13.約束
取り調べから2時間ほど後、盗賊たちの刑罰が決まった。ジャミと雑用係の男を除いて全員斬首刑となった。
既に死亡している盗賊も含めて、その後さらし首にするという。
ジャミと雑用係の男は犯罪奴隷落ちとなった。
「随分早いな。」
レイは対応の早さに驚く。
「珍しいことじゃないよ。証拠もあったし。保護した人たちの証言もあるし。」
セインは事もなげに言う。
レイたちは刑罰の内容を聞いた後、町の外に出てトムと合流した。
レイが土魔法で作った建物の中で待っていたトムは、レイたちのもとに駆け寄る。
「どうでしたか。」
「話、終わったよ。褒賞金が出るそうだから、それまで待機だ。」
「そうですか。宿に泊まりますか。」
「いや。ここで寝る。」
「じゃ、自分も一緒に。」
「マールさんがいるだろう。」
「大丈夫ですよ。スミスさんも宿に泊まるっていうし。」
「すまねえ。ちょっと疲れてな。仕事しすぎた。」
スミスが会話に加わる。
褒賞金が出るまでの間、セイクルズのメンバーとポッタ、マールとスミスが宿に泊まることになった。
レイとトム、猫たちは奴隷たちと共に町の外で何日かを過ごす予定だ。
マールとスミスに買い出しと素材の換金を頼み、久しぶりにレイとトムで過ごす静かな夜になった。
トムがニッコリ笑いながらレイに近づいて、懐から酒を取り出した。
「婆ちゃんからこっそり盗んできました」
「またか。また俺まで飛び蹴りされる。」
「いいじゃないっすか。飲んだら罪は一緒です。」
コップに酒を注いで、2人は喉を潤した。
前に飲んだものほどではないが、香りが強く軽い飲み口の酒だった。
「いくらでも飲めるな。」
「そうでしょ。」
奴隷たちも寝静まり、タックとフクンも寝息をたてていた。
ゆっくりと酒を飲みながら、2人は星空を見上げている。
「レイさん。」
「おう。」
「自分はレイさんを、絶対裏切りません。」
星空を見つめながら、トムは話を続ける。
「この先何があっても。離れることがあっても。あなたの味方です。この世界でレイさんの親友は自分です。」
「…ありがとう。」
「だから、絶対にレイさんも裏切らないでください。何があっても。」
「…分かった。」
レイにはトムが何を言いたいのか分かった。前世で何をされたのか知っているからこそ、未だ傷が癒えていないことを知っているからこそ、常に傍にいてくれるのだろう。
「親友がいるっていいな。」
「でしょ。自分はかなり良い親友ですよ。」
トムが豪快にワハハと笑った。
一方で犯罪奴隷落ちしたジャミは、牢屋の中で久しぶりに熟睡していた。
翌朝起きた直後、傍で寝ている元雑用係の男に話しかける。
「いやあ、奴隷落ちはきちいな。でも命があるだけましだな。」
振り返ったジャミの目の前に、元雑用係の男が首をくくってぶら下がっていた。




