20.尋問
「何で探してるの。」
険しい顔つきのままタリカが尋ねる。
言おうかどうか迷っているレイがトムを見た。トムは首を横に振る。
だがセインは2人の方を向いて言った。
「正直に言った方が良いよ。見抜かれる。でしょ?」
「そうだね。よく知ってる。」
「情報も冒険者の武器だからね。」
2人のやり取りを聞いて、レイはタリカも何らかの鑑定スキル持ちだと推測した。
そうすると嘘をついたり隠したりするよりは、正直に言った方が良い。
「ちょっとセイン君、席外してくれないかな。あとお前たちも。」
タリカがセイクルズと側近の者たちを外に出し、部屋の中は3人だけになった。
タリカはレイをじっと見つめて言った。
「さあ。3人だけになった。話して。」
観念したようにレイは少し息を吐くと、話始めた。
「俺も一緒に召喚されたんです。」
「そうなんだ。」
「でも才能が無いからと、トムと一緒に追い出されました。」
「トム君は木こりじゃないの。」
「元は兵士です。」
トムも話に加わる。
「前世で3人に殺されまして。」
「…。」
「決着を付けようと探しています。」
「…。」
タリカの顔は険しいままだ。腕組みをしながらレイに言う。
「復讐とは穏やかじゃないね。」
「はい。」
「その手伝いをしろということかい。」
「いえ。自分1人で決着付けます。居場所さえ分かれば。」
「トム君は止めないの。」
「自分の村がオークの集団に襲われました。」
「うん。話には聞いてる。」
「それも勇者たちが原因です。」
「…。」
「自分もレイと一緒で、勇者と、あとあの国に恨みがあります。」
「それで止めずにけしかけてるのかい。」
「いえ、けしかけてません。一緒に。レイと一緒に決着付けます。恩人を亡くしましたから。」
トムの決意を初めて聞いて、レイは驚いた。
トムは誰とでもすぐに打ち解けて人当たりが良い。
てっきり自分に同情して話を合わせているだけかと思っていた。
レイは思わずトムの方を見ていたが、トムは真っすぐタリカを見つめている。
タリカは交互に2人を見て少し考えていたが、ようやく話し始めた。
「嘘は言ってないようだね。何かまだ隠しているようだが。まあいい。情報は無いね。他の国の勇者を入国させたら大問題だよ。これからも入らせる気は無いね。」
タリカの話を聞いて、2人はがっかりしたようだ。
「まあ、気落ちするな。僕の考えだとまだシュミム王国にいるよ。王都か4大領主の所だね。」
「そうなんですか。じゃあもしかしたらアウドの町に。」
「は、ないね。アウドの女狐がそんな面倒くさくて金にならないことしないよ。」
タリカはアウド領主を女狐呼ばわりする。
「情報が隠されてんなら、のこる3人の領主の所か王城か。直接匿われてると思うよ。」
その言葉にレイとトムは顔を見合わせた。
次の行き先が決まったようだ。
2人に気を遣うことなくタリカは話続ける。
「でもって、なんか困ったことあったら、うちにおいで。直ぐに僕の町に住めるから。」
タリカはレイとトムを見て、ニッコリと笑った。




