、一番前に座っていた村長が話し出した。

「レイ殿。すまなんだ。話を聞いてくだされ。」

「…はい。」

状況がよく分からないまま、レイは村長の前に正座した。どうしたら良いのか分からないチルも、同じように隣で正座している。

「お早うございます。」

「…お早うございます。」

「実はお願いがあって。わしら全員貴殿の奴隷にしてほしい。」

「へ。」

「見ての通り、食う物にも困ってる状況でして。このままでは全員餓死してしまいます。」

「はあ。」

 お互い見つめあったまましばし沈黙する。

どうしたら良いのやらとレイが困っていると、

「いいんじゃないですか。」

と後ろから声がした。

「トム。」

「レイさん。もう決めてるでしょ。困ってる人ほっとけないから。」

トムもレイの隣にあぐらをかいて座った。

「で奴隷にするのは良いとして。」

「おい。」

「どうしてレイの奴隷にと思ったんですか。」

トムはレイに構わず話を進めた。

聞けばアウド領は税の取り立てが厳しく、出来た作物の7割を取っていくらしい。

「7割も。木とか納められないんですか。」

トムは驚いて、キッコーリ村のように木を納めればと提案する。

「それはアウド領近くの村の担当でして。隣の国に運搬しやすいからと。」

「なるほど。」

国境の砦から離れたこの村が木を運搬していくのは難しいらしい。

「7割は異常ですな。」

「他の領よりも高いと聞いとります。」

「ほう。」

 村長は話を続けた。村を捨てると村人全員奴隷落ちしてしまう。村長は責任を取らされ犯罪奴隷となるそうだ。村人たちがギリギリの生活をする中、レイたちがやってきた。

レイの奴隷は全員筋骨隆々、生き生きとしていて装備も立派だ。

食事も3食十分に用意されており、村人がレイの奴隷に話を聞くと、旅で各地を転々とするが特に不満は無いという。このまま餓死か奴隷落ちになるなら、と昨夜村人全員で話し合って決めたそうだ。

「で、全員レイさんの奴隷になるとして。」

「おい。」

トム曰く、レイの奴隷になることは決定のようだ。

「戦える人いますか。」

「何人かは。オークくらいなら何とか。」

「十分です。装備は順番に用意しますね。」

「かたじけない。」

「お腹空いてるでしょう。朝飯どうですか。」

「いいんですか。」

「用意します。」

「やったーーー。」

 前の方に正座していた男の子が嬉しそうに叫びながら立ち上がる。

それを合図に村人たちがそろそろと立ち上がり、チルに先導されて建物の中に入っていった。

「どうすんだ。この人数。」

レイは情けない顔をしながらトムにすがる。

「わっはー。でもレイさん、決めてたでしょ。」

「迷ってたよ。」

「でも最後には決めるんですよ。今までそうでしたもん。」

「どうすんだ。旅大変なるぞ。」

「どこかに定住して町でも作りますか。」

「お前町長な。」

「噓でしょ。」

 レイとトムは、どつきあいながら建物に入っていった。

マールが呆れながら奴隷紋を村人の首に描いている。

「もう奴隷紋用の染料無いからね。次の町まで奴隷増やさないようにね。」

マールからクギを差されてレイとトムは苦笑した。

この日レイの奴隷が150人を超えた。

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