68.別れ
村が朝日に照らされている。100人ほどが、支度を終えて門に集合していた。
3日前に奴隷の処遇について商人ギルドから回答が来たが、「好きにしていい。」だった。
ようやく国から回答が来て確認したところ、そのように書かれていたという。
奴隷に王都に戻るか旅に出るかの選択を伝えたところ、全員が旅に出ることを希望した。
王都に戻ってまた贄にされたら堪らないからだ。
その他、村への移住を断られた後、同行したいと申し出る者が現れた。
全員貧民街の出で、王都に戻っても貧乏暮らしが続く。また贄にされる可能性もある。
奴隷紋を付けることを条件にするが、それでも構わないという。
そうして100人ほどの旅団が形成されることになった。
Bランクパーティーのセイクルズは王都に帰ったが、またすぐ村に来た。
何やらきな臭くなってきたから、アッカディー王国に行くという。
レイたちに同行すると言われ、これほど心強いことはないと2人は思った。
村長たちに別れを告げる。村長からDランクに更新された冒険証を渡された。
キッコンからは王国内の地図をもらった。旅人や冒険者から話を聞いて詳細が書き込まれているスペシャル版だ。
金は全て旅の準備に使った。
今は徒歩だが、ゆくゆく金に余裕が出来れば馬車を買いたい。
門を出ていこうとしたところ、
「待ってくださーい。」と建物の方から声がした。
見るとエラが走ってくる。
「これ。」
息を切らしたエラが、レイに借りていた本と袋を渡す。
「持っていていいのに。」というレイに対して、「全部書き写しましたから。」とエラが笑顔で言った。どうやら徹夜で本の中身と袋の魔法陣を書き写したらしい。
再びエラたちに別れを告げて村から出た。手を振りながら別れを惜しむ。
さてと歩きだしたところで、
「待ってくださーい。」と今度は街道の方から声がした。
凄まじい速さで馬車が駆けてくる。ポッタが乗っていたので逃げ出そうとしたところ、素早く前に立ち塞がれた。
聞くと、王都で商品が売れに売れ帰るところだという。門が開くと同時に王都を発ち、国境の町まで帰るから同行すると、半ば強引に旅仲間に加わった。
再び歩き出そうとしたところ、
「あっそうだ!」
マールが突然叫ぶ。
「あんたたち!私の酒飲んだね!」
レイとトムは思い切り尻を叩かれた。
「何かしまんねえな。」
スミスがポツリと言った。
こちらで第1章終わりです。
第2章も毎日更新を目標にしています。




