66.魔法袋
レイとトムが家に帰ると、マールと2匹の猫が仁王立ちしていた。
全員鼻の穴が膨らんでいて、何故か得意げだ。
『レイ!出来た‼』
タックとフクンがすごい勢いでレイに走り寄る。
レイは2匹を抱き上げると、「出来たんだね。」と嬉しそうに言った。
「何が出来たんです?」
トムだけが蚊帳の外だ。
「ふっふっふっ。」
レイが悪そうな笑みを浮かべる。
「じゃーーーん。」
レイが見せたのは何の変哲もない袋だ。
冒険者が腰につけるもので、ポーションや携帯食など必要最低限のものを入れている。
「これを見てくれ。」
レイが手近にあったベッドを近くに寄せた。袋を近づけると一瞬でベッドが消える。
「なっ‼‼。」
トムは驚いて硬直してしまった。あのでかいベッドはどこに。
「ふふーん。」と言いながら踊り出す2人と2匹。何故か腹が立つ。
レイがおもむろに袋に手を入れ、何かを引っ張り出した。
すると先ほど一瞬で無くなったベッドが、再び姿を現したのだ。
「なっ‼‼。」
トムは再び驚いた。しばらく呆然としていたが急に、
「何ですか!それ!」
とレイに掴みかかる。
「トム君。これはね。魔法袋というのだよ。」
トムが中を覗いてみると底に魔法陣が描かれている。魔力を込めながら物を袋に入れると、袋より大きなものでも入るという。
逆に取り出すときは、取り出したいものを頭に思い浮かべる必要があるという。
「どれくらい入るんですか。」
「まだ検証してないが。いっぱいかな。」
マールも会話に加わる。
「でも高いもんや大切なもんは止めといた方が良いね。さっき作ったばっかだし。」
トムはキラキラした目で魔法袋を見つめている。
「トムの分も作ったぞ。」
レイがトムにもう一つの魔法袋を渡した。
「いいんすか。」
「当たり前だ。」
マールが2人に割って入る。
「良かったね。トムの腹巻やパンツが入れ放題だよ。」
「黙らっしゃい。」
レイとトムは旅に必要なものを魔法袋に詰め込んでいった。




