6.鍛冶スキル
ミスリルを無事掘り出したレイたちは、昼休憩を取っていたセイクルズの所に戻り、再び歩き出した。
ゆっくりとではあったが東に進んでいき、夕暮れ前に町にたどり着く。
何事もなく着きほっとした一行だったが、新たな問題が発生した。
100人ほどの奴隷たちが町に入れないのだ。
「何故ですか。」
レイが門番をしていた衛兵に聞いた。
「そりゃそうでしょ。100人もいたら。大体どこで寝るの?暴動起きたらどうすんの。」
「まっそうか。」
あっさり引き下がったレイにトムはズッコケる。
レイは町の外に奴隷たちと残ることになり、トムとマールとポッタ、そしてセイクルズのメンバーが中の宿屋で一夜を明かすことになった。
「自分でいいんですか。」
トムがレイにおずおずと尋ねる。
「マールさんと一緒にこれを金に換えてくれ。あと、買ってきてもらいたいものあるし。情報も仕入れたいし。」
レイは途中で採集した金目の薬草や鉱物をトムに渡した。
「任せな。買い叩こうとする奴にゃ蹴り食らわせるからさ。」
マールが胸を張る。
「あと3人の情報も。」
レイがトムに小声で伝え、トムは頷いた。
小さな町に潜伏している可能性は低いが、念には念を入れる。
それだけレイは必死だった。
「俺らはギルドで盗賊の情報とか依頼見てみるよ。」
セインも盗賊の情報を仕入れるという。
レイはトムたちと別れ、街道横の空き地に土魔法で建物を作った。
衛兵が驚き「こりゃ凄いな。」と門の脇で騒いでいる。
レイはスミスの希望に応じて簡易的な鍛冶場も作った。
「おっいいね。早速取り掛かるか。」
スミスは腰に付けていたカバンから鍛冶道具一式を取り出した。
スミスの鍛冶道具は大きな物だけは魔法袋の中に入れているが、大事な道具は全て身に着けていた。
絶対に壊してはいけないものだという。
スミスはミスリルを慣れた手つきで砕いていく。これから火を入れてスミス専用の武器にしていく予定だ。
レイはスミスの鍛冶仕事を興味深そうに観察していた。
唐突に前から疑問に思っていたことをスミスにぶつけた。
「なあ。ドラゴンの皮とかミスリル合金とかから、どうやって作ってくんだ。ハンマーとかミスリルだろ。」
ドラゴンの皮は柔らかいが強靭で、ミスリルの武器では傷を付けるのがやっとだ。
「これはお前らの武器と同じでミスリル合金だ。」
「それでも、作れるもんなのか。」
「この火が肝心でな。教会から分けてもらった聖火だ。」
スミスは大事そうに火の灯ったランプを掲げる。
普通の火とは異なり、ランプの灯は青く揺らめいていた。
「これを使うとどんな物も鍛冶で作れんだ。」
「凄いな。戦いでも使えそうだ。」
「いや。それは出来ねえ。戦いで使おうとすると消えちまう。」
「そんなもんなんか。不思議だな。」
レイは興味深く青い灯を見つめていた。
タックとフクンは話に興味が無いのか、レイのそばでスヤスヤと眠っていた。




