22.新しい武器
20名を超える商隊が、ライバ領からアウドの町へと向かっていた。
「むっ。」
先頭を歩いていたCランクの冒険者パーティーが立ち止まる。
「どうしました。」
直ぐ後ろの馬車に乗っていた商人が、不安そうに聞いた。
「何かが高速で向かってくる。気を付けろ!」
全員戦闘態勢を整え、前方を警戒している。
ズドドドドド
目をこらすと、前方から凄まじい音と振動とともに赤毛の大男が、立派な装備を身に着けた一団と走ってくる。
「すんませーーーん。横通りますーーー。」
赤毛の男が絶叫に近い大声を張り上げたため、対峙しようとしていた冒険者たちは、思わず道の端っこに避けた。
老人から子供までいる100名を超える集団が、横を高速で通り過ぎていく。
「すいませーーーん。お騒がせしましたーーー。」
最後尾を走る黒髪の男が、叫びながら通り過ぎていく。
「何だ、あれ。」
警戒していたCランクの冒険者が驚く。
「婆さんも高速で走ってなかったか。」
「あれが噂のババアか。」
「どんな噂だ。」
他の冒険者たちも興奮気味に話している。
これが後に伝説となった『ターボババア』の誕生であった。
すれ違う旅人たちに驚かれながら、レイたちは軽快に北へと向かっていく。
途中でそこそこの広さの空き地に到着し、日が落ちるまで時間はあるが、野営の準備を始めた。
野営といってもレイが土魔法で風呂・トイレ完備の建物を作るため、とても快適だ。
以前はセイクルズと交代でしていた夜の警戒も、奴隷たちが出来るようになったため、レイとトムは夜ぐっすりと眠れる。
建物を作った後、暇を持て余していたレイはスミスに話しかけた。スミスは装備のメンテナンスをしているようだ。
「なあ。スミス。」
「何だ。」
「新しい武器を作ってほしい。」
レイの言葉にスミスは思わず手を止めた。
「新しい武器。」
「剣とかじゃない。新しい種類の武器だ。」
「どんなんだ。」
「弓みたいなものだが。弓と違ってスキルに頼らないやつだ。」
レイが紙に書いていく。
「…なるほど。矢を台に固定させて引き絞って撃つのか。」
「矢を引き絞る奴と台に固定する奴、2人必要だがいいんじゃないかと思って。」
「作ってみるか。前世にあったのか。」
「そうだな。籠城戦なんかに役立つと思う。」
2人はレイが描いた紙をのぞき込んで、さらに話し合った。
少し離れた場所でタックとフクンは、トムからおやつをコッソリ貰っていた。




