3.警戒
セインが何かあったのかと近づいてきたので、タックとフクンが警戒していることを説明する。
セインも2匹の指さす方を凝視して、話しかけた。
「魔物かい?」
「違うにゃ。何か匂い。やにゃやつ。」
「前に嗅いだことある?」
「あると思う。」
「いつ嗅いだ?」
「じいちゃんといたとき。森に。」
「あとこないだ、ちょっと嗅いだ気がする。」
先ほどまで吞気にあくびをしていた男と同一人物と思えないほど、セインの目つきが鋭くなった。
「どこら辺?」
「あそこ。」
フクンが指さす先を見つめ、セインはレイに言った。
「行ってみよう。警戒して。」
「はい。」
「自分も行きます。」
セイン・レイ・トムの3人は、フクンの指さしたところまで来た。
セインの目つきがさらに鋭くなっている。
近くまで来るとさすがにレイとトムも嫌な匂いがしていることに気がつく。
最近この匂いを嗅いだことがある。
「これは。」
「掘ろう。」
レイが木でスコップを作り、3人で地面を掘り始めた。何か柔らかいものに当たり、3人はしゃがみ込む。
セインが土を手でよけると、人間の遺体が出てきた。
レイとトムが急いで掘り広げると7人の遺体が出てくる。
身ぐるみ剝がされたようで、全員下着姿だった。
セインはトムに向かって「ジョナを呼んできてくれ。」と言い、遺体の全身を隈なく調べ、特徴を紙に書き写していく。
ジョナが来るとセインはレイに向かって言った。
「焼いてくれ。」
「良いのか。」
「ああ。ゾンビになるよかましだ。」
ジョナが弔いの言葉を述べる中、レイが遺体を焼いていく。
周辺には遺体の焼ける嫌な匂いが立ち込めていた。
骨を砕いた後、1人ずつ遺骨を木箱にしまい猫たちの所に戻った。
「嫌なのあった?」
フクンが心細そうに聞いてくる。
レイはそれに答えず、
「匂いはもう大丈夫か?」
「うん。」
「そうか。お腹空いたか。」
「うん。」
「そうか。じゃあ、手洗ってみんなでご飯食べようか。」
皆で大部屋に集まり、固いパンと野菜のスープ、そして干し肉を食べた。
その間もセインは隙なく辺りを警戒していた。




