19.値踏み
セイクルズと別れる朝が来た。
レイたちは国境を越える予定はないが、勇者たちの消息を確認するため、セイクルズの面々と共に砦に向かう。
砦入り口の兵士に案内され、入国の審査をする兵士の前にレイたちは座った。
100人を超える奴隷たちとマール・スミスは砦の外で待っている。
「あっ。ちょっと待っててください。責任者呼んで来ますんで。」
レイたちが座ったと同時に審査担当の兵士が席を立つ。
「責任者?そんな大層なもんか?」
セインは兵士の態度に首をひねった。
普通は兵士に審査され、入出国をするそうだ。
しばらくすると部屋の奥からパタパタと誰かが走ってくる音がして、細身で金髪の若い男が部屋に飛び込んできた。
「やあ。領主のタリカです。よろしく。」
タリカは椅子にドカっと座り、いきなり本題に入る。
「昨日見てたんだけどさ。町の外にすんごい建物作ったの誰?」
「あっ。俺です。」
おずおずとレイが手を上げる。
「土魔法?」
「はい。」
「凄いねぇ。後ろの猫ちゃんたちはもしかしてエル・キャット?」
「はい。」
「従魔?」
「はい。」
「はあ。外の冒険者たちは?」
「あれは俺の奴隷です。」
「へ?あんな立派な装備付けてんのに?」
「はい。」
聞きたいことを一気にまくし立てると、タリカは急に黙ってしまった。
値踏みするようにレイを見つめている。
「あの。」
沈黙に耐えられなくなったセインが話を始める。
「入国審査は。」
「ああ。ごめん。全員入国希望?」
「いえ。Bランクパーティーのセイクルズ4人だけです。」
「君もメンバーなの?」
「いえ。尋ねたいことがあったので一緒に来ました。セインさんたちが出国したらシュミム王国に戻ります。」
「ええ!そうなの。」
残念そうにタリカは言う。面白いやつが来たと思ったのにという表情をしている。
「で。尋ねたいことって。」
回りくどいことが嫌いなのか、単刀直入にタリカは尋ねた。
「はい。シュミム王国が召喚した勇者3人を探しています。」
勇者を探しているとレイが言ったとたん、タリカの顔が険しくなった。




