12.乗っ取り
ジャミの行動は素早かった。椅子から飛び上がると一目散に出口へと走っていく。
だが体が未だ十分に回復していないのか、僅かな段差に足をとられ派手にコケた。
衛兵たちが急いでジャミを拘束し、衛兵長の元へと引きずっていく。
「驚いたな。今の行動を見れば分かるが。どうして分かった、若造。」
衛兵長はレイを見ながら尋ねる。
「人物を鑑定できるスキルがありまして。本当かどうかは他の盗賊の証言で分かるでしょう。」
「そうか。助かった。僅かだが褒賞金を上乗せするぞ。」
「ありがとうございます。」
盗賊たちの証言から分かったのだが、元々はジャミを頭として活動していたらしい。
最初は野営をする商人たちの食事に薬を混ぜ、夜中にこっそり商品や金目の物を盗んでいた。
全部を盗むことは無かったためか、捕まらないどころか被害にもほとんど気づかれなかったという。
だが盗賊としての評判が裏社会に広く知れ渡り、メンバーが増えてからおかしくなった。
商人たちを堂々と襲うようになり、金目の物を根こそぎ奪っていく。
ジャミはそのやり方に反対したようだ。しかし残虐性を好む男に組織を乗っ取られ、監禁され暴行を受けるようになった。
その後盗賊たちは、ますます狂っていく。
商人や護衛を殺した上で、身ぐるみを剥いでいくようになった。
奴隷商人を襲い、女たちを慰み者として監禁するようになった。
ついには100人ほどの集団で行動していたレイたちを襲い、返り討ちにあった。
念のために保護された女たちから、さらに話を聞いていく。
ジャミは監禁されながらも雑用をしていたもう1人の男とともに、女たちの世話をしていた。
何とか女たちを逃そうと計画していたらしい。
時には食事が足りないだろうと、自分の食べ物を分けていたそうだ。
「酌量の余地はあるが。」
衛兵長は考え込みながら言った。
「それでも無罪には出来ん。何らかの罰は受けてもらう。」
「そうだろうね。運が良ければ死罪にはならないだろうし。」
長時間の取り調べに疲れたセインが、気怠そうに言った。




