7.スキル『無制限』の秘密
翌朝レイはトムたちと合流し、東に向けて出発した。
トムに確認すると、残念ながら3人の情報は無かったという。
集めた素材を換金して買ってもらったものとお釣りを受け取り、レイは魔法袋の中にしまう。
「寝具買いすぎじゃないか。」
マールが呆れたように言った。
トムとマールには寝具と猫のおやつを買ってきてもらっていた。
寝具をあるだけ買ったため、商人に驚かれたという。
「奴隷たちの分も買いたくて。」
「はー。優しいね。藁でいいのに。」
「藁でも良いが、体に痛くなるしな。布団は交代で使ってもらう。」
途中の町でも買い足すつもりだ。旅は快適なほど良い。
スミスは自分で作った武器を腰に差し、大層ご満悦だ。
一行はゆっくりと歩いていく。
その様子を最後尾にいたセインは不思議そうに見ていた。
「どうした。セイン。」
物思いにふけるセインを見てジョナが尋ねる。
「いや。おかしくないか。歩いてんのジジババとガキが多いんだぜ。」
顎をしゃくり、前方を見るように促す。
確かに。とジョナも考えていた。
ゆっくりとではあるが、全員自分で歩いている。
元気が取り柄のマールでさえ、ポッタに頼んで馬車に乗せてもらっているのだ。
必要最低限の荷物しか持っていないとしても、皆元気に歩きすぎている。
ジョナは少し前方を歩いていた老婆に尋ねた。
聞けば、以前は立つのもやっとだったが、レイの奴隷になった途端普通に歩けるようになったという。昨日かなりの距離を歩いたが、疲れはないそうだ。
「レイの奴隷になってからか。」
セインは小声で言った。
「何かのスキルかな。あまり詮索してはいけないが。」
「だろうな。じゃなきゃ、こんなに元気に歩いてない。」
再び前方を見た2人の会話に、僧侶のキミイが加わった。
「あたしも不思議なんだけどね。」
「何だ。」
「レイって剣士じゃない。だのに魔法も使えるし。しかも何種類も。」
「そうだな。2種類。光魔法と何か。3種類使えればAランク級だ。」
ジョナも首をひねる。
「でしょ。だのにレイは剣使えるし。火でしょ、風でしょ、水でしょ、土でしょ。光魔法も使えるはず。おかしくない?」
「無詠唱だし。魔法陣も描けるし。薬草にも詳しい。」
「何もんだ、あいつ。エル・キャットが従魔で。2匹も。」
「教えてくれないだろうね。トムなら知ってるかもしれんが。」
3人は不思議そうに前方を見つめていた。
その前方では新たに鉱物を見つけたタックとフクンにおやつをあげたいレイと、あげたくないトムが静かにバトルを繰り広げていた。




