9.討伐
空が薄らと明るくなり始めた頃、セイクルズのメンバーとレイ、トムは朝食を食べ終え、既に装備を身に着けていた。タックとフクンもついてくるという。
「レイ。覚悟しろ。人を殺すことになるかもしれん。」
いつもの飄々とした態度とは打って変わり、まじめな顔でセインはレイに忠告する。
レイは無言で頷いた。
少なくとも7人を殺した盗賊団で間違いない。抵抗されたら迷いなく殺そうとレイは決めていた。
スミスに留守番を任せ、土魔法で作った建物をさらに高い壁で囲む。
5人と2匹は森の入口に並び立った。
クルンは既に森の中を調べていた。
「結構時間かかりそうね。上手く隠してる。」
クルンは逃走ルートを見つけるのに苦労していた。盗賊の根城がある場所までの道を隠されているようだ。
6人が手分けして探していると、タックとフクンは耳とヒゲをぴくぴくさせながら、森の中を見つめていた。
レイはその様子を見て、
「どうした?」
「泣いてる声が聞こえる。」
「どこら辺。」
「あそこ。女の人。」
タックが森の奥にある小山を指さす。爪が少し出ていて可愛らしい。
「行こうか。」
セインが素早く判断した。
6人と2匹は森の中を進んでいく。1時間ほど経ったころ、小山のふもとにたどり着いた。
小山には洞窟があり、そこから声が聞こえるようだ。
見張りの男が2人立っており、周囲を警戒している。
洞窟の入り口には馬車に使われる魔獣リザードホーズが何頭か鎖で繋がれていた。
「一気に行くぞ。」
セインが小声で言い、皆が頷いて口と鼻を布で覆った。
「50人くらい。奥の方に女の人たち。前の方に男の人が30人くらい。広場みたいになってる。」
フクンがヒゲと耳を使って中の情報を探る。
クルンが懐から大玉を取り出した。強力な煙玉だ。
火を点け素早く洞窟に投げ入れる。
2人の見張りが気付いた時には、洞窟内は煙で充満しており、中から怒号と咳込む声が聞こえてきた。
「行くぞ。」
セインの掛け声に一気に飛び出す。
セインとクルンが素早く2人の見張りを切り伏せ、洞窟の中に入っていった。
残りの4人もその後に続く。
襲撃されたことが分かったのか、剣や槍を持った盗賊が次々と切りかかってくる。
視界が悪い中、ジョナやキミイを守りながら4人は武器を振るい続けた。
ジョナは4人の隙間から火魔法を当てつづけ、キミイは回復していく。
剣同士がぶつかり合う音が無くなり、
「レイ、風!」
というセインの合図とともに、レイが風魔法で煙を外に出す。
6人の周囲には30人ほどの男たちが横たわっていた。
既に事切れている者や、ケガを負ってうずくまっている者もいる。
突然「ぎゃあ。」という叫び声が外から聞こえ、レイは思わず洞窟を飛び出した。
外に出ると、3人の男が大木から逆さ吊りにされていた。
その下には得意顔をしたタックとフクンが立っている。
「どうした。」
「逃げてきたから成敗してやったにゃ。」
タックが胸を張る。
後から出てきたセインもその光景を見て、
「いいぞ。猫ちゃん。帰ったらおやつあげないとな。」
『にゃーーー。』
逆さ吊りされた3人の男たちの下で、タックとフクンは喜びのダンスをしていた。




