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復讐者  作者: 安慶
森に埋もれた国
67/421

67.別れの前夜

 1週間後。

木こり亭の食堂は、今日の夜は貸し切りだった。

普段は厨房で忙しく働いているノムと2人の子供も、ご馳走を前にして座っている。

レイとトム。タック。フクン。マール。村長。キッコン。スミス。リーツ。リーツの妻トモ。スミスの弟子エラも座っている。

その他、防壁完成前から村に住んでいた者たちも座っていた。

今日はお別れ会だ。明日の朝、レイたちは東に向けて旅立つ。

スミスと相談して、勇者を探すならまず国境の町だろうとアタリを付けたからだ。

普段はシンプルな料理が多いが、今日は手の込んだ料理が並んでいる。

野菜と干し肉を煮込んだトマト風味のスープ。香草と酒につけて焼いた固まり肉、付け合わせの茹でたジャガイモに、バターと蜂蜜をたっぷり塗ったパンだ。

子供達には果実のジュースが配られ、大人たちには上質のブドウ酒が配られる。

村長が立ち上がり、乾杯の音頭を取る。

「じゃ。話長いと冷めるからの。レイたちの旅立ちを祝して。かんぱーい。」

あちらこちらでコップをぶつける音がして、目の前の食事に手を伸ばす。

トムはご馳走に夢中だ。

レイもあまり食に興味は無いと思っていたが、いつもとは違う料理に手が止まらない。

スープは野菜に味が染みていて、いくらでも飲めそうだ。肉は臭みがなく柔らかい。

じゃがいもはホクホクしているし、バターが溶けて蜂蜜と混ざり合い、パンはしっとりとした食感になっている。

そしてブドウ酒。防壁でトムと飲んだものほどではないが、鼻からフルーティーな香りが抜けていく。

皆の腹が満たされた頃、酒を飲みながらの会話が始まった。

食事が終わると手持ち無沙汰で眠くなったのか、子供たちはそれぞれの家へと帰っていく。

レイはノムとリーツの話を聞いていた。

リーツとトモは木こり亭で働き始めたらしい。リーツは食堂と宿が大きくなり、人を雇おうとしていたところだったという。

エラも木こり亭で働いているが、ゆくゆくは自分の店を持ちたいと話した。

魔法袋の話をするとエラは興味を示し、是非見てみたいと言った。

持っていた魔法袋を見せて、そこから魔法陣の本を取り出して見せた。

「レイ。本貸していいよ。」

マールが言う。

レイが魔法陣の本と予備の魔法袋をエラに渡すと、「ありがとう。」と言って大事そうに抱えて自分の部屋に帰っていった。

「あいつは勉強熱心だからな。」

スミスが酒を飲みながら言う。

「連れて行かなくていいのか。」

「あいつが決めたことだからな。生きてりゃいつか会えるさ。」

夜は更けていくが、名残惜しくいつまでも皆で話していた。

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