17.国境の町
首に従魔紋が刻まれたリザードホーズがレイの命令の元、馬車を軽快に引いている。
リザードホーズたちは盗賊討伐の後、レイに体の傷を治してもらったためか、とても懐いている。
マールや奴隷たちが交代で馬車に乗り、旅が始まった頃と比べてかなりの速さで東へと進んでいき、出発から1か月後の夕方、国境の町アウドに到着した。
「あれが国境の砦か。」
町から少し離れたところにそびえ立つ頑丈な砦にレイは驚く。
切り立った岩山を塞ぐように高い砦が続いている。
「あそこから先がアッカディー王国だ。砦を管理しているアッカディー側の領主に許可もらったら行けるぞ。」
レイの後から到着したセインが説明する。
「明日お別れだな。世話になった。」
「セインさんたちともお別れですか。さみしいですぅ。」
ポッタも駆け寄ってきた。
「この町に私の店もあるんですよ。是非立ち寄ってください。お安くしますんで。」
セイクルズのメンバーとレイたちに、ポッタは揉み手をしながら交互に自分の店を宣伝している。
「じゃあ、少し立ち寄らせてもらおうか。」
レイはトムを誘って門へと向かった。衛兵にCランクの許可証を見せて町に入ろうとする。
「お一人10万ゴールドになります。」
「なっ!」
2か月分の生活費を貰うという。
「高くないか?」
「住人は無料ですが。」
「高くないか?」
「普通、これくらいじゃないですか。」
「…まけるとか。」
「無いです。お一人10万ゴールド。」
取り付くしまもなく衛兵は言った。
さらに何かを言おうとしているレイを、セインは少し離れたところに引っ張っていき、小声で言った。
「ここの領主は守銭奴でね。旅人から凄い金を取るんだ。入るのに10万、宿屋も20万から。」
「高くないか?」
「国境を行き来する商人や冒険者目当てだ。国を行き来出来る奴は金持ちが多いからな。」
「高いだろ。」
「お前そればっかだな。俺らも泊まるのは遠慮して、買い物だけするつもりだ。」
ジョナが1人だけで10万ゴールドを支払い、ポッタと共に町の中に入っていく。
唖然としながら見送るレイに、タックとフクンがお腹すいたにゃあと鳴いていた。




