9.冤罪
レイとトムはトモリーツ亭に帰ってから1週間分の宿代を払い、翌朝ギルドへと赴いた。
ギルドは通常朝から騒がしいが、今日はさらに騒がしいようだ。
2人は金を稼ぐために依頼を受けようと、人をかき分けるようにギルドへと入っていく。
「あっ。あいつらです!あいつら!」
レイとトムを指さしながら喚き散らす男がいた。
見ると毎日新人をジロジロ見ながら酒を飲む、4人組の男の中の1人だ。
ひ弱そうで小柄ながら、Cランク冒険者の1人として意外と名が知られている。
話しかけられているのは、立派なミスリル製の鎧を着た王都の衛兵だ。
衛兵は犯罪や騒乱を取り締まる仕事をしているが威圧的なため、多くの冒険者に嫌われている。
1人の衛兵が部下らしき兵を引き連れてレイたちの元に来た。
「お前らか。彼らの武器と防具を盗んだのは。」
ギロリとレイとトムを睨みながら衛兵長は言った。
「えっ。違います!これは借り物です。」
トムは叫ぶように言ったが、
「嘘をつくな。その立派な武器と防具は何だ。」
「これはハンマースミスっていう武器屋から借りてるもんです。スミスさんに確認してもらえば分かります。」
「違う。あの装備だ。俺たちのもんだ。間違いねえ。捕まえてくれ!」
「昨日から届け出が出てるんだ。Cランク冒険者が嘘を言ってるというのか。拘束するぞ。」
有無を言わさずレイとトムを拘束し、周りの冒険者からブーイングが出る。
衛兵長は冒険者を睨みつけて黙らせると、門脇にある衛兵たちの詰所へと2人を連れて行った。
レイとトムは説明しようとしたが、衛兵たちは一切話を聞こうとしない。
2人は身ぐるみ剝がされて鞭で打たれると、武器と防具が無いまま門の外に放り出された。
振り返って抗議の声を上げようとしたが、中に決して入れまいと弓を構えた衛兵が監視塔から2人を狙っていた。
諦めて門から少し離れたところに移動したが、2人は途方に暮れていた。
道行く人はいたが、面倒ごとに巻き込まれるのは御免だと、足早に横を通り過ぎていく。
トムは真っ赤になりながら今にも泣きだしそうな顔をしており、レイは何か考え込んでいる。
しばらくしてレイは、
「なあ。この近くに町か村はないか?」
「ふぇ。はぁ。南に5時間くらい歩いたところに、自分の生まれた村があります。」
「じゃあ。そこに行こうか。このままだと魔物に襲われる。」
「ふぇ。」
2人は力なく歩き始めた。




