5.ミスリル
その夜は何事もなく過ぎていった。
緊張の面持ちで警戒していたレイとトムはほっと胸をなで下ろす。
「ようやく。朝ですな。」
トムが大きく伸びをする。
奴隷たちを起こして朝食を食べた後、レイたちは東に向けて出発した。
今日中に町にたどり着きたい。
しかし、中々前に進まない。
この先の少し開けたところで昼飯を食べようとしていた一行は、タックとフクンに止められた。
「どうした?」
レイが聞くと、
「ミスリス!」
とフクンが元気に答える。
「ミスリルかな?どこら辺にある?」
「あっちの方。」
タックが指さす方向を見たが、森が続くばかりで何もない。
「あそこらへん?」
「うん。」
レイたちは一旦休憩予定の空き地に集まり、セインにミスリルが近くの森の中にありそうだと伝えた。
「それはいいね。」
「勝手に採っていいものなのか?」
「うん。それが冒険者だしね。」
「じゃ。採ってくる。飯ゆっくり食っててくれ。」
「OK。気をつけろ。盗賊がいるかもしれん。」
「分かった。トム、スミス、タック、フクン早く飯食って行こう。」
「俺もかよ。」
「スミスがいなかったら、どれがミスリルか分からんし。付いてきてくれ。」
「仕方ねえな。まず俺の武器作るぞ。」
「おし。」
手早く昼飯を食べた一行は、森の中へと入っていく。
巨木に隠れるように小さな空き地があり、タックに言われるがまま、その場所をトムはハルバードで軽く掘った。
中から白銀に光る石が出てくる。石を手に取ったスミスは、
「いいぞ。かなり良いもんだ。掘り進めてくれ。」
レイが土魔法を使い、ミスリルの周りを囲むように掘り上げた。
「一気に掘れんのかよ。すげえな。」
スミスはあきれたように言い、ミスリルの大きな塊を魔法袋に収めた。
「いいぞ。武器も作れるし、金にもなる。タックとフクンにおやつあげないとな。」
『うにゃー。』
どこまでも2匹に甘いレイを見て、トムとスミスが顔を見合わせて笑った。




